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✩.*˚警察官は苦悩の連続✩.*˚

私は目暮警部から事情を聞き、コナンが帰ってくるのを家の前で腕を組みながら待っていると…重い足取りでコナンはちゃんと家に帰ってきた。

私の存在に気づいたのだろう、コナンは驚いた様子で私の方に歩み寄ると…困った顔をしながらか細い声で口を開いた。

「お、お父さん…あ、あの僕…」

今にも泣きそうな顔で言葉にならない様な言葉で話してきた。

「何も言うな。今はとにかく休みなさい…」
「……うん。」

私の言葉にコナンが素直に頷いたのを見て、コナンの背を押すと…家の中へ連れていった。

「目暮警部から電話貰ってな…気にするなと言っていたぞ。」
「……」
「刑事課なんて、忙しい上に…凶悪犯と接触する事もあるのだから、これで挫けていたら…最後までやり切れないと思うがな。」

今のコナンに何を言っても頭に入って行かない事もわかっているのだが…何か言わずに居られなかった。

コナンは私の話にコクリと頷き、私の誘導で黙って寝室に入っていった。眠れないかも知れないが、今は休ませてやる位しか私には出来ない。

私は書斎に戻り、原稿に目を通していると…玄関から物音がし、有希子達が買い物から帰ってきたのかな?と思い、席を立ち…扉を開けると、丁度新一がコナンの寝室をノックしようとしている所を声を掛けた。

「新一!」
「父さん…」
「今は、そっとしておいてやれ…落ち着いたら、コナンと話してみるさ」
「あー、うん…そうだな。」
「お前も目暮警部から連絡が行ったのか?」
「いや、俺は高木刑事から」
「そうか…」

それを聞いてコナンは上司に恵まれているんだなと、私は寝室に篭っているコナンに目を移しながら、フッと笑う。

「じゃあ、俺また後で来るよ!仕事のついでに寄っただけだから。」
「ああ、頑張れよ」

そう言って、手に持った封書をパラパラと振りかざしながら、忙しくバタバタと玄関に走るもう一人の息子を送り出した。

少しして、有希子や哀君が買い物から帰宅しコナンの事情を話すと驚いていたものの、心配の方が強かった様で…寝室に向かおうとしていたが、私は止めた。

そして、夕飯の時間になり呼びに行こうと寝室に入る。ここの所刑事の仕事が忙しく、まともに休めてないコナンを心配していた。それと同時に、コナンの涙をしばらく見てない事の方が心配は大きかったのかも知れない。それ程、コナンは私達に涙を見せていた息子だからだ。

寝室の扉を開ける私の登場に、コナンは顔を上げる。

やっぱり眠れず起きていた様子だった。両足を抱え、何か考え込んでる様子にも伺えた。

「どうだ?少しは休めたか?」

当然の様にコナンは首を横に振る。私はその反応にただ、そうか…とだけ口にし、コナンを見つめていた。

「僕…大事な容疑者を、取り逃しちゃったんだ…」

コナンは再び俯くと、そう呟くように話し出した。事前に目暮警部から事情を聞いていたが、コナンの口から直接聞きたかったのもあり、私はそのままコナンの言葉を待った。

「折角、先輩刑事さん達が捕まえたのに…僕、あの男の人の目が…」

話しながら、その時の情景がコナンの脳裏に蘇ってきたのだろう。自分の身を守るかのように…コナンは自分の両足を抱える力が強くなっていた。

怯えきっているコナンの傍に近寄り、ベットの傍の椅子に腰掛け、私はコナンの肩に手を触れた。すると、コナンは肩をビクッと振るわせ顔を上げてこちらを見る。

「お父さん…僕、バカだよね…警察官になる事が、こんなに怖い仕事だったなんて思って無くて、軽い気持ちで警察官を目指しちゃってさ…でも、実際は……」
「怖かったのか?」
「……うん。」

頷きながら、俯くコナンは…もう限界だという様に口にする。

「警察官になったの、間違えたのかなって…僕、僕…」

そこまで言うと、コナンは顔を埋めた。コナンの言いたい事は理解していたが、コナンは辞めたいと最後まで言うことをしなかった。コナンの中で、ここで辞めたら逃げる事になる事を知っているのだろう。そこまで言って、口を噤んだことでそれを表していた。

「何を言ってるんだ…お前は警察官になって、まだ日も浅いじゃないか…新米警官には、失敗が付き物なんだぞ。これからだって、沢山悩む事あるのだから…ここでめげていたらダメじゃないか…」
「でも、僕が容疑者を逃がしたせいで怖がってたあの人を余計に不安がらせちゃうんだよ…だから、だから…」

顔を上げて私に訴えかけて来るコナンに私は言う。

「心配するな。後は先輩刑事達がやってくれると、目暮警部は言ってたぞ。後は任せて置けばいい。それに、お前はクビを言い渡された訳じゃない…今辞めたら絶対後悔するぞ?」
「だって…僕、男なのにこんなに弱くて、警察官なのに誰も守ってあげられなくて……何も、出来ないから……僕なんて…」

コナンの瞳から流れ出る涙を目に、私はコナンの頭に手を触れ…言い聞かせる様に話した。

「警察官だって、人の子だ。全ての警察官が強い訳では無い。もし全て強かったら、殉職する者なんて居ないだろう?」
「……」

私の話を聞きながら、コナンの涙が頬を伝う。

「もし、辞める事を考えているなら、一人じゃないんだ。哀君と勇嗣の事も考えなきゃな。それに……お前は将来、大物な警察官になると父さんは思うぞ。」
「…有り得ないよ」
「そうか?」

私の言葉を否定しながら、コナンは自分の袖で涙を拭う。ずっと我慢して耐えて来た物が沸き出したかのように、コナンの涙は止まらなかった。
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