君と一つ屋根の下
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【遠山】2
前の続き。学生時代
部活も終わり、重い鞄を担ぎながら飲み物を買いに路地裏の自販機に寄る帰り道。
カフェラテかジュースで悩み、チョキを作って両方同時に押す。勿論左が出ることなんて分かっているけど。
「あぁ!?奢るんやなかったんかあ!?」
「誰がそんなこと言うたんやボケが」
いかにもヤンキーな感じの二人組がこちらに歩いてくる。当たり散らかされる訳もないのに、怖くて近くの花壇の裏に隠れた。ヤンキーってだけで恐ろしいのに、喧嘩しているから余計怖い。暫くすると、言い合いから取っ組み合いに変わり、双方が胸ぐらを掴んで睨み合っている。これはまずい。やばい。
「ん、なまえ、こんなところで何しとるん?」
金ちゃん!?!?
咄嗟にシーッと指を立てるも、彼はきょとんとして「なんや?」と首を傾げた。「あ、わかったで。静かにすればええんやな」もう遅い。そしてそれを大声で言うんじゃない。
「何だテメェら隠れてコソコソと」
「兄ちゃんらこそ、何でケンカしとるん?」
お前には関係ないやろが、とヤンキーの片方がゴミ箱を蹴り上げた。中から空き缶が大きな音を立てて転がる。思わず驚いて震え上がってしまった。もう向こうすら見られない。私は花壇の後ろでうずくまり、彼らのやりとりを耳だけで聞いた。
「なまえ、ちょっと待っとってな。片付けてくるわ」
空き缶を?と心配していると、
「何言うとるねん。あの兄ちゃんらに決まっとるやろ」
よう言うわー、と言って転がった缶をぐしゃりとヤンキーの人が踏み潰した。
「俺らが勝ったらこれ全部掃除しろよ」
「ええで、別に」
じゃあ、と金ちゃんは呟いた。
「ワイが勝ったら、なまえもろてもええ?」
「はあ?勝手にしろよ」
たこ焼きじゃ、ないんだ。そうじゃなくて、貰うって…どういうこと??
いつでもかかってき、と言ったヤンキー二人に、金ちゃんは正面から飛びかかっていった。流石に二対一は卑怯だ。恐る恐る花壇から頭を出して覗いた。
瞬殺だった。
ヤンキー二人のパンチを躱し、横に飛んだかと思うと、ヤンキーの人の頭上を飛び、そこをめがけてもう一方が蹴ろうとしたところをまたジャンプで躱した。勿論金ちゃんのいたところにはもう一人の頭があるわけで、片方の顔面は蹴られ、もう片方の顔面は金ちゃんの踏み台にされて倒れた。
「次なまえ怖がらせてみい、そん時は許さんからな」
ほなまたなーっ!と金ちゃんは元気に叫んで私の手を引いた。いつの間にか、空き缶とゴミ箱は元通りになっていた。
「なあ、金ちゃん」
「どうしたん?」
「ありがと、金ちゃんがいないともう動かれへんかった」
「どーいたしまして」
そう言って、彼の口角はぐっと持ち上がり、顔にはいつもの溌剌な笑顔が浮かんだ。たこ焼き食べに行こか、と提案すると、よっしゃあー!とこれまたいつもの威勢の良い返事が返ってきたのであった。
その時、金ちゃんの言った、「なまえを貰う」は、「なまえを
そして、それが実現するということも。