騎士の妹君と王子さま
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(妹君と鷲寮チーム)
新学期が始まって1ヶ月が過ぎた頃、その年のクィディッチメンバーの選考が行われる。無事メンバーの選出を終えて各寮は新たなチーム作りに取り組むのだが、レイブンクロー寮の練習日初日は何処か様子が可笑しかった。
「いい加減白状しなさいな」
現キャプテンでシーカーのシルビィアはアイビス、ジェット、ナナバの3人と対峙している。彼女の腕の中には本来居るはずのない彼等の大事な妹君フィオがいた。まるで人質のようだ。
「キャプテン、それは脅しですか?」
「人聞きの悪いこと言わないで。ただアンタ達が隠してるモノを知りたいだけ。独占は良くないわ、ねぇジェット?」
名指しされたジェットの肩が跳ねる。そんな隠し事が苦手な後輩に、鷲寮の女帝は容赦しない。
「いつの間に飛び方を修正出来たのかしら。聞けばこの子のお陰って言うじゃない。ぜひチームメンバーと共有したいわ」
アイビスは横に立つ友人に対して内心舌打ちした。周りにフィオが関わってることは伏せておきたかったというのに。
逆隣に立つナナバは降参したようにため息が出た。
「アビ、もう隠さなくて良いんじゃない? 現にジェットが結果出しちゃったし、キャプテンにもフィオちゃんのことバレてるし」
「アレはフィオが2年かけて考案したんだ。そんな簡単に教えてたまるか」
「教えていいよ」
当の本人はあっさり許可した。
談話室で週末の朝をルームメイトとのんびり過ごしているところに、突然クィディッチキャプテンが現れて、訳も分からず連れてこられたのはクィディッチ競技場。今までの4人の会話から揉めている原因も理解できた。
「いいの。同じ寮だもん」
「けどなあ…」
「シルビィア先輩たちも、あくまで効果に個人差があることはわかってもらえると助かります」
「勿論よ。許可をありがとう」
未だに納得していない様子のアイビスに苦笑しながら、フィオは自寮のクィディッチチームと向き合った。
いつ思いついたのか思い出せないが、きっかけは長期休暇に自宅へ遊びに来ていたジェットの箒の飛び方を見たときだった。
少し癖のある飛び方をするなと感じた。スピードはあるけど方向変えにぎこちなさがあるように見えた。彼に聞けば方向を変える時重心が定まらなくなり安定した姿勢が取れないのだそうだ。
男子特有の急激な成長期が起因してるのかと思えば、その時期は過ぎていて今の成長は緩やからしい。姿勢を支える筋力量も十分そうだった。
そこで他の3人の飛び方と比べてみた。
アイビスはジェットと似た傾向がたまに見えるが、持ち前の器用さで自己修正をしながら飛んでいる。ナナバとマイクロトフは筋肉量は少ないのに安定さがある飛び方だ。
彼等の飛び方の違いは日々の鍛錬にあるようだった。
飛び方に安定さがある2人は筋トレと共に柔軟性を重視したトレーニング法で身体のバランスが良い。また筋肉で身体が重くなり過ぎないよう調整しているらしい。
一方不安定さがある2人はやたら筋力をつけるトレーニング法ばかりだった。筋肉がつきやすいので成果がわかり易い故の傾向だ。これは体質の差からくる偏りだろう。
筋力頼りの飛び方を急に変えることは困難なので、別の改善策を考えた結果体幹を鍛え直すことにした。
持ち前の好奇心からホグワーツ授業外の本も読み込んでいたフィオは人体について書かれた本を捜し出し、著者やクィディッチ選手のトレーニングに詳しいトレーナーを調べて直接手紙に質問を書いて送ってみた。
いち少女の手紙なのでまともな返事がこないこともあったが、中には真摯に返答をくれる人もいた。アイビスの名前も借りて複数の専門家とやり取りしていき、あるトレーニング方法を考案できた。
それが体幹を鍛えるためのインナーマッスルトレーニング法である。
そのトレーニング方法を伝えたら、ジェットは大喜びし毎日欠かさず行っていた。インナーマッスルを鍛えることで普段の筋トレの効果が増し、ジェットの飛び方に安定さが現れはじめた。
ナナバやマイクロトフからは日頃の鍛錬がより効率的にできて助かると好評だった。アイビスもこのトレーニングは欠かさず行っているみたいだ。
人の役に立てて嬉しくて、フィオにとっては大変思い出深い出来事になっている。
一通りのトレーニング方法をジェットに実演してもらいながらフィオは教えていく。チームメンバーの反応はまちまちで、既に体幹がしっかりしている人と未熟な人がはっきり分かれている。途中でダウンしてしまったり、ワンセットをさくっとこなせる人と様々だった。
「これは効くわね。最高のトレーニング方法だわ」
シルビィア自身普段鍛えない部位に効くのを実感している。他のメンバーも感心していた。ウォーミングアップに取り入れたいという声まで上がる。
なんだかフィオは少し照れてしまう。個人的な探究心からの産物なのに何だか大事になっている気がする。
「セット数は自由に変えても大丈夫です。少ない回数でも続けることが大事だと思うので。効果の現れ方に個人差はありますが、みんなの日々の鍛錬に役立てれば嬉しいです」
「くれぐれも他寮には流出させないでくださいよ。あといい加減フィオ返してもらえません?」
「わかってるわよ、当たり前でしょ。嫌よ、可愛いもの。それにアンタのものじゃないでしょ」
「『俺の』妹です。気安く触らんでください」
「ケチね。シスコンも程々にしないと嫌われるわよ?」
「どいつもこいつもシスコン扱いして。俺たちにとっては至ってフツーですけど」
「…自覚ないってたち悪いわね」
フィオを挟んで凄み合うアイビスとシルビィアを横目に、追加のウォーミングアップをはじめるジェットへナナバは声をかけた。
「大騒ぎになっちゃったねー」
「うっ、悪かったよ」
「でもジェットの飛び方が良くなってフィオちゃんも喜んでたし、結果オーライでしょ。マイクの方は心配してないし」
「もともと飛ぶの上手いからバレないだろ」
他寮には教えないと言いながら、マイクロトフは穴熊寮である。常に一緒だから忘れそうになるが。
けどフィオは拘りないようだから、頼まれれば誰にでも教えるだろう。自分が考え抜いて編み出したトレーニング法でさえ、あっさりと。
「さて、そろそろ止めないと練習時間なくなっちゃうかな」
クィディッチメンバーに囲まれて埋もれる可愛い妹分を救うべく、ナナバは重い腰を上げるのだった。
新学期が始まって1ヶ月が過ぎた頃、その年のクィディッチメンバーの選考が行われる。無事メンバーの選出を終えて各寮は新たなチーム作りに取り組むのだが、レイブンクロー寮の練習日初日は何処か様子が可笑しかった。
「いい加減白状しなさいな」
現キャプテンでシーカーのシルビィアはアイビス、ジェット、ナナバの3人と対峙している。彼女の腕の中には本来居るはずのない彼等の大事な妹君フィオがいた。まるで人質のようだ。
「キャプテン、それは脅しですか?」
「人聞きの悪いこと言わないで。ただアンタ達が隠してるモノを知りたいだけ。独占は良くないわ、ねぇジェット?」
名指しされたジェットの肩が跳ねる。そんな隠し事が苦手な後輩に、鷲寮の女帝は容赦しない。
「いつの間に飛び方を修正出来たのかしら。聞けばこの子のお陰って言うじゃない。ぜひチームメンバーと共有したいわ」
アイビスは横に立つ友人に対して内心舌打ちした。周りにフィオが関わってることは伏せておきたかったというのに。
逆隣に立つナナバは降参したようにため息が出た。
「アビ、もう隠さなくて良いんじゃない? 現にジェットが結果出しちゃったし、キャプテンにもフィオちゃんのことバレてるし」
「アレはフィオが2年かけて考案したんだ。そんな簡単に教えてたまるか」
「教えていいよ」
当の本人はあっさり許可した。
談話室で週末の朝をルームメイトとのんびり過ごしているところに、突然クィディッチキャプテンが現れて、訳も分からず連れてこられたのはクィディッチ競技場。今までの4人の会話から揉めている原因も理解できた。
「いいの。同じ寮だもん」
「けどなあ…」
「シルビィア先輩たちも、あくまで効果に個人差があることはわかってもらえると助かります」
「勿論よ。許可をありがとう」
未だに納得していない様子のアイビスに苦笑しながら、フィオは自寮のクィディッチチームと向き合った。
いつ思いついたのか思い出せないが、きっかけは長期休暇に自宅へ遊びに来ていたジェットの箒の飛び方を見たときだった。
少し癖のある飛び方をするなと感じた。スピードはあるけど方向変えにぎこちなさがあるように見えた。彼に聞けば方向を変える時重心が定まらなくなり安定した姿勢が取れないのだそうだ。
男子特有の急激な成長期が起因してるのかと思えば、その時期は過ぎていて今の成長は緩やからしい。姿勢を支える筋力量も十分そうだった。
そこで他の3人の飛び方と比べてみた。
アイビスはジェットと似た傾向がたまに見えるが、持ち前の器用さで自己修正をしながら飛んでいる。ナナバとマイクロトフは筋肉量は少ないのに安定さがある飛び方だ。
彼等の飛び方の違いは日々の鍛錬にあるようだった。
飛び方に安定さがある2人は筋トレと共に柔軟性を重視したトレーニング法で身体のバランスが良い。また筋肉で身体が重くなり過ぎないよう調整しているらしい。
一方不安定さがある2人はやたら筋力をつけるトレーニング法ばかりだった。筋肉がつきやすいので成果がわかり易い故の傾向だ。これは体質の差からくる偏りだろう。
筋力頼りの飛び方を急に変えることは困難なので、別の改善策を考えた結果体幹を鍛え直すことにした。
持ち前の好奇心からホグワーツ授業外の本も読み込んでいたフィオは人体について書かれた本を捜し出し、著者やクィディッチ選手のトレーニングに詳しいトレーナーを調べて直接手紙に質問を書いて送ってみた。
いち少女の手紙なのでまともな返事がこないこともあったが、中には真摯に返答をくれる人もいた。アイビスの名前も借りて複数の専門家とやり取りしていき、あるトレーニング方法を考案できた。
それが体幹を鍛えるためのインナーマッスルトレーニング法である。
そのトレーニング方法を伝えたら、ジェットは大喜びし毎日欠かさず行っていた。インナーマッスルを鍛えることで普段の筋トレの効果が増し、ジェットの飛び方に安定さが現れはじめた。
ナナバやマイクロトフからは日頃の鍛錬がより効率的にできて助かると好評だった。アイビスもこのトレーニングは欠かさず行っているみたいだ。
人の役に立てて嬉しくて、フィオにとっては大変思い出深い出来事になっている。
一通りのトレーニング方法をジェットに実演してもらいながらフィオは教えていく。チームメンバーの反応はまちまちで、既に体幹がしっかりしている人と未熟な人がはっきり分かれている。途中でダウンしてしまったり、ワンセットをさくっとこなせる人と様々だった。
「これは効くわね。最高のトレーニング方法だわ」
シルビィア自身普段鍛えない部位に効くのを実感している。他のメンバーも感心していた。ウォーミングアップに取り入れたいという声まで上がる。
なんだかフィオは少し照れてしまう。個人的な探究心からの産物なのに何だか大事になっている気がする。
「セット数は自由に変えても大丈夫です。少ない回数でも続けることが大事だと思うので。効果の現れ方に個人差はありますが、みんなの日々の鍛錬に役立てれば嬉しいです」
「くれぐれも他寮には流出させないでくださいよ。あといい加減フィオ返してもらえません?」
「わかってるわよ、当たり前でしょ。嫌よ、可愛いもの。それにアンタのものじゃないでしょ」
「『俺の』妹です。気安く触らんでください」
「ケチね。シスコンも程々にしないと嫌われるわよ?」
「どいつもこいつもシスコン扱いして。俺たちにとっては至ってフツーですけど」
「…自覚ないってたち悪いわね」
フィオを挟んで凄み合うアイビスとシルビィアを横目に、追加のウォーミングアップをはじめるジェットへナナバは声をかけた。
「大騒ぎになっちゃったねー」
「うっ、悪かったよ」
「でもジェットの飛び方が良くなってフィオちゃんも喜んでたし、結果オーライでしょ。マイクの方は心配してないし」
「もともと飛ぶの上手いからバレないだろ」
他寮には教えないと言いながら、マイクロトフは穴熊寮である。常に一緒だから忘れそうになるが。
けどフィオは拘りないようだから、頼まれれば誰にでも教えるだろう。自分が考え抜いて編み出したトレーニング法でさえ、あっさりと。
「さて、そろそろ止めないと練習時間なくなっちゃうかな」
クィディッチメンバーに囲まれて埋もれる可愛い妹分を救うべく、ナナバは重い腰を上げるのだった。
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