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新一とコナン④

カレー屋を後にする新一達一行は、少し歩いた所のアイス屋さんに向かっていた。

「アイスアイス~」

蘭の手をぎゅっと握って離さないコナンは、アイス屋に近づくに連れて嬉しそうに声を上げる。

「コナン君、何がいい?」

そう言って、自分の財布からお金を出そうとする蘭を新一は止めた。

「いいって、俺がだすよ。お前らも食べたいなら出すぜ?」
「お?工藤~太っ腹やな~」
「平次、何言うてんの?ええて、工藤君。あたしらの分は自分で払うから聞い使わんでもええよ?」
「遠慮すんなって…コナンの相手してくれたんだから…。煩くて迷惑かけたみたいだしさ」

そう言って、コナンの頭に触れながら頑なに奢ると言わんばかりの新一に、素直に奢られる事にした。

「ほら、コナン」
「わーい、ありがとう!」

そんな素直なコナンの声に、アイスを弟に渡しながら…新一は、お兄ちゃんの顔をして微笑んでいた。

「ありがとう、新一…」
「工藤君、おおきに」

アイスを店員さんから受け取りながら、各々に渡す新一に、それぞれがお礼を言う。

「すまんな、工藤…せや、今度大阪来たら今度は俺が奢ったるわ!」
「ああ…その時は頼むぜ」
「おおっ!」
「ほんま平次~、太っ腹やな!」
「誰がお前の分まで出す言うたやんけ…お前の分は自分で出さんかい」
「何や、平次のケチ」

そんなついくすりとする様なやり取りをする新一達に店員さんが覗き込みながら、コナンに話しかける。

「コナン君、よかったね~アイス美味しい?」
「うん!とっても美味しいよ!」
「そう、よかった」

ここのアイス屋さんは時々立ち寄る為、店員さんとは顔馴染みになっていた。店員さんはコナンの返答に微笑んでいた。

「ほな、またな工藤~」
「おう!」
「おおきにな~蘭ちゃんもまた今度ゆっくりな~」
「うん。またね~」
「バイバ~イ」

そう挨拶を交わしながら、手を振り合いながらさよならした。

「じゃあ、新一。私もここで…」
「ああ、悪かったな…急に呼び出して」
「全然。コナン君もまたね」
「うん、バイバイ蘭ねーちゃん!」

そして、蘭の背中を見送りながらコナンの手を握る新一は声をかけた。

「じゃあコナン。俺達も帰ろうか?」
「うん。」

そう言って、二人も仲良く帰路につく。帰宅中、コナンは終始新一の手を持って振りながら"カレー美味しかったね"とか"服部の兄ちゃん達今度いつ来る?"など話しながら歩いていた。

そして、工藤邸の玄関を開くと有希子が出迎えてくれていた。

「お母~さん!」

有希子の姿を発見したコナンは、一目散に有希子の胸に飛びついた。

「ただいま~今日ね、服部の兄ちゃんとね、恋人さんとね、蘭ねーちゃんとねカレー食べてきたんだよ~」
「お帰り~そう…服部君達来てたのね…迷惑掛けなかったかしら?」
「うん、大丈夫!」

コナンの視線を合わせながら話す有希子の問に、コナンは笑みを宿しながら今日の事を話続けていた。

「悪かったわね…新一。優ちゃんの仕事、一段落着いたからもう大丈夫よ。コナンちゃん、いい子にしてた?」
「ああ、いつも通りだよ」

そう答える新一に、有希子はふっと笑ってコナンのほっぺに触れながら聞く。

「コナンちゃーん、いい子にしてた?」
「うん!」

母親に抱きついてはしゃぎながら答えるコナンを見ると、楽しかった様で、終始笑顔でいた。コナンはお兄ちゃんの事が大好きだと分かっている有希子は、いつも、新一に頼りっきりだと言うのは、自覚はあるが…文句1つ言わないでコナンの面倒見てくれる新一に、時よりすまないという気持ちにさせられていた。

「いつも悪いわね…」

そんな風にいう有希子に、新一はいつも決まってこう答えていた。

「兄弟なんだから、当たり前だろ?」

そう言う新一の言葉に有希子は感謝していた。

奥の方から仕事詰めで書斎に閉じこもっていた優作がカチャとドアを開けて出てきたのを見て駆け寄るコナン。久しぶりに会う父親の登場に勢いよく駆け寄っていった。

「お父さん!お仕事終わった~?」
「おおっ、コナンか。今日はどこへ行ってきたのかな?」
「カレー!」

優作の手を持ってブラブラさせながら、優作にも教えるコナン。

「そうか、美味かったか?」
「うん!」
「じゃあ、夕食は少し遅くしようか。なあ、有希子…」
「そうね…」

優作の提案に有希子も同意するが、新一だけは否定しながら言う。

「いや、いいよ。俺とコナンは食ってきたし、どうせ二人は何も食ってないんだろ?俺達抜きで食えばいいじゃねーか…」
「いや、たまには外で食べようかと有希子と二人で話していた所だったんだ。」

そう言って、足元にいたコナンを抱き上げる優作。

「そうよ~だから、少し夕飯遅くして、みんなで食べに行きましょ。」
「コナンも行きたいだろうしな?」
「うん、行く行く~」

そう言って、優作に抱えられながら…バンザイしてアピールしていた。そんなコナンを見て、諦めたのか、新一も仕方なく承諾した。

「いいのよ、たまには甘えて頂戴。今日だって、どうせ服部君とゆっくり話したかったのに、コナンがいてゆっくり話せなかったみたいだし…」
「そんな事…ただ、服部は届け物を持ってきただけみたいだし…」

そう否定しようとするが、事件の事ゆっくり話せなかったのは確かで、慌ただしく帰ってしまった服部を思い返しながら納得させられる。

「父さん、もう仕事はいいのか?」
「ああ、何とか締め切りまでには間に合いそうだ…まだ完成はしてないが、後で少し読んでみるか?」
「え!?ホントか!?」

そう言って、子供の様に目を輝かせてくる新一に、まだまだ子供だと思いながらクスリと微笑む優作。

「ああ、後で読んでみてくれ」
「ああ!」

優作の言葉に嬉しそうに返答する新一。それを見るコナンは叫ぶ様に言った。

「僕も~」
「お前はいいんだよ」
「僕も兄ちゃんと一緒に読む~」

見兼ねた有希子が"はいはい、コナンちゃん"と言って優作からコナンを引き降ろすとリビングの方へ連れていった。

その光景を見た優作は、新一にぽつりと言う。

「お前もすっかりお兄ちゃんだな…」
「仕方ないだろ、コナンが産まれた時からずっと見てたんだ、俺のやる事真似したがるんだよあいつは…」

兄ちゃん兄ちゃんとずっと付いてきたコナン。時々煩い一面もあるが、弟に好かれる事で…嫌な気はしなかった。それを言葉にするのも恥ずかしく、新一は心と裏腹に…迷惑そうな発言が口調をつく。

それを知ってか知らずか、優作は腕を組みながら新一にぽつりと言う。

「まあ、それはコナンが…新一を、慕ってるからだと思うがな。」
「そうかな」

そう言われた新一は、自分の頬を指で掻きながら照れ笑いのような反応をさせる。その場に居た堪れなくなった新一は先にリビング行った有希子とコナンを追いかけるように、足早に向かった。

両親が忙しい代わりに、新一にべったりになってしまったコナン。リビングにやって来た新一に下から覗き込む様に新一に向けて話す。

「外食楽しみだね、兄ちゃん!」
「さっきも行ったばかりだろ…」
「そっかあ~」

そんな風に笑うコナンの頭を撫でる新一も一緒になって笑っていた。
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