騎士の妹君と王子さま
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(妹君と入学式)
フィオは珍しく早起きが出来た。アイビスから夜更しするなと夕飯を食べる前から何度も言われて、好きな読書をしないで就寝したからだ。
今日フィオはホグワーツ魔法魔術学校に入学する。もう楽しそうなアイビスを羨ましく見送らなくていいのだ。
お気に入りのラベンダー色のワンピースを身にまとい、肩までつくくせ毛で鳶色の髪をハーフアップにしてリボンを結ぶ。リボンはワンピースとお揃いの色だ。ベリー色の縁をしたスクエアレンズの眼鏡をかけて階下へ向かった。
フィオの記念すべきホグワーツ入学日だと、家族揃っての見送りだった。アイビスは先に列車へ乗り、トランクを運んでくれている。赤いホグワーツ列車の前でフィオは家族と挨拶をしていた。
「…何か困ったことがあれば、すぐ連絡…」
「何もなくても、貴女のお手紙待ってるわ。楽しんで来てね」
「ありがとう。行ってきます」
少し口数が少ないお父さんと、いつも笑顔の優しいお母さん。大好きな2人と離れて過ごすのは寂しくてなかなか抱きついて離れられない。
荷物を置き終えたアイビスが戻ってきて、お父さんから早速小言をもらっているのを横目にフィオも渋々お母さんの腕から離れた。優しい彼らに手を振って、アイビスと共に列車に乗り込んだ。
アイビスについて行って入ったコンパートメントでは馴染み深い彼の同級生たちが待っていた。フィオは嬉しくて笑顔になる。
「おはよう!」
「おはよう、フィオちゃん。元気だった?」
「今年からよろしくな。同じ寮だといいな」
爽やかな笑顔のジェットと柔らかい微笑みのナナバ。アイビスと同じレイブンクロー生であり、いつも長期休暇に遊びに来てくれるメンバーなのでフィオもよく知っていた。
ナナバの横に座ったフィオを見届けると、アイビスは自分の荷物を手に持った。監督生のアイビスは別コンパートメントで待機しなければならないらしい。
「じゃあ、あと頼んだぜ」
「いってらっしゃい、アビ」
アイビスは可愛い挨拶をしてくれたフィオの頭をそっと撫でて、コンパートメントを去って行った。途中通路から黄色い声が聞こえた気がした。
しばらくして列車が発車する。初めて見る景色を眺めたり、ナナバとジェットからまだ見ぬホグワーツ城の不思議を沢山聞いたり、フィオは目を輝かせていた。
お昼時にはアイビスとマイクロトフも合流して、お母さんお手製のサンドイッチを食べた。ハッフルパフ生のマイクロトフもよく遊びに来ているメンバーのひとりだ。アイビスとは正反対な性格なのに仲良いのが不思議だけれど、穏やかで優しい彼のことをフィオも好きだ。
「フィオちゃんはどの寮かな」
「静かに読書出来るならどこでもいいわ。どの寮になっても宿題教えてね?」
「もちろん。いつでも聞きにおいで」
「俺と同じ寮だろ? 俺に聞け」
「まだ決まってないよ」
彼らとあれこれ話していると窓の外は暗くなっていき、私服から制服に着替えてナナバに髪を整えてもらっていると、もうじき到着を知らせるアナウンスが聞こえてきた。
無事終点に着き上級生のアイビスたちと分かれ、新入生の集まりに合流するフィオ。みんなそわそわと落ち着きなくおしゃべりする中、フィオは緊張していて逸れないようについていくのに必死でそれどころではなかった。
ようやく建物の中に入り明かりにほっとしていると、目の前に広がる光景に目を見開く。大広間の天井はさっき外で見た夜空をそのまま写していて、星と宙に浮かぶ蝋燭の火が柔らかく見下ろしていた。
各寮に分かれた長テーブルを通り過ぎて前に集まると、誘導してくれた教師から組分けの説明をされる。説明後前方中央部に置かれた椅子の上にある組分けの帽子が各寮の歌を歌い始めた。
そして組分けがスタート。一人ひとり名前を呼ばれて前の椅子に座って帽子を被ると、自分が過ごす各寮の名前を告げられる。名前が呼ばれた寮のテーブルは温かい拍手と歓声で迎えてくれている。組分け帽子の歌をぼんやり反芻していれば、ついにフィオの番だった。
「フィオ=テイラー」
一瞬全ての音がなくなった。あれだけ騒がしかったのに。
フィオはそんな空気に首を傾げながら、椅子に座ると被された帽子の声が直接頭に響いた。
『ふむ、これは不思議なお嬢さんだ』
帽子は悩ましげにしゃべった。何人か寮の決定に時間がかかっていたのはこうして帽子と対話していたからだろう。
「不思議ってなに?」
『お主のなかに真逆な性格が両立しておる。好奇心もあるが無関心も隣合わせ。お主の両親は共にグリフィンドールだったが、勇敢というより誠実さが勝る。はてさて…』
「…親と一緒じゃないのは、おかしいこと?」
『何もおかしいことではない。自分は自分だ。どのような未来を望むのか、自身の考えを大切にしたらいい。では、お嬢さん。君はどんな未来をお望みだ?』
「未来はどうしたいか分からないけど、静かに沢山読書が出来るところがいいわ」
「承知した。
−−−レイブンクロー!!」
帽子を取られ開けた視界の先には、歓声と拍手で迎えてくれる第二の家となる寮。黒一色のネクタイとローブが青色に染まった。
アイビスが態々前に出てきて腕を広げて待っていたので、フィオも迷わず彼の腕のなかへ飛び込んだ。
「言った通りだったろ?」
「うん。ちょっと安心」
どの寮でも良いのは半分本音。だけどアイビスたちと同じカラーの制服で同じ寮で過ごすのが憧れだった。
アイビスはフィオのおでこにキスをひとつ落として、小言をもらう前に彼女を席に着かせて自席へ戻っていった。
フィオは座った近くの同級生と軽く挨拶しながら、これから始まる学校生活に胸が高鳴って行くのを感じた。
「あ、フィオちゃん呼ばれた。相変わらずマイペースだねー」
とことこペースを乱すことなく椅子に座り組分け帽子を被るフィオをナナバたちは微笑ましく見守っていた。新入生等が入場したとき見かけた彼女は少し緊張した面持ちで少し心配になったが、大広間の星空に目が輝かせていて安堵する。
例のアイビスの妹だと既に噂が広まっていて、周りは注目しているのか大広間は静かになっている。
「フィオならハッフルパフもある気がするけど」
「母さんから聞いたが、母親はグリフィンドールらしいぜ」
「それは違うな。絶対合わない」
「フィオちゃんは騒がしいの嫌うよねー。じゃあスリザリン? カラー可愛いから似合いそう」
「馬鹿言え。うちだっつーの」
「列車でも思ったけど、その自信どっからくるわけ?」
「そんなモン俺の妹だからに決まってんだろ」
---レイブンクロー!!
組分け帽子が高々に放った寮の名前はアイビスの宣言通り、我らがレイブンクロー寮。
気づけばアイビスは長机の前で小さな妹君を迎えに行っていた。いつの間に席から立って移動したのか。
「出たよ、シスコン」
「やりすぎた、馬鹿。早々にけん制のつもりか」
我が寮の長机からは今日イチの大歓声に包まれていた。他の寮からは噂の妹を獲得できず落胆のため息まで溢れている。
はからずも有名になってしまったフィオ。アイビスのシスコンは隠しきれないのは分かっていたが、学生生活を静かに過ごしたい彼女の望みは叶えてあげられそうにない。
けれど同じ寮になれたのだから、思う存分こちらも構い倒せる。一緒にいる限り不自由はさせないつもりだ。
戻って来たアイビスを小突くジェットの向かいで、今年は退屈しなさそうだとナナバは微笑んだ。
フィオは珍しく早起きが出来た。アイビスから夜更しするなと夕飯を食べる前から何度も言われて、好きな読書をしないで就寝したからだ。
今日フィオはホグワーツ魔法魔術学校に入学する。もう楽しそうなアイビスを羨ましく見送らなくていいのだ。
お気に入りのラベンダー色のワンピースを身にまとい、肩までつくくせ毛で鳶色の髪をハーフアップにしてリボンを結ぶ。リボンはワンピースとお揃いの色だ。ベリー色の縁をしたスクエアレンズの眼鏡をかけて階下へ向かった。
フィオの記念すべきホグワーツ入学日だと、家族揃っての見送りだった。アイビスは先に列車へ乗り、トランクを運んでくれている。赤いホグワーツ列車の前でフィオは家族と挨拶をしていた。
「…何か困ったことがあれば、すぐ連絡…」
「何もなくても、貴女のお手紙待ってるわ。楽しんで来てね」
「ありがとう。行ってきます」
少し口数が少ないお父さんと、いつも笑顔の優しいお母さん。大好きな2人と離れて過ごすのは寂しくてなかなか抱きついて離れられない。
荷物を置き終えたアイビスが戻ってきて、お父さんから早速小言をもらっているのを横目にフィオも渋々お母さんの腕から離れた。優しい彼らに手を振って、アイビスと共に列車に乗り込んだ。
アイビスについて行って入ったコンパートメントでは馴染み深い彼の同級生たちが待っていた。フィオは嬉しくて笑顔になる。
「おはよう!」
「おはよう、フィオちゃん。元気だった?」
「今年からよろしくな。同じ寮だといいな」
爽やかな笑顔のジェットと柔らかい微笑みのナナバ。アイビスと同じレイブンクロー生であり、いつも長期休暇に遊びに来てくれるメンバーなのでフィオもよく知っていた。
ナナバの横に座ったフィオを見届けると、アイビスは自分の荷物を手に持った。監督生のアイビスは別コンパートメントで待機しなければならないらしい。
「じゃあ、あと頼んだぜ」
「いってらっしゃい、アビ」
アイビスは可愛い挨拶をしてくれたフィオの頭をそっと撫でて、コンパートメントを去って行った。途中通路から黄色い声が聞こえた気がした。
しばらくして列車が発車する。初めて見る景色を眺めたり、ナナバとジェットからまだ見ぬホグワーツ城の不思議を沢山聞いたり、フィオは目を輝かせていた。
お昼時にはアイビスとマイクロトフも合流して、お母さんお手製のサンドイッチを食べた。ハッフルパフ生のマイクロトフもよく遊びに来ているメンバーのひとりだ。アイビスとは正反対な性格なのに仲良いのが不思議だけれど、穏やかで優しい彼のことをフィオも好きだ。
「フィオちゃんはどの寮かな」
「静かに読書出来るならどこでもいいわ。どの寮になっても宿題教えてね?」
「もちろん。いつでも聞きにおいで」
「俺と同じ寮だろ? 俺に聞け」
「まだ決まってないよ」
彼らとあれこれ話していると窓の外は暗くなっていき、私服から制服に着替えてナナバに髪を整えてもらっていると、もうじき到着を知らせるアナウンスが聞こえてきた。
無事終点に着き上級生のアイビスたちと分かれ、新入生の集まりに合流するフィオ。みんなそわそわと落ち着きなくおしゃべりする中、フィオは緊張していて逸れないようについていくのに必死でそれどころではなかった。
ようやく建物の中に入り明かりにほっとしていると、目の前に広がる光景に目を見開く。大広間の天井はさっき外で見た夜空をそのまま写していて、星と宙に浮かぶ蝋燭の火が柔らかく見下ろしていた。
各寮に分かれた長テーブルを通り過ぎて前に集まると、誘導してくれた教師から組分けの説明をされる。説明後前方中央部に置かれた椅子の上にある組分けの帽子が各寮の歌を歌い始めた。
そして組分けがスタート。一人ひとり名前を呼ばれて前の椅子に座って帽子を被ると、自分が過ごす各寮の名前を告げられる。名前が呼ばれた寮のテーブルは温かい拍手と歓声で迎えてくれている。組分け帽子の歌をぼんやり反芻していれば、ついにフィオの番だった。
「フィオ=テイラー」
一瞬全ての音がなくなった。あれだけ騒がしかったのに。
フィオはそんな空気に首を傾げながら、椅子に座ると被された帽子の声が直接頭に響いた。
『ふむ、これは不思議なお嬢さんだ』
帽子は悩ましげにしゃべった。何人か寮の決定に時間がかかっていたのはこうして帽子と対話していたからだろう。
「不思議ってなに?」
『お主のなかに真逆な性格が両立しておる。好奇心もあるが無関心も隣合わせ。お主の両親は共にグリフィンドールだったが、勇敢というより誠実さが勝る。はてさて…』
「…親と一緒じゃないのは、おかしいこと?」
『何もおかしいことではない。自分は自分だ。どのような未来を望むのか、自身の考えを大切にしたらいい。では、お嬢さん。君はどんな未来をお望みだ?』
「未来はどうしたいか分からないけど、静かに沢山読書が出来るところがいいわ」
「承知した。
−−−レイブンクロー!!」
帽子を取られ開けた視界の先には、歓声と拍手で迎えてくれる第二の家となる寮。黒一色のネクタイとローブが青色に染まった。
アイビスが態々前に出てきて腕を広げて待っていたので、フィオも迷わず彼の腕のなかへ飛び込んだ。
「言った通りだったろ?」
「うん。ちょっと安心」
どの寮でも良いのは半分本音。だけどアイビスたちと同じカラーの制服で同じ寮で過ごすのが憧れだった。
アイビスはフィオのおでこにキスをひとつ落として、小言をもらう前に彼女を席に着かせて自席へ戻っていった。
フィオは座った近くの同級生と軽く挨拶しながら、これから始まる学校生活に胸が高鳴って行くのを感じた。
「あ、フィオちゃん呼ばれた。相変わらずマイペースだねー」
とことこペースを乱すことなく椅子に座り組分け帽子を被るフィオをナナバたちは微笑ましく見守っていた。新入生等が入場したとき見かけた彼女は少し緊張した面持ちで少し心配になったが、大広間の星空に目が輝かせていて安堵する。
例のアイビスの妹だと既に噂が広まっていて、周りは注目しているのか大広間は静かになっている。
「フィオならハッフルパフもある気がするけど」
「母さんから聞いたが、母親はグリフィンドールらしいぜ」
「それは違うな。絶対合わない」
「フィオちゃんは騒がしいの嫌うよねー。じゃあスリザリン? カラー可愛いから似合いそう」
「馬鹿言え。うちだっつーの」
「列車でも思ったけど、その自信どっからくるわけ?」
「そんなモン俺の妹だからに決まってんだろ」
---レイブンクロー!!
組分け帽子が高々に放った寮の名前はアイビスの宣言通り、我らがレイブンクロー寮。
気づけばアイビスは長机の前で小さな妹君を迎えに行っていた。いつの間に席から立って移動したのか。
「出たよ、シスコン」
「やりすぎた、馬鹿。早々にけん制のつもりか」
我が寮の長机からは今日イチの大歓声に包まれていた。他の寮からは噂の妹を獲得できず落胆のため息まで溢れている。
はからずも有名になってしまったフィオ。アイビスのシスコンは隠しきれないのは分かっていたが、学生生活を静かに過ごしたい彼女の望みは叶えてあげられそうにない。
けれど同じ寮になれたのだから、思う存分こちらも構い倒せる。一緒にいる限り不自由はさせないつもりだ。
戻って来たアイビスを小突くジェットの向かいで、今年は退屈しなさそうだとナナバは微笑んだ。
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