思春期番外(骸夢)




あぁ、だから、謝ってるじゃないですか。




「いい加減、機嫌をなおしてください。」


『知らない。近寄らないで。』



そんな事言われても、席が隣だから仕方ないですよ。

めい一杯離れようと、壁に寄る彼女。
その胸には、きっと命よりも大切であろうモノが握られている。



「犬、千種。お前たちからも何とか言ってやってください。」


機嫌を悪くした彼女は少々厄介だ。
しかも、今回は理由が理由でさらに厄介。



「なーなー、機嫌なおせよ！別に骸さんがソイツを傷つけたわけじゃねーだろ！」


そうですよ犬！
その通りです！



『あんた達にコレの大切さが、何がわかるの!!気安い言葉かけないで！』


「きゃんっ!!」


あぁ、犬がビックリして縮んでしまった。

千種、頑張ってください！




「……どうしたら許すの。」


『……』



そう！
それですよ千種!!



「クフフ、そうですよ。どうしたら許してくれるんです？」


『煩い。あたしの気持ちがおさまるまで、放っておいて。』



どうやら、彼女なりに怒りを沈めようとしているらしい。

でも、



「そこまで怒る事ですか？たかが写真で…」

「骸様っ」



千種に呼ばれ、言葉を止めた。
だが、もう遅い。



『……』


「あ…その、悪気があって言ったわけではないんですよ。」


『ギザギザの馬鹿!!もう話しかけないで！』



泣きそうな顔でそう叫ぶと、教室を出て行ってしまった。

あぁ、僕は何をやっているんだ。



「千種…僕は馬鹿だと思いますか？」


「さぁ」




だって、僕も悪気はなかったんですよ？

机の上に大切な写真を置いていた彼女にだって責任はある筈です！




「ちょっと折れただけで……僕の事も、あの写真の半分でも大切にしてほしいですね。」




本物の“京子”は、あの写真の何倍も大切なんでしょうけど。



「骸さん、あとで幻覚見せてサービスすると良いれすよ。」


「そうですねぇ…そうしますか。」



このまま気まずいのは、僕も些か気分が悪いですからね。




《仲直り》