好きなところ(沢田夢)/思春期番外編
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「京子ちゃんのどんな所が好き?」
彼女が一人で教室に居た。
生徒は殆ど帰った放課後に。
京子ちゃんももう居なくて、何となく話してみたかったんだ。
でも何を話たら良いのかわからなくて答えの分かりきった質問をした。
『…京子の?』
「っ、うん」
シカトされるかと思ったけど、反応してくれた。
目は酷く不機嫌だけど。
『あの笑顔が好き。
声も、仕草も、京子が言うなら…京子がやるなら全て愛しい。
いつも笑ってて、あたしを拒絶しない。
笑顔の京子が好きだけど、京子が泣きそうならあたしが支えたい。力になりたい。』
そう呟いた彼女は、京子ちゃんを思い出したのか天井を見ながらボーっとしだした。
あぁ、会話が終わっちゃう。
何か言わなきゃ。
「その…俺も分かるよ!」
『……』
「京子ちゃんの笑顔って可愛いし、その…みんなに優しくてさ。」
『……』
「俺も、その、前に変な風に告白しちゃった事があるけど…拒絶されなかったし。」
『やめて』
ゆっくり彼女の顔を見る。
彼女は俺を見ていた。
いつもとは違う、無表情で。
『京子の事を知った風な口利かないで。』
「あの、」
『京子を理解するのはあたしだけで良い。』
彼女は帰り支度をすると、立ち上がって俺を見下ろす。
『それと、サワダツナヨシ。』
「な…に?」
『京子は優しいわけじゃない。』
「え…」
『京子は、嫌な自分を誰にも見せたくないだけ。そしてそれを見せるのもあたしにだけ。』
優しくない?
京子ちゃんが?
そんなバカな。
『まだアンタは京子をちゃんと知らないんだね。』
そう言って教室から出て行っってしまった。
教室に残された俺は、ただ唖然とするだけだ。
「……」
そういえば彼女は、京子ちゃんを優しいとは言わなかった。
京子ちゃんの何処が優しくないんだろう。
そして、京子ちゃんが優しくないと知りながらどうして彼女は京子ちゃんを好きなんだろう。
彼女を知ろうと思って会話した筈なのに、また分からなくなった。
(京子ちゃんの嫌な自分って何だろう)