蘭嶺小説
昔、ぼくは大切な人間を傷付けた。
そんなぼくには幸せになる資格など無い。
ずっとそう思っていた。
だけど、全てを知った彼は
『おまえにだって幸せになる権利はある』と言ってくれた。
彼の言葉の通り、ぼくは幸せになってもいいの…?
-ねぇ、君はぼくが幸せになる事を許してくれる?-
『おーはやっほー♪全国一千万のHAYATOファンの皆、元気にしてたかにゃ?』
テレビから元気な声が聞こえる。
「ハヤハヤ、今日も頑張っているねー☆」
後輩が頑張っている姿を見るのはとても嬉しいと嶺二は思う。
『今日のテーマは「臨機応変」』
コーヒーを啜っていると珍しく寝坊気味の蘭丸が部屋から出て来た。
何時もはツンツンヘアーな髪型も今は下りていてカラコンも外しているので普段よりも幼く見える。
(可愛い♡♡)
「おはようランラン、いくら今日がオフでも少々お寝坊さんじゃないかな?」
「はよー、そうだな…」
(トッキー達が誘ってくれたからこうして一緒に暮らしているけれど…)
二人きりになると矢張り何か気まずい。
それは蘭丸が嶺二の過去を知っているからだ。
親友を見捨てたと思い込んでいる嶺二の過去を-
「あ、ランランもコーヒー飲む?」
「いらね、そういやハヤトは分かるがトキヤはどうした?」
『おはやっほーニュース』を観ながら蘭丸が尋ねる。
「トッキーはねひじりんとの旅番組の早朝ロケだよ、天気が悪いから心配だね」
「そうか」と言いながら蘭丸が洗面所への方へと向かう。
蘭丸の背中を見送ると
嶺二は再びコーヒーを飲み始めた。
今日は嶺二もオフなので部屋の中で寛いでいる。
台本をチェックする気も天気が悪いので愛車を洗う気も起きない。
ただ、こうしてゴロゴロとしているだけ。
「うーん、やる事がない…暇」
コンコン。
暫くしてドアが開く。
「おい嶺二、昼飯何が食いてぇ?」
「あ、あれ?もうお昼?」
目を丸くする嶺二を呆れて見る蘭丸。
その表情はまるで『何言ってやがんだコイツ』と言う顔をしていた。
「ん~、ランランに任せる。シクヨロ」
にっこりとした笑顔で蘭丸に言う。
「分かった、適当に作る」
「宜しくマッチョッチョ☆」
パタン。
扉が閉まると嶺二の笑顔が消える。
「ぼくは何をやっているんだろう…」
自分でも訳が分からず困惑をするのだった。
時刻は一時半。
今日は『おはやっほーニュース』の後にハヤトはCMの撮影があって帰って来ていない。
トキヤもまだロケ中である。
「広い家に二人きり…」
リビングに一人居る嶺二が誰に言う訳でもなく呟く。
「あ、ミューちゃんとアイアイに明日の打ち合わせの事で電話でもしようかな…」
だけど、二人も今日は仕事なのを思い出してスマホをテーブルの上に置く。
蘭丸は部屋から出て来ない、おそらくベースでも弾いているのだろう。
「ランラン…」
きゅっと手を握る。
「ランランとなら、ぼくは幸せになれる…?」
気が付くと嶺二は向日葵畑の前に居た。
これは懐かしいあの頃の夏の風景。
「れいちゃん…」
自分を呼ぶ声に振り返るとそこには一人の少年が立って居た。
クマのぬいぐるみを抱っこしていて如何にも育ちの良さそうな服を着ている。
「君は…」
「やっと迎えに来れた、一緒に黄金色のカブトムシを探しに行こう?」
そうだ、たった一日だけ一緒に遊んだあの少年だ。
元気に笑う少年に幼い嶺二は胸が高鳴るのを感じていた。
あの感情は一体何だったのだろうか。
「迎えに来てくれて有難う…」
ポロポロと何故か涙が零れ落ちる。
「泣くなよ、れいちゃん…」
少年の声ではない誰かの声が聞こえた気がした。
そして頭を大きな手で優しく撫でられた様な感触。
ハッと目を覚ます。
何時の間にか眠ってしまったらしく身体の上には薄物が掛けられていた。
時計を見るとあれからまだ三十分しか経っていない。
「……」
不思議な夢を見たものだと嶺二は思う。
そして同時に顔が赤くなる。
(これを掛けてくれたのってどう考えてもランランしか居ないよね、寝顔を見られちゃったよ~恥ずかしい…)
一応、礼を言うべく蘭丸の部屋の扉をノックする。
「どうした?入れよ」
すぐに蘭丸の返事があったので扉を開ける。
当の本人は部屋の真ん中で台本を読んでいた。
「これ掛けてくれたのランランだよね、お礼を言っときたくて」
そう言って薄物を見せる。
「別に大した事はしてねぇ、話はそれだけか?」
「あ、うん邪魔しちゃって本当にゴメンね?」
そそくさと部屋から出て行こうとする。
「待てよ、おまえ何でおれを避けているんだ」
「!」
蘭丸の台詞に嶺二の動きが止まる。
「別に避けてなんか…」
必死に声を出すがその声は微かに震えていた。
「いいや、おれがおまえの過去を知ったあの時からずっと避けている」
「……」
「嶺二」
嶺二の腕を掴むと蘭丸は自分の方に引き寄せる。
「ラ、ランラン?」
戸惑いながらも蘭丸の顔を見る。
オッドアイの瞳が嶺二を離さない。
嶺二はその瞳が最初は苦手だった。
まるで何でも見透かされているかの様で…。
「好きだ」
「!ランラン、何を言って…」
突然の告白に嶺二は戸惑う。
「ずっとおまえの事が好きだった」
「嘘…そんな…だってこんなぼくは…」
「言っただろ?おまえにも幸せになる権利はあるって」
「ぼくは幸せがどういうものなのか分からないよ」
記憶が蘇る。
どうしてあったのか知らないが昔の週刊誌を蘭丸が読んでしまった。
それは嶺二にとって忌々しい過去が書かれた記事が載っている。
『あ~、バレちゃった?そこに書かれている事は本当の事だよ?』
何時もの調子で嶺二は言う。
『だからね、こんなぼくは幸せになってはいけないんだ…』
少し自嘲気味に言うと蘭丸は嶺二を睨み付け。
『おまえにだって幸せになる権利はある』
そう言うと事務所から出て行った。
後には呆然とした嶺二が残されたのだった。
「おまえの事はおれが幸せにする…年下とか関係なしにおれを頼ってくれ、おまえの心の中に居るそいつごと受け止めてやるから」
「ランラン、カッコよすぎだよ」
蘭丸が自分の事を想ってくれていた、
それがとても嬉しかった。
心の中が暖かくなってくる。
(ああ、幸せってこういう事を言うんだ…
愛音、ぼくは幸せになってもいい?)
「本当はぼくもね…」
嶺二は蘭丸にそっと耳打ちをした。
「何か、あの二人の様子おかしくありませんか?」
トキヤが顎に手を添えながら考える。
「え~?とっても仲良しに見えるけど?」
きょとんとした表情でハヤトが言う。
「それがおかしいと言うのです、私達が居ない間に一体何が…」
「ボクは二人が仲良しで凄い嬉しいけどなー」
ぽんぽん。
トキヤは思わずハヤトの頭を撫でる。
「まぁ、そうですね漸く進展したと言う事ですかね…お互いに惹かれ合っていたのは見ていてバレバレでしたし」
「今度ダブルデートしようね♪」
双子がそんな話をしているとも知らずに蘭丸と嶺二は-
「えっ!ランランってば愛音に嫉妬していたの?!」
「あったり前だろ!何でおれ等は渾名なのにそいつだけ名前呼びなんだよ」
「そっかー、ランランってば可愛い♡♡
でも龍也先輩は名前で呼んでいるよ?」
「あの人は別だろうが!」
ぷいっと蘭丸はそっぽを向く。
心做しか顔が赤い照れている。
「で、ランランは何時からぼくの事を好きになってくれてたの?」
「てめぇ、今それを言わせる気か?」
蘭丸は怒っているが嶺二は気にせず先を促す。
「ほらほら~、照れずにお兄さんに教えてごらん☆」
「ずっと昔からだ。なっ、トマトを食うのが下手クソなれいちゃん」
そう言うと立ち上がり自分の部屋の方へと向かう。
「へっ?今のってどういう意味?
ちょっと待ってよランラーン」
あんなに暗かった雲は晴れ、夏の日差しが出ている。
-二人の夏はまだまだこれから-
そんなぼくには幸せになる資格など無い。
ずっとそう思っていた。
だけど、全てを知った彼は
『おまえにだって幸せになる権利はある』と言ってくれた。
彼の言葉の通り、ぼくは幸せになってもいいの…?
-ねぇ、君はぼくが幸せになる事を許してくれる?-
『おーはやっほー♪全国一千万のHAYATOファンの皆、元気にしてたかにゃ?』
テレビから元気な声が聞こえる。
「ハヤハヤ、今日も頑張っているねー☆」
後輩が頑張っている姿を見るのはとても嬉しいと嶺二は思う。
『今日のテーマは「臨機応変」』
コーヒーを啜っていると珍しく寝坊気味の蘭丸が部屋から出て来た。
何時もはツンツンヘアーな髪型も今は下りていてカラコンも外しているので普段よりも幼く見える。
(可愛い♡♡)
「おはようランラン、いくら今日がオフでも少々お寝坊さんじゃないかな?」
「はよー、そうだな…」
(トッキー達が誘ってくれたからこうして一緒に暮らしているけれど…)
二人きりになると矢張り何か気まずい。
それは蘭丸が嶺二の過去を知っているからだ。
親友を見捨てたと思い込んでいる嶺二の過去を-
「あ、ランランもコーヒー飲む?」
「いらね、そういやハヤトは分かるがトキヤはどうした?」
『おはやっほーニュース』を観ながら蘭丸が尋ねる。
「トッキーはねひじりんとの旅番組の早朝ロケだよ、天気が悪いから心配だね」
「そうか」と言いながら蘭丸が洗面所への方へと向かう。
蘭丸の背中を見送ると
嶺二は再びコーヒーを飲み始めた。
今日は嶺二もオフなので部屋の中で寛いでいる。
台本をチェックする気も天気が悪いので愛車を洗う気も起きない。
ただ、こうしてゴロゴロとしているだけ。
「うーん、やる事がない…暇」
コンコン。
暫くしてドアが開く。
「おい嶺二、昼飯何が食いてぇ?」
「あ、あれ?もうお昼?」
目を丸くする嶺二を呆れて見る蘭丸。
その表情はまるで『何言ってやがんだコイツ』と言う顔をしていた。
「ん~、ランランに任せる。シクヨロ」
にっこりとした笑顔で蘭丸に言う。
「分かった、適当に作る」
「宜しくマッチョッチョ☆」
パタン。
扉が閉まると嶺二の笑顔が消える。
「ぼくは何をやっているんだろう…」
自分でも訳が分からず困惑をするのだった。
時刻は一時半。
今日は『おはやっほーニュース』の後にハヤトはCMの撮影があって帰って来ていない。
トキヤもまだロケ中である。
「広い家に二人きり…」
リビングに一人居る嶺二が誰に言う訳でもなく呟く。
「あ、ミューちゃんとアイアイに明日の打ち合わせの事で電話でもしようかな…」
だけど、二人も今日は仕事なのを思い出してスマホをテーブルの上に置く。
蘭丸は部屋から出て来ない、おそらくベースでも弾いているのだろう。
「ランラン…」
きゅっと手を握る。
「ランランとなら、ぼくは幸せになれる…?」
気が付くと嶺二は向日葵畑の前に居た。
これは懐かしいあの頃の夏の風景。
「れいちゃん…」
自分を呼ぶ声に振り返るとそこには一人の少年が立って居た。
クマのぬいぐるみを抱っこしていて如何にも育ちの良さそうな服を着ている。
「君は…」
「やっと迎えに来れた、一緒に黄金色のカブトムシを探しに行こう?」
そうだ、たった一日だけ一緒に遊んだあの少年だ。
元気に笑う少年に幼い嶺二は胸が高鳴るのを感じていた。
あの感情は一体何だったのだろうか。
「迎えに来てくれて有難う…」
ポロポロと何故か涙が零れ落ちる。
「泣くなよ、れいちゃん…」
少年の声ではない誰かの声が聞こえた気がした。
そして頭を大きな手で優しく撫でられた様な感触。
ハッと目を覚ます。
何時の間にか眠ってしまったらしく身体の上には薄物が掛けられていた。
時計を見るとあれからまだ三十分しか経っていない。
「……」
不思議な夢を見たものだと嶺二は思う。
そして同時に顔が赤くなる。
(これを掛けてくれたのってどう考えてもランランしか居ないよね、寝顔を見られちゃったよ~恥ずかしい…)
一応、礼を言うべく蘭丸の部屋の扉をノックする。
「どうした?入れよ」
すぐに蘭丸の返事があったので扉を開ける。
当の本人は部屋の真ん中で台本を読んでいた。
「これ掛けてくれたのランランだよね、お礼を言っときたくて」
そう言って薄物を見せる。
「別に大した事はしてねぇ、話はそれだけか?」
「あ、うん邪魔しちゃって本当にゴメンね?」
そそくさと部屋から出て行こうとする。
「待てよ、おまえ何でおれを避けているんだ」
「!」
蘭丸の台詞に嶺二の動きが止まる。
「別に避けてなんか…」
必死に声を出すがその声は微かに震えていた。
「いいや、おれがおまえの過去を知ったあの時からずっと避けている」
「……」
「嶺二」
嶺二の腕を掴むと蘭丸は自分の方に引き寄せる。
「ラ、ランラン?」
戸惑いながらも蘭丸の顔を見る。
オッドアイの瞳が嶺二を離さない。
嶺二はその瞳が最初は苦手だった。
まるで何でも見透かされているかの様で…。
「好きだ」
「!ランラン、何を言って…」
突然の告白に嶺二は戸惑う。
「ずっとおまえの事が好きだった」
「嘘…そんな…だってこんなぼくは…」
「言っただろ?おまえにも幸せになる権利はあるって」
「ぼくは幸せがどういうものなのか分からないよ」
記憶が蘇る。
どうしてあったのか知らないが昔の週刊誌を蘭丸が読んでしまった。
それは嶺二にとって忌々しい過去が書かれた記事が載っている。
『あ~、バレちゃった?そこに書かれている事は本当の事だよ?』
何時もの調子で嶺二は言う。
『だからね、こんなぼくは幸せになってはいけないんだ…』
少し自嘲気味に言うと蘭丸は嶺二を睨み付け。
『おまえにだって幸せになる権利はある』
そう言うと事務所から出て行った。
後には呆然とした嶺二が残されたのだった。
「おまえの事はおれが幸せにする…年下とか関係なしにおれを頼ってくれ、おまえの心の中に居るそいつごと受け止めてやるから」
「ランラン、カッコよすぎだよ」
蘭丸が自分の事を想ってくれていた、
それがとても嬉しかった。
心の中が暖かくなってくる。
(ああ、幸せってこういう事を言うんだ…
愛音、ぼくは幸せになってもいい?)
「本当はぼくもね…」
嶺二は蘭丸にそっと耳打ちをした。
「何か、あの二人の様子おかしくありませんか?」
トキヤが顎に手を添えながら考える。
「え~?とっても仲良しに見えるけど?」
きょとんとした表情でハヤトが言う。
「それがおかしいと言うのです、私達が居ない間に一体何が…」
「ボクは二人が仲良しで凄い嬉しいけどなー」
ぽんぽん。
トキヤは思わずハヤトの頭を撫でる。
「まぁ、そうですね漸く進展したと言う事ですかね…お互いに惹かれ合っていたのは見ていてバレバレでしたし」
「今度ダブルデートしようね♪」
双子がそんな話をしているとも知らずに蘭丸と嶺二は-
「えっ!ランランってば愛音に嫉妬していたの?!」
「あったり前だろ!何でおれ等は渾名なのにそいつだけ名前呼びなんだよ」
「そっかー、ランランってば可愛い♡♡
でも龍也先輩は名前で呼んでいるよ?」
「あの人は別だろうが!」
ぷいっと蘭丸はそっぽを向く。
心做しか顔が赤い照れている。
「で、ランランは何時からぼくの事を好きになってくれてたの?」
「てめぇ、今それを言わせる気か?」
蘭丸は怒っているが嶺二は気にせず先を促す。
「ほらほら~、照れずにお兄さんに教えてごらん☆」
「ずっと昔からだ。なっ、トマトを食うのが下手クソなれいちゃん」
そう言うと立ち上がり自分の部屋の方へと向かう。
「へっ?今のってどういう意味?
ちょっと待ってよランラーン」
あんなに暗かった雲は晴れ、夏の日差しが出ている。
-二人の夏はまだまだこれから-
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