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新一とコナン⑤

「灰原~帰ろっ!」

授業が終わり、私は身支度をしていると工藤君が声を掛けてきた。

「ちょっと待ってて」

私はそう答えると、ランドセルに教科書をしまい終わると、立ち上がった。

「お前らいつも仲良いな~」

周りからそんな声が向けられて、工藤君は真っ赤になって言い返していた。

「違うよ、家が隣だから一緒に帰れって兄ちゃんに言われたんだもん」
「照れんなって」
「照れてないもん」
「あら?違うの?」
「え!?え、えーと…」

周りにからかわれていた工藤君に私の投げかけた言葉にもっと顔を真っ赤にして困っていた。

「帰るわよ」
「あ、待ってよ灰原~」

見兼ねた私がそう言うと工藤君は慌てて追いかけてくる。

私は工藤君と肩を並べて帰宅していた時、工藤君は笑顔を浮かべながら、学校で過ごした事とか楽しそうに話してくる。私はその話に相槌を打ちながら聞いてるだけだったけど、時々からかうように工藤君の言葉を遮って話すと工藤君はムキになって言い返していた。

それにしても、工藤君はよく喋る。

「ねえ、博士も今日居ないんでしょ?僕んちもお父さんとお母さん外国に行ってていないんだ。だから、今日学校終わったら兄ちゃん所に来てって言ってたよ?」
「お兄さんの高校に?」
「ううん。違うよ、警察!」
「え!?」

何も聞いてなかった私は工藤君の言葉に驚く。

「何で警察なのよ?」
「え!?兄ちゃん、警察に用があって学校の帰りに寄るから僕達も学校終わったら警察に寄ってって言ってたから…」
「嫌よ、私は…貴方だけ行けばいーじゃない。」
「えー?なんでー?」
「私は一人でお留守番出来るからいいのよ」

そう言って、工藤君に背を向けて家に帰ろうとした矢先、目の前には既に迎えに来たと思われる刑事がにこにこしながら姿を現していた。

「君達…今、学校終わったのかい?」
「高木刑事…」
「兄ちゃんが学校終わったら警察に来てって…僕のお父さんとお母さんと阿笠博士が今出かけてて留守だから…」
「工藤君だね、聞いてるよ…こっちにおいで」

話が行き届いてる様で、案内される私達。帰ろうとした私も、素直に高木刑事の後を歩いて警察署の中に入っていく。

警察署に入ると、目暮警部がニコニコしながら出迎えてくれた。

「学校終わったのかね?お兄ちゃんの用もうすぐで終わるから大人しく待ってるんだよ」
「うん!」

そう話していた目暮警部の目付きが変わり、高木刑事とコソコソ話始めた。

「目暮警部…通り魔の件ですが、今の所異常ないそうです。」
「そうか…」

どうやら、ここら辺に通り魔が現れるか心配で私達を高木刑事が出迎えてきたらしい。

「あ、兄ちゃん!」
「コナン!ちゃんと来れたんだな?」
「うん。」
「用終わったから、兄ちゃんと一緒に三人で帰ろう。」

そう言うと、お兄さんは目暮警部に挨拶をすると、私達を連れて警察署を後にした。

「兄ちゃん何か事件?」
「あ?ああ…ちょっとな。お前は気にすんな」
「通り魔が出るのかしら?」
「え!?あ、ああ…」

さっきの高木刑事の話が少し聞こえた私は、その事を言うとお兄さんは気まずそうに言葉を濁していた。私達に心配掛けたくなかったんだろうと思いながら、お兄さんは話題を変え、夕食何が食べたいか聞いてきた。

「灰原は何食べたい?」
「何で私に聞くのよ…」
「だって…」

問いかけてくる彼に私は素っ気なく返答する。彼はそんな私の反応にしゅんと項垂れてしまった。

そんな時、私の目の前に1軒のファーストフードのお店が目に止まる。

「じゃあ、あれ!」

私はそう言って、そのお店を指差した。

「ハンバーガーでいいのか?」
「別に…だって工藤君が聞くから答えただけよ…丁度近くにあったし…」

適当に提案した私に工藤君は嬉しそうに言う。

「僕ハンバーガー食べたい!」
「んじゃ、今日はそれにするか?」

そう言ってお兄さんと私と工藤君の三人は近くのハンバーガー店へ入っていった。

メニューを見ると、期間限定と書かれた物がデカデカと表示されていて、メニューを見た工藤君はまずそれに食いついた。

「僕これ!」
「いや、お前はそれ食えねーって、お子様セットでいいだろ?」
「やだよ、これにする!」
「じゃあ私も。」

工藤君の提案に、私も一緒にそのメニューに指を指すと、お兄さんが困った様な顔をしてもう一度聞いてくる。

「お前ら…これビックサイズだぞ?子供にはデカすぎるんだよ」
「残ったら持って帰ればいいじゃない…」
「たくっ…」

お兄さんは困りながら泣く泣く注文し、私達は空いてる席へ着いた。しばらくすると、ブザーが鳴りお兄さんは注文したハンバーガーを受け取って帰ってくるなり言う。

「今回だけだからな?残したら次はお子様セットにするからな?」
「だって、食べてみたかったんだもん!お母さんにまだ早いって言われて食べられなかったから…」
「そういえば私も…博士にダメって…」
「え!?」

私達の言葉に、お兄さん固まりまずいという顔をさせながら、私達に忠告してきた。

「今日の事は内緒だぞ?いいな?」
「何で?」
「何でって、母さん達にダメって言われた事をさせたからだよ!兄ちゃんが怒られるだろ?」
「案外優しいのよね、お兄さん…甘いって言うか…」
「そういう言い方ないだろ?尚更持って帰れねーじゃねーか。ちゃんと食って帰れよ?」
「大丈夫よ、明日まで博士いないし」
「お母さん達も明日までいないよ」

私達にタジタジなお兄さんはあっという間に自分の分を平らげていた。

「お腹いっぱい!」

案の定、工藤君は途中まで食べたビックサイズのハンバーガーを置いて満足そうにジュースを飲み始めた。

「だから言ったじゃねーか!あーあ、こんなに残して…どうするんだよ?これ…」
「兄ちゃんにあげる!」
「私もご馳走様でした!」
「お前らな…」

呆れながら私達を見るお兄さんは、頬杖をつきながら片手でジュースを飲んでいた。

最初に言った通り、残ったものは持ち帰り飲み終えたジュースだけを捨てて、私達は帰路につく。

お兄さんの手を繋ぐ工藤君の横を私も一緒に歩きながら家へ目指した。

「今日はファミレス行ったって事にしとけよ?」

お兄さんが口裏を合わせる様に提案してくる。

「いーじゃない、正直に言えば?」
「でもな…お前ら一度ダメって言われたんだろ?」
「大丈夫よ、ハンバーガー食べたいってお兄さんに言ったら、すんなり許してくれたから食べましたって…言えばいーじゃない。」
「だから、それがな…」
「でも、美味しかったからいーじゃない!」

言い合いをしている私達の言葉を遮るかのように、工藤君の最後の言葉にそれ以上何も言えなかった。

「そうだな…美味かったからそれでいっか!」
「うーん!」

工藤君の笑顔でその場は自然と解決してしまう不思議さがあった。工藤邸に差し掛かって、私はお兄さんにお礼を言うと阿笠邸に帰ろうとした時、呼び止められた。

「あ、待って!灰原さん!」
「え?」
「ほら、今日博士居ないんだろ?灰原さん一人になっちまうから、今日は俺達と一緒に…」
「大丈夫です。一人でも平気ですから…」

そう言って断ろうとする私に、更にお兄さんは引き止めてきた。

「さっきも言ったろ?通り魔の件で物騒だから、一人にさせる訳にいかねーんだ。今日は俺達の家に泊まってけよ!」
「でも…」
「灰原とお泊まり~?」
「コナンも喜んでる事だし…」

考え込んでる私を前ににこにこしている工藤君の頭に触れながら、誘導される私は仕方なく工藤君の家にお邪魔することにした。

博士から連絡で、工藤君の家に泊まると告げると、それは安心じゃわいと電話の向こうで私の報告を聞いていた。




お風呂も終わり、寝る支度をしている時…1本の電話が掛かってきた。受話器を取るお兄さんは、有希子さんと話している様子だった。

私は工藤君と一緒に電話をしているお兄さんに近寄り聞き耳を立てていた。

「あー、大丈夫だ。灰原さんも今日はうちに泊まってるから心配ないぜ?え?夕飯?」
「夕飯ハンバーガー食べた~」

お兄さんの言葉に瞬時に反応し、工藤君は下の方から叫ぶ様に声を上げる。

「ハンバーガーじゃなくて、ハンバーグだよ…今日ファミレスに行ってさ…な?コナン、あっち行ってろ…ああ、分かったよ。じゃあな…」

その後、工藤君がまた余計な事を喋りそうで心配の様なお兄さんは慌てる様に電話を切った。

「兄ちゃん!お母さん何て言ってた?」
「明後日には帰るからって言ってたぜ」
「後は?」
「え?」
「何か言われてたんじゃないかしら?」
「ああ、偏った物食べさせない様にって言われたよ…ハハハッ…」

お兄さんは笑って誤魔化すように私達に電話で話した事を教えてくれた。

「バレバレだった様ね…」
「ま、まあな。じゃあ、そろそろ寝ようぜ?」

そう言われお兄さんに寝室に促される私は、この日工藤君とお兄さんと3人で工藤家で一夜を過ごした。

慣れない空間で寝る事に中々寝付けなかった私だったけど、いつの間にか眠りに落ちていた。何故だかお兄さんに起こされるまでいつの間にかぐっすり眠ってしまっていた。

翌朝の工藤君の"何で灰原がいるの?"というまだ寝惚けている工藤君の顔にタオルを押し付けると、工藤君はぶーぶー言っていた事に振り向き際に私は笑っていた。
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