黎明期
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(歓迎される彼女)
シュイが白ひげに入って1ヶ月が過ぎた頃久しぶりに島の上陸が叶った。基礎訓練や慣れない隊務に忙しくしているなか、嬉しい報せである。シュイが甲板から見えはじめた島を眺めていると、隣にイゾウ隊長が優雅に現れた。
「待ち遠しいか?」
「はい、久しぶりの上陸になるので。どんな島ですか?」
「俺たちの縄張りのひとつだね。秋島で穏やかな島だ。鉱物の加工品が盛んで珍しいものも多いな。あと飯が美味い」
「それは楽しみです」
シュイが微笑めば、イゾウの頬も緩く上がる。イゾウは懐から包みを取り出して、「お前さんに渡すものがあるんだ」とシュイに差し出す。渡された包みに入っていたのは紙幣と金貨だった。
「月1で渡す船員の給金だ。初年は少ないだろうが、所属年数が長くなれば上がるし戦闘での手柄は上乗せされる。それともう一つ、これは親父からだ」
そしてもう一つ同じ位の大きさの可愛らしい色の包みが渡される。
…むしろ最初のより重みがある気がする。
「女は色々入り用だろ? 可愛い末っ子娘に初上陸のお小遣いだ」
「嬉しい。ありがとうございます!」
親父に先を越されて、俺からのはまたの機会になったがな。
シュイの嬉しそうな反応に、イゾウは言葉をのみ込んだ。懐から煙管を取り出しながら、口を開いた。
「…良かったら、このあと「ちょっと失礼」
そのイゾウの言葉を遮り、シュイと彼の間に割り込む人影がふたつ。
「邪魔してごめんなさいね、隊長さん。たまには私達にもチャンス貰えないかしら?」
「そうよ。いっつも16番隊でこの子囲ってて、入る隙間もありゃしないわ」
現れたのはナース長のエミリーと3番隊のライラック。白ひげ女性クルーのなかでも古参組である。
ふたりは両側から挟むようにシュイを抱き締めていた。シュイはきょとんとしておとなしく彼女達の間で収まっている。
これはなんだか面白くない流れになってきたな。イゾウはくるりと煙管を回した。
「何が言いたい?」
「今回シュイの上陸のお供は私たちが頂くわ」
「女子デートってこと」
うちの妹たちが言い出したら聞かないのは経験済みである。ここは彼女たちの我が儘を聞き入れるしかないだろう。
「そうかい。じゃあウチのを頼むね。夕方には返してくれよ、隊の奴等が店を用意してるからさ」
「分かりましたわ」
挟まれるシュイの頬を撫でて、楽しんでおいでと告げてイゾウは船内に戻っていく。さて夕方までどう時間を潰そうかと考えながら、もうひとつ包みがある懐に手をおさめた。
シュイはエミリーとライラック、それと7番隊のミモザが加わり4人で島に降りた。服やジュエリー、化粧品など買い物が止まらない。
彼女たちに勧められるモノはシュイにとって新鮮で気に入るものばかり。露出が多い服はお断りさせてもらったけど。和服を取扱う店があったことも嬉しかった。
一通り買い物をしたので、休憩がてらカフェでお茶をすることにした。4人の足元には埋め尽くすばかりのショッピング袋がある。
アイスグリーンティーを飲むシュイに右隣のライラックが聞いてきた。
「16番隊はどお?」
「皆さん優しいです。落ち着いた男性が多いので和やかですね」
「16はうちと違って静かよねー。女性クルーが加わらない隊の1つで有名だったのに、加入決まったときは驚いたね」
「ほんと。さらにウチの隊長とタイマンしたって聞いてどんな屈強な子かしらと思えば、まさか非戦闘員なんだもの」
アイスティーを飲むライラックは3番隊所属。実はシュイと加入前から顔見知りである。ライラックはシュイが地下牢にいたとき、身支度を手伝ってくれた女性クルーだ。
無意識下とはいえジョズ隊長に怪我をさせたのは事実。にも関わらず、シュイに優しく丁寧な扱いをしてくれたひと。傷を見つければ包帯まで巻いてくれた。
「あのときはごめんなさい。大切な人を傷つけてしまって」
「ああ、良いのよ気にしないで。隊長も油断してたって言うし。あなたのことずっと心配してたのよ。身体が細すぎるって」
そっと腕を取られて、肌にあの時の傷が残らなくてよかったとライラックは微笑んでくれる。本当に優しい人たちだ。
アップルジュースを飲む左隣のミモザが頬杖をついて、そういえばと切りだした。
「一時期イゾウ隊長は女嫌いじゃないかって噂流れてたわ」
「ええ?」
「それを真に受けたうちのラクヨウ隊長が酒の席で『男色か?』って聞いちゃってー。獲物抜かれて大変だったらしい」
「なんであの噂信じてんのよ…」
「声かけてないわけじゃないはずよ。イレーナは勧誘受けてたじゃない」
向かいに座るカフェラテを飲むエミリーはそう言った。
どの隊に加入できるかは隊長の推薦か、自ら志願するかに分かれる。後者が多いなか、シュイは特殊な理由があるゆえ前者である。
「そーだったの? でもイレーナは14に入ったじゃん」
「確かあの子『美人な隊長の下はストレスありそうなのでイヤです』って断ったのよ」
「あははっ、あいつサイコー!」
「あながち間違ってないわね。あの美貌が常に一緒だと自信無くしそうだもの…」
「シュイはイゾウ隊長をどう思ってるの?」
エミリーの質問に、他の2人の視線もシュイに集まる。
シュイは16番隊に配属されてからの日々を思い返す。第一印象はとてもスマートなひと。馴染みがある和装なのも親近感があったし、別世界でも文化圏が似ていてるので話す話題に困らない。どう言い表すのが正解か分からないけど。シュイから出た言葉は、
「とても格好良いひとだなあって、いつも見惚れてます。…内緒ですよ?」
きゃーっとミモザが両手を頬に当てて、ライラックは頻りに頷いている。なんだか恥ずかしくなってシュイは早口になった。
「隔離時代からとても気にかけてくださいました。多分文化圏が似てるので話やすいのかな。雰囲気が懐かしくて、隣にいると安心感があって落ち着きます」
「シュイもすっかり16番隊だねー」
こんなに一途に慕われるとは、隊長冥利に尽きるというものだ。
だからなのか、とエミリーは思った。イゾウの下船前のシュイへの態度は、別人かと疑うレベルで空気感が違ったので、エミリーとライラックは2人で顔を見合わせたものだ。
今なら納得できる。末っ子娘はとんでもない強者みたいだ。あの堅物をメロメロにしているのだから。
「隊長好きといえば、シュイの同船だったバンシーもビスタ隊長愛すごいわよね。隠してるけどバレバレ」
「確かにー。アカネ姉さんに負けてないもん」
「同士が出来たーってアカネが飛んで喜んでて笑ったわ」
女子トークは尽きない。バンシーとイスカしか同性の知り合いはいなかったから、シュイはどんな話も楽しくて仕方なかった。
沢山おしゃべりしたあと、カフェ近くで見つけた隊員に荷物を運ぶ手伝いを頼み、陽が傾く前に船に戻ると甲板で煙管を傾けていたイゾウが出迎えてくれた。彼女たちの荷物の多さに少し驚いた表情をしている。
「おかえりシュイ。随分買ったな。重かっただろ?」
「ただいまです。皆が持つの手伝ってくれたので大丈夫でした」
楽しんだ様子のシュイの後ろでは、ちゃんと時間通りに返したとドヤ顔する妹たちがいた。
「荷物を先に置いておいで。ここで待ってるから身支度終えたら、一緒に店へ行こうな」
「はい!」
シュイとライラックが並んで自室に戻る横で、ミモザがニヤニヤする顔を隠さずイゾウに絡んでいく。
「隊長はいつから待ってたんですかー? すみませんね、うちらが可愛い末っ子取っちゃって」
「そう思ってンなら、もうちっと早く返してほしいね」
「だってシュイの服選ぶの楽しくてー。あの子ったらスタイル良いから何着ても似合うんだもん。どーせなら隊長の好み聞いとけば良かったー」
「ミモザ」
イゾウの片眉がぴくりと上がるのを見届けると、ミモザはからかって気が済んたのかケタケタと笑って船内へ入っていった。
全くうちの妹共は親父から甘やかされて育ったからか、隊長にも物怖じなく平気でからかうので質が悪い。
元気なミモザにげんなりしてるところに、上機嫌なエミリーが声をかけてくる。
「ただいま戻りました、隊長さん」
「おかえり。うちのが世話ンなったね」
「いいえ。私たちも楽しくて素敵な時間でしたわ」
面倒見のいいエミリーのことだ。シュイのことを気にかけてくれる同性がいることはありがたい。彼女の上機嫌さから、シュイは大層歓迎されているのが分かって安心する。
「ところで、隊長さんの好みの服ってどんなだったかしら?」
イゾウは船縁に寄りかかっていた肘がズルっと落ちかけた。
まだその話題を引っ張るつもりか、うちの妹たちは。ミモザは軽く睨んで追い返せたが、古参のエミリーには通用しないだろう。
「…俺が贈る余地も残しといてくれないか」
「まあ。それは失礼しました」
くすくすとさらに上機嫌になったエミリーの横で、妹たちに振り回されっぱなしなイゾウは深くため息をついた。
この白ひげで最強なのは間違いなく妹たちだろう。
するとそこに身支度を終えたシュイが甲板へ出てきた。イゾウの姿を見つけると一直線に向かってくる。
その真っすぐさが眩しくて目を細めながら、イゾウは隊員が待つ店に向かうべくシュイへ手を差し出した。
シュイが白ひげに入って1ヶ月が過ぎた頃久しぶりに島の上陸が叶った。基礎訓練や慣れない隊務に忙しくしているなか、嬉しい報せである。シュイが甲板から見えはじめた島を眺めていると、隣にイゾウ隊長が優雅に現れた。
「待ち遠しいか?」
「はい、久しぶりの上陸になるので。どんな島ですか?」
「俺たちの縄張りのひとつだね。秋島で穏やかな島だ。鉱物の加工品が盛んで珍しいものも多いな。あと飯が美味い」
「それは楽しみです」
シュイが微笑めば、イゾウの頬も緩く上がる。イゾウは懐から包みを取り出して、「お前さんに渡すものがあるんだ」とシュイに差し出す。渡された包みに入っていたのは紙幣と金貨だった。
「月1で渡す船員の給金だ。初年は少ないだろうが、所属年数が長くなれば上がるし戦闘での手柄は上乗せされる。それともう一つ、これは親父からだ」
そしてもう一つ同じ位の大きさの可愛らしい色の包みが渡される。
…むしろ最初のより重みがある気がする。
「女は色々入り用だろ? 可愛い末っ子娘に初上陸のお小遣いだ」
「嬉しい。ありがとうございます!」
親父に先を越されて、俺からのはまたの機会になったがな。
シュイの嬉しそうな反応に、イゾウは言葉をのみ込んだ。懐から煙管を取り出しながら、口を開いた。
「…良かったら、このあと「ちょっと失礼」
そのイゾウの言葉を遮り、シュイと彼の間に割り込む人影がふたつ。
「邪魔してごめんなさいね、隊長さん。たまには私達にもチャンス貰えないかしら?」
「そうよ。いっつも16番隊でこの子囲ってて、入る隙間もありゃしないわ」
現れたのはナース長のエミリーと3番隊のライラック。白ひげ女性クルーのなかでも古参組である。
ふたりは両側から挟むようにシュイを抱き締めていた。シュイはきょとんとしておとなしく彼女達の間で収まっている。
これはなんだか面白くない流れになってきたな。イゾウはくるりと煙管を回した。
「何が言いたい?」
「今回シュイの上陸のお供は私たちが頂くわ」
「女子デートってこと」
うちの妹たちが言い出したら聞かないのは経験済みである。ここは彼女たちの我が儘を聞き入れるしかないだろう。
「そうかい。じゃあウチのを頼むね。夕方には返してくれよ、隊の奴等が店を用意してるからさ」
「分かりましたわ」
挟まれるシュイの頬を撫でて、楽しんでおいでと告げてイゾウは船内に戻っていく。さて夕方までどう時間を潰そうかと考えながら、もうひとつ包みがある懐に手をおさめた。
シュイはエミリーとライラック、それと7番隊のミモザが加わり4人で島に降りた。服やジュエリー、化粧品など買い物が止まらない。
彼女たちに勧められるモノはシュイにとって新鮮で気に入るものばかり。露出が多い服はお断りさせてもらったけど。和服を取扱う店があったことも嬉しかった。
一通り買い物をしたので、休憩がてらカフェでお茶をすることにした。4人の足元には埋め尽くすばかりのショッピング袋がある。
アイスグリーンティーを飲むシュイに右隣のライラックが聞いてきた。
「16番隊はどお?」
「皆さん優しいです。落ち着いた男性が多いので和やかですね」
「16はうちと違って静かよねー。女性クルーが加わらない隊の1つで有名だったのに、加入決まったときは驚いたね」
「ほんと。さらにウチの隊長とタイマンしたって聞いてどんな屈強な子かしらと思えば、まさか非戦闘員なんだもの」
アイスティーを飲むライラックは3番隊所属。実はシュイと加入前から顔見知りである。ライラックはシュイが地下牢にいたとき、身支度を手伝ってくれた女性クルーだ。
無意識下とはいえジョズ隊長に怪我をさせたのは事実。にも関わらず、シュイに優しく丁寧な扱いをしてくれたひと。傷を見つければ包帯まで巻いてくれた。
「あのときはごめんなさい。大切な人を傷つけてしまって」
「ああ、良いのよ気にしないで。隊長も油断してたって言うし。あなたのことずっと心配してたのよ。身体が細すぎるって」
そっと腕を取られて、肌にあの時の傷が残らなくてよかったとライラックは微笑んでくれる。本当に優しい人たちだ。
アップルジュースを飲む左隣のミモザが頬杖をついて、そういえばと切りだした。
「一時期イゾウ隊長は女嫌いじゃないかって噂流れてたわ」
「ええ?」
「それを真に受けたうちのラクヨウ隊長が酒の席で『男色か?』って聞いちゃってー。獲物抜かれて大変だったらしい」
「なんであの噂信じてんのよ…」
「声かけてないわけじゃないはずよ。イレーナは勧誘受けてたじゃない」
向かいに座るカフェラテを飲むエミリーはそう言った。
どの隊に加入できるかは隊長の推薦か、自ら志願するかに分かれる。後者が多いなか、シュイは特殊な理由があるゆえ前者である。
「そーだったの? でもイレーナは14に入ったじゃん」
「確かあの子『美人な隊長の下はストレスありそうなのでイヤです』って断ったのよ」
「あははっ、あいつサイコー!」
「あながち間違ってないわね。あの美貌が常に一緒だと自信無くしそうだもの…」
「シュイはイゾウ隊長をどう思ってるの?」
エミリーの質問に、他の2人の視線もシュイに集まる。
シュイは16番隊に配属されてからの日々を思い返す。第一印象はとてもスマートなひと。馴染みがある和装なのも親近感があったし、別世界でも文化圏が似ていてるので話す話題に困らない。どう言い表すのが正解か分からないけど。シュイから出た言葉は、
「とても格好良いひとだなあって、いつも見惚れてます。…内緒ですよ?」
きゃーっとミモザが両手を頬に当てて、ライラックは頻りに頷いている。なんだか恥ずかしくなってシュイは早口になった。
「隔離時代からとても気にかけてくださいました。多分文化圏が似てるので話やすいのかな。雰囲気が懐かしくて、隣にいると安心感があって落ち着きます」
「シュイもすっかり16番隊だねー」
こんなに一途に慕われるとは、隊長冥利に尽きるというものだ。
だからなのか、とエミリーは思った。イゾウの下船前のシュイへの態度は、別人かと疑うレベルで空気感が違ったので、エミリーとライラックは2人で顔を見合わせたものだ。
今なら納得できる。末っ子娘はとんでもない強者みたいだ。あの堅物をメロメロにしているのだから。
「隊長好きといえば、シュイの同船だったバンシーもビスタ隊長愛すごいわよね。隠してるけどバレバレ」
「確かにー。アカネ姉さんに負けてないもん」
「同士が出来たーってアカネが飛んで喜んでて笑ったわ」
女子トークは尽きない。バンシーとイスカしか同性の知り合いはいなかったから、シュイはどんな話も楽しくて仕方なかった。
沢山おしゃべりしたあと、カフェ近くで見つけた隊員に荷物を運ぶ手伝いを頼み、陽が傾く前に船に戻ると甲板で煙管を傾けていたイゾウが出迎えてくれた。彼女たちの荷物の多さに少し驚いた表情をしている。
「おかえりシュイ。随分買ったな。重かっただろ?」
「ただいまです。皆が持つの手伝ってくれたので大丈夫でした」
楽しんだ様子のシュイの後ろでは、ちゃんと時間通りに返したとドヤ顔する妹たちがいた。
「荷物を先に置いておいで。ここで待ってるから身支度終えたら、一緒に店へ行こうな」
「はい!」
シュイとライラックが並んで自室に戻る横で、ミモザがニヤニヤする顔を隠さずイゾウに絡んでいく。
「隊長はいつから待ってたんですかー? すみませんね、うちらが可愛い末っ子取っちゃって」
「そう思ってンなら、もうちっと早く返してほしいね」
「だってシュイの服選ぶの楽しくてー。あの子ったらスタイル良いから何着ても似合うんだもん。どーせなら隊長の好み聞いとけば良かったー」
「ミモザ」
イゾウの片眉がぴくりと上がるのを見届けると、ミモザはからかって気が済んたのかケタケタと笑って船内へ入っていった。
全くうちの妹共は親父から甘やかされて育ったからか、隊長にも物怖じなく平気でからかうので質が悪い。
元気なミモザにげんなりしてるところに、上機嫌なエミリーが声をかけてくる。
「ただいま戻りました、隊長さん」
「おかえり。うちのが世話ンなったね」
「いいえ。私たちも楽しくて素敵な時間でしたわ」
面倒見のいいエミリーのことだ。シュイのことを気にかけてくれる同性がいることはありがたい。彼女の上機嫌さから、シュイは大層歓迎されているのが分かって安心する。
「ところで、隊長さんの好みの服ってどんなだったかしら?」
イゾウは船縁に寄りかかっていた肘がズルっと落ちかけた。
まだその話題を引っ張るつもりか、うちの妹たちは。ミモザは軽く睨んで追い返せたが、古参のエミリーには通用しないだろう。
「…俺が贈る余地も残しといてくれないか」
「まあ。それは失礼しました」
くすくすとさらに上機嫌になったエミリーの横で、妹たちに振り回されっぱなしなイゾウは深くため息をついた。
この白ひげで最強なのは間違いなく妹たちだろう。
するとそこに身支度を終えたシュイが甲板へ出てきた。イゾウの姿を見つけると一直線に向かってくる。
その真っすぐさが眩しくて目を細めながら、イゾウは隊員が待つ店に向かうべくシュイへ手を差し出した。