学校と王子様
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【柳】
「お前のデータが取らせてほしい」
今年の私はクラス替えという名の運ゲーに大負けした。惨敗である。
おかげでクラスには友達が一人もいない。いや、正確に言うと居ない訳ではない。勿論話せる人もいるし、関わりもある。ただ、ちょっとしたペアを作る時一人になることがある。それがちょっと寂しい。そして腹を割って話せる仲間、みたいな人も存在しない。異性なんてもってのほかだった。
そんな中唯一私の気を紛らわせてくれたのが読書だった。虚しくなればいつでも本の世界へと逃げていた。
今日も、誰より早く昼食を済ませて図書室へと向かう。気になっていた本を手に取って机に置き、早速最初のページをめくる。第1章を読み終わって時計の方を向くまで、隣に座っている存在に気が付かなかった。
「…!」
「驚かせたならすまない」
同クラスの柳くんだった。確かこの人も本が好きだったはずだ。
「ミステリーが好きなのか」
「え、あ、、うん……」
急に話しかけられたのでしどろもどろになってしまった。穴があれば…というか今すぐにでも穴を掘って隠れてしまいたい。すると柳くんは私の前に積み上がった本を指差し、「色々なジャンルを読むようだな」と言った。コクリと頷くと、彼はどこからかノートを出して何かを書き込んだ。何をしてるんだろうと思いノートの方を見る。
「データを取らせてもらっている。中身は教えないが」
趣味だ、と言う彼。データ?と尋ねると、「ああ、名字のデータは少ないからな」と答えた。
確かに接点は少ないしデータとやらも取りにくいのだろうか。自分について調べられそうになっているのが、なんだか嬉しいようで恥ずかしいようでむず痒い気分になる。でも、
「趣味であって自分への興味ではない、と考えている顔だ」
思わず柳くんの顔を見る。当たっているな、と彼は微笑んだ。
「まず、その考えは違う。俺はお前自身に興味があるし、少ないデータをより増やしたいとも思っている」
私の口が動く前に、「何で分かるの、とお前は言う」と柳くんは告げた。
「俺は大抵のことはデータから予想できる」
ただ名字のデータは少ないからな、当たる確率は50パーセントといったところか、と彼は言った。
その後も柳くんは色々尋ねてきた。家族構成から好きなもの、最近あったこととか、くだらないことでも真摯に話を聞いてくれた。人とこんなに話すのは久々であまりにも喋りすぎた。
「あ…ごめん自分の話ばっかりで」
「構わない。良いデータが取れた」
また話を聞かせてくれるか、と言って柳くんは立ち上がる。もう昼休みも終わりに近かった。あと5分だけでも、この時間が続けばなあ…なんて考えは、鳴り響くチャイムの音に掻き消された。
「お前のデータが取らせてほしい」
今年の私はクラス替えという名の運ゲーに大負けした。惨敗である。
おかげでクラスには友達が一人もいない。いや、正確に言うと居ない訳ではない。勿論話せる人もいるし、関わりもある。ただ、ちょっとしたペアを作る時一人になることがある。それがちょっと寂しい。そして腹を割って話せる仲間、みたいな人も存在しない。異性なんてもってのほかだった。
そんな中唯一私の気を紛らわせてくれたのが読書だった。虚しくなればいつでも本の世界へと逃げていた。
今日も、誰より早く昼食を済ませて図書室へと向かう。気になっていた本を手に取って机に置き、早速最初のページをめくる。第1章を読み終わって時計の方を向くまで、隣に座っている存在に気が付かなかった。
「…!」
「驚かせたならすまない」
同クラスの柳くんだった。確かこの人も本が好きだったはずだ。
「ミステリーが好きなのか」
「え、あ、、うん……」
急に話しかけられたのでしどろもどろになってしまった。穴があれば…というか今すぐにでも穴を掘って隠れてしまいたい。すると柳くんは私の前に積み上がった本を指差し、「色々なジャンルを読むようだな」と言った。コクリと頷くと、彼はどこからかノートを出して何かを書き込んだ。何をしてるんだろうと思いノートの方を見る。
「データを取らせてもらっている。中身は教えないが」
趣味だ、と言う彼。データ?と尋ねると、「ああ、名字のデータは少ないからな」と答えた。
確かに接点は少ないしデータとやらも取りにくいのだろうか。自分について調べられそうになっているのが、なんだか嬉しいようで恥ずかしいようでむず痒い気分になる。でも、
「趣味であって自分への興味ではない、と考えている顔だ」
思わず柳くんの顔を見る。当たっているな、と彼は微笑んだ。
「まず、その考えは違う。俺はお前自身に興味があるし、少ないデータをより増やしたいとも思っている」
私の口が動く前に、「何で分かるの、とお前は言う」と柳くんは告げた。
「俺は大抵のことはデータから予想できる」
ただ名字のデータは少ないからな、当たる確率は50パーセントといったところか、と彼は言った。
その後も柳くんは色々尋ねてきた。家族構成から好きなもの、最近あったこととか、くだらないことでも真摯に話を聞いてくれた。人とこんなに話すのは久々であまりにも喋りすぎた。
「あ…ごめん自分の話ばっかりで」
「構わない。良いデータが取れた」
また話を聞かせてくれるか、と言って柳くんは立ち上がる。もう昼休みも終わりに近かった。あと5分だけでも、この時間が続けばなあ…なんて考えは、鳴り響くチャイムの音に掻き消された。