騎士の妹君と王子さま
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(妹君と忘れ物)
憧れのレイブンクロー生になれたフィオ。レイブンクロー寮は周りと付かず離れずの距離感が絶妙で、勉学や読書がしやすい環境であった。本棚には歴代の寮生が使っていた書籍が並び、図書館に行かずとも課題の参考資料探しには困らなかった。
寮内の壁やカーテンは夜空の星の模様で、談話室の天井には満天の星空が輝いている。星が好きなフィオはレイブンクロー寮に大満足だった。
また初めての授業はどれも楽しくて、特に魔法薬学は読むだけだった調合を実現できて感激したものだ。毎回出される大量のレポート課題は最初ナナバから書き方のコツを教われば、徐々に慣れて来て週末がまるっと潰れることなくこなせるようになっていた。
授業と課題のサイクルに慣れてきた頃、フィオはアイビスに図書館への出入り許可を願い出た。読書に没頭するのが目に見えていたため、授業に慣れるまで近づくのを禁止されていたのだ。
「…くれぐれも授業と課題を疎かにするなよ」
「ありがとう、アビ!」
飛びついて喜びを表現するフィオに、緩みきった顔のアイビス。談話室でたまたま横を通りすぎた寮生が目を丸くしたのを、傍にいたジェットとナナバは笑いを隠せなかった。
空いた時間をほとんど図書館で過ごすようになったフィオだが、思った以上にドジっ子なのが判明した。羽根ペンやペン先、インクなど忘れ物が多いのだ。
図書館では毎回忘れ物を訪ねるので司書にすぐ名前を覚えられていた。ナナバ達はよくフィオの忘れ物を一緒に探すようになった。不思議なことで、アイビスはフィオがどこに忘れ物したのか分かるのか、迷いなく見つけてくる。
フィオの行く場所は限られるし忘れ物は後日必ず見つかっていたが、ひとつだけ見つからないものがあった。それは休日用に付けていたリボンの髪飾りだった。ナナバが整えたサイドハーフに付けた対のラベンダー色をしたリボンの髪飾りは、アイビスと2人で忘れ物を探して寮に戻ってみたら片方無くなっていた。
アイビスからもらった誕生日プレゼントでフィオはとても気に入っていたため、しばらく落ち込んでしまった。
「似たものをまた贈るから、そう落ち込むな」
「アビが贈ってくれた大切なものに。無くしてごめんなさい」
もう片方は絶対に無くしたくないと、フィオは髪飾りを箱にしまった。アイビスが新たにプレゼントしたリボンの髪飾りをつけて、いまでもフィオは落としたもうひとつを探し続けている。
ジェットたちが卒業するまで見つからなかった忘れ物は、その片方の髪飾りだけだった。
「フィオ」
夕食を食べに行くため図書館から大広間へ向かうところに声をかけられた。振り返るとアイビスの親友であるハッフルパフ寮生マイクロトフが立っていた。
フィオが近寄れば微かに微笑んで向かえてくれる。
「こんばんはマイク。どうしたの?」
「これは君のだろう。図書館の机に忘れていたそうだよ。後輩が見つけた」
マイクロトフの手には見覚えのある水色の羽根ペン。鞄の中を覗き込めば、有るはずなのに入ってなかった。
またやってしまったみたいだ。
「助かるわ。ありがとう! 見つけてくれた後輩にお礼伝えてね」
「アビに聞いてはいたが、忘れっぽいんだな。気をつけろ」
「うん、気をつけるわ。マイクは夕食もう食べたの?」
「食べた。アビとは入り口で入れ違ったからまだ居ると思う」
「そうなのね。じゃあ行くわ、またねマイク」
小さな背中が去っていくのを見送ったマイクロトフは、後ろの廊下へ呼びかけた。廊下の柱からゆっくり現れた後輩が、フィオの忘れ物を拾った張本人である。
「自分で渡さなくて良かったのか?」
「…ちょっと顔を合わせ辛かったから。代わりにありがとう」
後輩は言いづらそうに視線を下にする。
マイクロトフは特に追求するつもりはないので、勇気づけるように後輩の肩に手を乗せた。後輩にもっと自信を持ってほしいから。
「次見つけたら直接渡したらいい。フィオは喜ぶ」
後輩が頷くとマイクロトフは満足したのか、温かい自寮へ帰ることにした。後輩の彼はもう見えない彼女の背中を一度振り返り、マイクロトフの後を追って自分も寮へ帰っていった。
憧れのレイブンクロー生になれたフィオ。レイブンクロー寮は周りと付かず離れずの距離感が絶妙で、勉学や読書がしやすい環境であった。本棚には歴代の寮生が使っていた書籍が並び、図書館に行かずとも課題の参考資料探しには困らなかった。
寮内の壁やカーテンは夜空の星の模様で、談話室の天井には満天の星空が輝いている。星が好きなフィオはレイブンクロー寮に大満足だった。
また初めての授業はどれも楽しくて、特に魔法薬学は読むだけだった調合を実現できて感激したものだ。毎回出される大量のレポート課題は最初ナナバから書き方のコツを教われば、徐々に慣れて来て週末がまるっと潰れることなくこなせるようになっていた。
授業と課題のサイクルに慣れてきた頃、フィオはアイビスに図書館への出入り許可を願い出た。読書に没頭するのが目に見えていたため、授業に慣れるまで近づくのを禁止されていたのだ。
「…くれぐれも授業と課題を疎かにするなよ」
「ありがとう、アビ!」
飛びついて喜びを表現するフィオに、緩みきった顔のアイビス。談話室でたまたま横を通りすぎた寮生が目を丸くしたのを、傍にいたジェットとナナバは笑いを隠せなかった。
空いた時間をほとんど図書館で過ごすようになったフィオだが、思った以上にドジっ子なのが判明した。羽根ペンやペン先、インクなど忘れ物が多いのだ。
図書館では毎回忘れ物を訪ねるので司書にすぐ名前を覚えられていた。ナナバ達はよくフィオの忘れ物を一緒に探すようになった。不思議なことで、アイビスはフィオがどこに忘れ物したのか分かるのか、迷いなく見つけてくる。
フィオの行く場所は限られるし忘れ物は後日必ず見つかっていたが、ひとつだけ見つからないものがあった。それは休日用に付けていたリボンの髪飾りだった。ナナバが整えたサイドハーフに付けた対のラベンダー色をしたリボンの髪飾りは、アイビスと2人で忘れ物を探して寮に戻ってみたら片方無くなっていた。
アイビスからもらった誕生日プレゼントでフィオはとても気に入っていたため、しばらく落ち込んでしまった。
「似たものをまた贈るから、そう落ち込むな」
「アビが贈ってくれた大切なものに。無くしてごめんなさい」
もう片方は絶対に無くしたくないと、フィオは髪飾りを箱にしまった。アイビスが新たにプレゼントしたリボンの髪飾りをつけて、いまでもフィオは落としたもうひとつを探し続けている。
ジェットたちが卒業するまで見つからなかった忘れ物は、その片方の髪飾りだけだった。
「フィオ」
夕食を食べに行くため図書館から大広間へ向かうところに声をかけられた。振り返るとアイビスの親友であるハッフルパフ寮生マイクロトフが立っていた。
フィオが近寄れば微かに微笑んで向かえてくれる。
「こんばんはマイク。どうしたの?」
「これは君のだろう。図書館の机に忘れていたそうだよ。後輩が見つけた」
マイクロトフの手には見覚えのある水色の羽根ペン。鞄の中を覗き込めば、有るはずなのに入ってなかった。
またやってしまったみたいだ。
「助かるわ。ありがとう! 見つけてくれた後輩にお礼伝えてね」
「アビに聞いてはいたが、忘れっぽいんだな。気をつけろ」
「うん、気をつけるわ。マイクは夕食もう食べたの?」
「食べた。アビとは入り口で入れ違ったからまだ居ると思う」
「そうなのね。じゃあ行くわ、またねマイク」
小さな背中が去っていくのを見送ったマイクロトフは、後ろの廊下へ呼びかけた。廊下の柱からゆっくり現れた後輩が、フィオの忘れ物を拾った張本人である。
「自分で渡さなくて良かったのか?」
「…ちょっと顔を合わせ辛かったから。代わりにありがとう」
後輩は言いづらそうに視線を下にする。
マイクロトフは特に追求するつもりはないので、勇気づけるように後輩の肩に手を乗せた。後輩にもっと自信を持ってほしいから。
「次見つけたら直接渡したらいい。フィオは喜ぶ」
後輩が頷くとマイクロトフは満足したのか、温かい自寮へ帰ることにした。後輩の彼はもう見えない彼女の背中を一度振り返り、マイクロトフの後を追って自分も寮へ帰っていった。
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