ホークス短編
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「相変わらず煮詰まってますね~」
昔より随分と端に追いやられて縮小された喫煙所のガラスを軽く叩かれて視線を上げる。そこにはにこにこと胡散臭いがいい笑顔でこちらを見ているホークスがいた。
身体が資本の仕事であるヒーローの彼に、害でしかない副流煙で満たされたここへは来るなと、何度言ってもまともに聞きやしない。
自販機で買ってきたらしい彼御用達になっているエンデヴァーコラボモデルの缶コーヒーを手土産に、煙草を吸わないはずのホークスは堂々と喫煙室に入室してきた。
別に特段問題はないと言わんばかりに当たり前の顔で隣のパイプ椅子に腰かける。確かに成人はしているので入室に法的な問題がないことは確かだけれど。
「ちょっと息抜きですよ、お互い様でしょう」
小気味いい音を響かせて缶コーヒーのプルタブを開けると、それを私に差し出してくる。
無言で受け取って一気に半分ほど飲み干せば、いい飲みっぷりだと笑いながら自分の分の缶を開けていた。
「疲れた」
「でしょうねぇ、そんな顔してます。ちなみに俺も疲れてます」
へらり、と笑ってちびちびコーヒーを飲む彼のスケジュールは強行軍で、今日中に福岡の事務所へとんぼ返りだったはずだ。こんなところにいるくらいなら十分でも目を閉じて体を休めた方がいい。
けれど喫煙室から追い出したところでここから離れることはなく、何だかんだガラス越しに会話が続くだけなのは分かっている。それもあって彼を喫煙室から追い出すことはかなり前に諦めた。
「便利なのも考え物だね」
彼のスケジュールを強行軍と言うが、私もそれなりのスケジュールで仕事をしている。日々の残業に、削れていく昼休憩。セキュリティ上問題ない仕事は持ち帰って休日に済ませる、なんてこともある。
「それこそお互い様です。あなただって羽根がなくても馬車馬のように働くでしょう」
どうやら彼は自分のコーヒーがなくなるまではここに居座るつもりのようだった。
その態度に甘えて最近やっと慣れてきた電子煙草に専用のスティックを差し込んで、加熱スイッチを入れる。
「あれ、いつの間に鞍替えしたんですか」
「紙は最近肩身が狭いの、こっちのが臭くなくていいでしょ」
現にこの喫煙所からも水の入った灰皿は消え、小さなゴミ箱だけになっている。
紙煙草は火事の元だとか臭いが不快だと言って、敷地内では吸えなくなってしまった。
どうしても紙煙草が吸いたいのであれば、わざわざ駅の近くにある公共の喫煙所まで移動する必要がある。
吸い心地で言うのであれば私は今でも紙煙草の方が好ましいと思っているけれど、確かに電子煙草の方が幾分か臭いはマシに思うし、灰が落ちないおかげで掃除も楽だ。
「あなたの煙を纏うの、結構好きだったのに」
「……物好き」
本当ですよ、と笑う言葉が真実かどうかは分からない。
けれどだからと言って煙の匂いが変わったことを理由に、これからここに来なくなることもないのだろう。
「残り香って言うんですかね。あなたの傍にいた証みたいで、ちょっと安心したりして」
「むしろ申し訳なくなるけど」
肺まで吸い込んだ煙を、ホークスとは逆側を向いてゆっくりと吐き出す。電子煙草独特の香りはするが、これは大して残ったりはしない。
「いいんです、俺の勝手なので。あと、煙の香りが移った指先で撫でられるのも好きでした」
「もしかしてホークスって、ガソリンスタンドの匂いとかも好き?」
「いや、それはどうでもいいですね」
飲み終わった缶を手に、ホークスが立ち上がる。
コーヒー一缶分のわずかな逢瀬。私たちはそのくらいの距離感がとても心地よかった。
きっと、これからも。
昔より随分と端に追いやられて縮小された喫煙所のガラスを軽く叩かれて視線を上げる。そこにはにこにこと胡散臭いがいい笑顔でこちらを見ているホークスがいた。
身体が資本の仕事であるヒーローの彼に、害でしかない副流煙で満たされたここへは来るなと、何度言ってもまともに聞きやしない。
自販機で買ってきたらしい彼御用達になっているエンデヴァーコラボモデルの缶コーヒーを手土産に、煙草を吸わないはずのホークスは堂々と喫煙室に入室してきた。
別に特段問題はないと言わんばかりに当たり前の顔で隣のパイプ椅子に腰かける。確かに成人はしているので入室に法的な問題がないことは確かだけれど。
「ちょっと息抜きですよ、お互い様でしょう」
小気味いい音を響かせて缶コーヒーのプルタブを開けると、それを私に差し出してくる。
無言で受け取って一気に半分ほど飲み干せば、いい飲みっぷりだと笑いながら自分の分の缶を開けていた。
「疲れた」
「でしょうねぇ、そんな顔してます。ちなみに俺も疲れてます」
へらり、と笑ってちびちびコーヒーを飲む彼のスケジュールは強行軍で、今日中に福岡の事務所へとんぼ返りだったはずだ。こんなところにいるくらいなら十分でも目を閉じて体を休めた方がいい。
けれど喫煙室から追い出したところでここから離れることはなく、何だかんだガラス越しに会話が続くだけなのは分かっている。それもあって彼を喫煙室から追い出すことはかなり前に諦めた。
「便利なのも考え物だね」
彼のスケジュールを強行軍と言うが、私もそれなりのスケジュールで仕事をしている。日々の残業に、削れていく昼休憩。セキュリティ上問題ない仕事は持ち帰って休日に済ませる、なんてこともある。
「それこそお互い様です。あなただって羽根がなくても馬車馬のように働くでしょう」
どうやら彼は自分のコーヒーがなくなるまではここに居座るつもりのようだった。
その態度に甘えて最近やっと慣れてきた電子煙草に専用のスティックを差し込んで、加熱スイッチを入れる。
「あれ、いつの間に鞍替えしたんですか」
「紙は最近肩身が狭いの、こっちのが臭くなくていいでしょ」
現にこの喫煙所からも水の入った灰皿は消え、小さなゴミ箱だけになっている。
紙煙草は火事の元だとか臭いが不快だと言って、敷地内では吸えなくなってしまった。
どうしても紙煙草が吸いたいのであれば、わざわざ駅の近くにある公共の喫煙所まで移動する必要がある。
吸い心地で言うのであれば私は今でも紙煙草の方が好ましいと思っているけれど、確かに電子煙草の方が幾分か臭いはマシに思うし、灰が落ちないおかげで掃除も楽だ。
「あなたの煙を纏うの、結構好きだったのに」
「……物好き」
本当ですよ、と笑う言葉が真実かどうかは分からない。
けれどだからと言って煙の匂いが変わったことを理由に、これからここに来なくなることもないのだろう。
「残り香って言うんですかね。あなたの傍にいた証みたいで、ちょっと安心したりして」
「むしろ申し訳なくなるけど」
肺まで吸い込んだ煙を、ホークスとは逆側を向いてゆっくりと吐き出す。電子煙草独特の香りはするが、これは大して残ったりはしない。
「いいんです、俺の勝手なので。あと、煙の香りが移った指先で撫でられるのも好きでした」
「もしかしてホークスって、ガソリンスタンドの匂いとかも好き?」
「いや、それはどうでもいいですね」
飲み終わった缶を手に、ホークスが立ち上がる。
コーヒー一缶分のわずかな逢瀬。私たちはそのくらいの距離感がとても心地よかった。
きっと、これからも。
