オレンジ畑から
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5人で生活を始めて、20年と1ヶ月が経った。
アーニャは日に日に笑わなくなった。
昔みたいに無表情で、絶望している。
私は久々に、外に出た。
外と言っても、オレンジ畑までだけど。
ルルーシュに、オレンジ畑より向こうへは行くなって言われている。
とくに私も外に出たい理由も無いので、必要最低限意外で外に出ないし、
そもそもオレンジ畑にすら全然来ない。
「ジェレミア。」
それでも、今日はこいつと2人で話したかった。
「珍しいじゃないか。君が1人で出て来るなんて。」
「あんたに話があるの。」
「何だ。手短に頼むぞ。」
アーニャは、オレンジ畑の手伝いが出来なくなった。
元々、ほとんどジェレミアがやっていたので負担が大きくかかるというわけではない。
でも、少しつまらなそうだ。
「アーニャのこと、どう思ってるの?」
「……」
「わかってるでしょ、ジェレミア。アーニャは長くない。」
「わかっている……早いな。」
早い、というのはアーニャの寿命の話だろう。
早い。
早すぎる。
オレンジ畑にあるベンチに座って、脚立に登るジェレミアを見上げた。
アーニャは何を思って、ジェレミアを見つめていたのかな。
「私ね、アーニャが生きたいって言うなら、ルルーシュに逆らってでも、ギアスを使おうと思うの。」
「なっ」
「使わないって、約束したけど…私が無理。アーニャに、言ってほしい。生きたいって。」
日に日に弱っていくアーニャを見るなんて、耐えられない。
わかっていたつもりだった。
いつか、アーニャは死ぬ。
覚悟していたつもりだった。
でも、こんなに早いなんて知らなかった。
「生きたいって言うなら、ギアスを使ってもいい。でも…」
「……私か。」
例えアーニャを生かしても、
アーニャがジェレミアと両想いになれないなら。
アーニャが、生き甲斐を感じれないなら。
それは、ただの生殺しだ。
「だから、先に聞かせて。アーニャの気持ち。」
「それは…」
「機械とか、立場とか、そんなの関係なく。あんたの気持ちだけで答えて。」
ジェレミアが、息を飲む。
今まで言い訳に使っていた言葉を取られたせいかな。
脚立からゆっくり降りて、私の前に立つ。
「ルルーシュ殿下に、絶対言うな。」
「うん。」
目を閉じて。
息を吸って、吐いて。
胸に手をあてて。
目を開けて。
「好きだ。アーニャが、愛おしい。最期まで、一緒に居たい。」
いつから?
そんなことは、どうでもいい。
どちらにしろ、ここ数日や数ヶ月の気持ちじゃない。
ジェレミアも、抑えていたのだろう。
「お、お前は口は硬いと思うからな…だから、絶対に、」
「ジェレミア。」
ピキッと。
ジェレミアが固まる。
私はただ黙って、ニヤニヤしていた。
ジェレミア、と呼んだのはジェレミアの後ろからだ。
相手はわかっていても、ジェレミアはゆっくり振り向く。
「あ、アーニャ…」
「ジェレミア、本当?私、嬉しい。」
「う、ナマエ!!騙したな!?」
「2人きりで話そうとは言ってないけど。」
アーニャが駆け寄る。
でも、久々の外だ。
足元がふらついて、倒れそうになる。
「あ…」
「アーニャ!」
アーニャの体を抱きとめたジェレミア。
「嬉しい。ジェレミアが、私を抱きしめてくれるなんて。」
「いや、これは、」
「ジェレミア。さっきの、本当?本気にしていいの?」
機械のくせに顔を真っ赤にして、咳払いをする。
「あぁ。私は、アーニャ。君が好きだ。」
「ジェレミア…」
久しぶりに見た。
アーニャの、嬉しそうな笑顔。
これで、アーニャの生きる理由が出来た。
「アーニャ。貴女がのぞむなら、私はギアスを使うよ。」
C.C.に貰ったコンタクトを取ろうと、目に手を当てる。
「アーニャ?」
その手を、アーニャが軽く制する。
にっこり笑うアーニャ。
でも、体がつらいのか、何と無く弱々しい。
「ありがとう、ナマエ。」
「……」
「ギアスは必要ない。」
「え、」
「私の最期まで、ジェレミアが居てくれるなら。私は、死を受け入れる。」
待って。
ねぇ、待って。
アーニャの言っていることがわからない。
「私は、人間として死ぬわ。」
「アーニャ、でも…」
「最期まで精一杯生きる。」
「あ…」
アーニャは本気だ。
ギアスは、アーニャが使って欲しかったものではない。
私が、アーニャに使いたかっただけだ。
「わかった…わかったよ、アーニャ。」
生かす力が、私にはあるのに。
何と無く。
ゼロレクイエムの前の、スザクと私のやり取りを思い出した。
私はスザクに殺してと願い、
スザクはそれを強く拒否する。
私がギアスを使わないということは、私はアーニャを殺したことと変わらない。
胸が、ぎゅうって苦しくなる。
スザクは、これ以上にツラかった筈だ。
私を、殺す決意をした時は。
「ギアスは使わないよ。最期まで、私も側に居たい。」
「ありがとう。泣かないで、ナマエ。」
今日。
長い時間をかけて、
アーニャとジェレミアは結ばれた。
幸せそうなアーニャとジェレミア。
私は、1度死んでから初めて"悲しい"と思った。
もうずっと、忘れていた気持ち。
こんなにも苦しいなんて、もうずっと忘れていた。