初恋の相手
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「『あっ…!』」
それは2年になってからの入学式の日のこと。
いつもの様にレオナさんを無理矢理起こして、入学式の会場に向かわせる。
そのまま寮に戻れば良かったのに、何故かその日は中庭を歩きたい気分だった。
すると式典服を着てキョロキョロとしている女の子がいる。
「(…新入生?巻き込まれるのは面倒だし、ここはスルーッスかね)」
そう思った矢先にその女の子がこちらを見る。
「『あっ…!』」
見覚えのある顔に思わず声が出る。
「えっ……帝くん?…何してるんスか、こんなところで」
『えへへっ、私も今日からナイトレイブンカレッジに通うことになりました』
その女の子は両手を広げて式典服を見せるようにドヤ顔をする。
「えっ…何で?」
『何でって……馬車が来たから?それと、ラギーがいるから?』
首をかしげながら答えられる。
「へぇ…」
そんな言葉しか出てこない。
帝くんは小さい頃に知り合った猫科の獣人属で故郷が同じ。
オレの初恋の相手。
「っていうかこんなところで何してんスか?1年生は入学式の時間だろ」
『そうだった!鏡の間が分からなくて探してたらこの場所に着いちゃって…』
「はあ、しゃーないッスね。それならオレが連れて行くッスよ」
そう言って鏡の間へと歩き出す。
「…会うのはいつ振りッスかね」
この間のホリデーのときには会えなかった。
『ん~、ラギーが地元離れる前じゃないかな?』
「そっか…もうだいぶ経つッスね」
『何も言わないで出ていったくせに……』
「ん、何か言ったスか?」
『別に、なんでもないっ!』
初恋の相手と言ってもずっと帝くんのことだけが好きだった。
初めて会ったのはもう何年も前のこと。
簡単なバイトだと言われてその家に行くと、同じ歳ぐらいの大人しい女の子がそこにはいて、最近引っ越してきたというその子の両親に"一緒に遊んであげてほしい"と言われた。
「アンタ、名前は?」
『………帝』
「帝くんッスね、今日からよろしく。オレはラギー・ブッチ!」
『ラギー?』
「そうッス!男らしい名前でしょ」
『うん…?』
小さな声で返事をされ、垂れた耳が怯えているように見えて、早く仲良くなる手はないかと辺りを見渡す。
「…あっ!庭にたくさん花が咲いてるんスね」
『あの…ママが前のお家から持ってきたみたい』
「これ全部ッスか!?」
オレの家以上に広い庭。
『よくは分からないけど…』
「へぇ、金持ちってすげーな。とりあえず外行かないッスか?」
『…え?』
「ほら、早く!」
手を引っ張って中庭へと出る。
「この花って少し摘んでも平気ッスかね?」
『大丈夫だと思うけど……何するの?』
「まあ、見てろって」
花をいくつか摘み、その形を整えていく。
何度かその作業を繰り返すと最近作れるようになったそれを帝くんの頭に載せる。
「でーきたっ!どうスか?」
『わあっ、ラギー凄い!』
「へへっ、上手く出来たッス」
『凄い凄い!可愛い!』
頭に載せた花の冠を窓ガラスの前でニコニコとしながら見ている。
「(反応は上々ッスね、シシシッ)」
その姿を見て、今回のバイトは楽勝だなと口もとが緩む。
だけどそれ以上に持っていかれたものは大きくて。
『ラギー、ありがとう!すっごく嬉しい!』
「っ!」
その瞬間、オレは初恋というものを経験した。
でもオレはスラム育ちの嫌われもののハイエナで、帝くんはいいトコの仔猫。
釣り合う訳がないって思いが常に心の中にあった。
だけど、何度も遊ぶ度に膨れ上がる好きの気持ちと、何度も会う度にオレのものにしたいっていう独占欲で頭がいっぱいになる毎日。
報われもしないそんな気持ちをどうにか閉じ込めようとしていた頃、学園からの馬車がやって来た。
地元の奴らに立派になった姿を見てもらいたいっていうのもあったけど、帝くんのことを忘れなきゃっていう思いもあってオレはこの学園に入学した。
それなのに
「(何で入学してくるんだよ…)」
そんなことを考えていると鏡の間に着く。
「ほら、ここッスよ」
『ありがとう、ラギー……先輩?』
「…何スか、それ」
『何って今日から先輩だし、一応?』
「…今まで通りラギーでいいッス」
『そっか!ありがとう、ラギー。またねっ』
そう言って鏡の間へと入っていく後ろ姿。
「はぁ~、どうしてこんなことになるんスかね」
オレは落とした肩とは反対に期待で高まる気持ちには気付かない振りをして、サバナクローの寮へと戻った。
それは2年になってからの入学式の日のこと。
いつもの様にレオナさんを無理矢理起こして、入学式の会場に向かわせる。
そのまま寮に戻れば良かったのに、何故かその日は中庭を歩きたい気分だった。
すると式典服を着てキョロキョロとしている女の子がいる。
「(…新入生?巻き込まれるのは面倒だし、ここはスルーッスかね)」
そう思った矢先にその女の子がこちらを見る。
「『あっ…!』」
見覚えのある顔に思わず声が出る。
「えっ……帝くん?…何してるんスか、こんなところで」
『えへへっ、私も今日からナイトレイブンカレッジに通うことになりました』
その女の子は両手を広げて式典服を見せるようにドヤ顔をする。
「えっ…何で?」
『何でって……馬車が来たから?それと、ラギーがいるから?』
首をかしげながら答えられる。
「へぇ…」
そんな言葉しか出てこない。
帝くんは小さい頃に知り合った猫科の獣人属で故郷が同じ。
オレの初恋の相手。
「っていうかこんなところで何してんスか?1年生は入学式の時間だろ」
『そうだった!鏡の間が分からなくて探してたらこの場所に着いちゃって…』
「はあ、しゃーないッスね。それならオレが連れて行くッスよ」
そう言って鏡の間へと歩き出す。
「…会うのはいつ振りッスかね」
この間のホリデーのときには会えなかった。
『ん~、ラギーが地元離れる前じゃないかな?』
「そっか…もうだいぶ経つッスね」
『何も言わないで出ていったくせに……』
「ん、何か言ったスか?」
『別に、なんでもないっ!』
初恋の相手と言ってもずっと帝くんのことだけが好きだった。
初めて会ったのはもう何年も前のこと。
簡単なバイトだと言われてその家に行くと、同じ歳ぐらいの大人しい女の子がそこにはいて、最近引っ越してきたというその子の両親に"一緒に遊んであげてほしい"と言われた。
「アンタ、名前は?」
『………帝』
「帝くんッスね、今日からよろしく。オレはラギー・ブッチ!」
『ラギー?』
「そうッス!男らしい名前でしょ」
『うん…?』
小さな声で返事をされ、垂れた耳が怯えているように見えて、早く仲良くなる手はないかと辺りを見渡す。
「…あっ!庭にたくさん花が咲いてるんスね」
『あの…ママが前のお家から持ってきたみたい』
「これ全部ッスか!?」
オレの家以上に広い庭。
『よくは分からないけど…』
「へぇ、金持ちってすげーな。とりあえず外行かないッスか?」
『…え?』
「ほら、早く!」
手を引っ張って中庭へと出る。
「この花って少し摘んでも平気ッスかね?」
『大丈夫だと思うけど……何するの?』
「まあ、見てろって」
花をいくつか摘み、その形を整えていく。
何度かその作業を繰り返すと最近作れるようになったそれを帝くんの頭に載せる。
「でーきたっ!どうスか?」
『わあっ、ラギー凄い!』
「へへっ、上手く出来たッス」
『凄い凄い!可愛い!』
頭に載せた花の冠を窓ガラスの前でニコニコとしながら見ている。
「(反応は上々ッスね、シシシッ)」
その姿を見て、今回のバイトは楽勝だなと口もとが緩む。
だけどそれ以上に持っていかれたものは大きくて。
『ラギー、ありがとう!すっごく嬉しい!』
「っ!」
その瞬間、オレは初恋というものを経験した。
でもオレはスラム育ちの嫌われもののハイエナで、帝くんはいいトコの仔猫。
釣り合う訳がないって思いが常に心の中にあった。
だけど、何度も遊ぶ度に膨れ上がる好きの気持ちと、何度も会う度にオレのものにしたいっていう独占欲で頭がいっぱいになる毎日。
報われもしないそんな気持ちをどうにか閉じ込めようとしていた頃、学園からの馬車がやって来た。
地元の奴らに立派になった姿を見てもらいたいっていうのもあったけど、帝くんのことを忘れなきゃっていう思いもあってオレはこの学園に入学した。
それなのに
「(何で入学してくるんだよ…)」
そんなことを考えていると鏡の間に着く。
「ほら、ここッスよ」
『ありがとう、ラギー……先輩?』
「…何スか、それ」
『何って今日から先輩だし、一応?』
「…今まで通りラギーでいいッス」
『そっか!ありがとう、ラギー。またねっ』
そう言って鏡の間へと入っていく後ろ姿。
「はぁ~、どうしてこんなことになるんスかね」
オレは落とした肩とは反対に期待で高まる気持ちには気付かない振りをして、サバナクローの寮へと戻った。