家族が旅行のため実家の猫を二日間預かることになった。たまたま家にやってきた彼は、我が物顔で室内を歩く四つ足の生き物に驚いたのか、それ以上入ってこようとはしない。
けれど人馴れした猫はどこ吹く風で、彼の足元にまとわりついている。じゃれているのかぴょんぴょん跳ねたり、会ったばかりなのに随分好かれているようだ。

「まさか先客がいるとは思いませんでした」

玄関から動かない彼は私に手土産のお菓子を手渡すと、そのまま回れ右をしてドアノブに手をかける。

「えっ、帰っちゃうの？」

折角来てくれたのに、と思って引き留めてしまった。けれど彼がもしアレルギーだったりしたら、ここにいてもらう訳にもいかない。

「……剛翼がですね」
「うん？」
「じゃれるのに丁度いいみたいで、犬猫には好かれてしまうんです」

下手したら毟られるんですよね、と苦笑いしている。
なるほど、理由は分かった。今も足元で跳んでいるのは、ふよふよ揺れる羽根が気になって仕方ないのだろう。

「えぇと、……どうしよう」

どちらにせよ今日は予定があって一日一緒にいられる訳ではないらしい。たまたま少しだけ時間があったので先に土産を渡そうと寄ってくれたようだった。

「なので暫くはあの愛らしい猫に貴女を貸してあげます。その後、かわいそうな鳥を構ってくれませんか？出来ればベッドの上で」

ちゃっかりお得意のウインク付きでからかわれる。どうもこの小鳥はお調子者でいけない。

「……仕方ないから勝負下着で待っててあげる！」