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哀とコナンと…

「コナンちゃん……」

母さんは、そうコナンの名前を呼ぶと……コナンをベットに戻した……。

コナンの頭を摩りながら……涙を流し続けるコナンの涙を拭い、声をかけた。

「哀ちゃんに、言ったのね……勇気出して、言えたのね……」
「言わなければ、良かった……」
「どうして?言わなくても、いずればれてたわよ……」
「でも……」
「それにね、哀ちゃん……また来るって言ってたわよ……遊びに来るって……」
「本当に!?」
「ええ…」

母さんの言葉に、少しづつ笑顔になってくコナンを見て……少し、安心した。

「遊ぶ為にも、早く元気にならないとね……」
「うん……」
「まぁ、熱は下がったみたいだから大丈夫そうね……」

そう話す母さんに、コナンの表情にも笑顔が戻って行った。

額に乗せられてるタオルをもう一度冷やすと、再度コナンの額にタオルを乗せた。

そして……その後、父さんと母さんにコナンの事を任された俺は、コナンが眠るその横で……灰原さんが持ってきた絵本を読んでいた……。






翌朝……俺は、未だ眠るコナンの顔を覗きながら、様子を見ていた。

額に載せられたタオルを取り、俺はコナンの額に手を当てる……。

その反動で、コナンの眉がピクリと動き……漸く目を覚ました……。

「コナン、おはよう……大丈夫か?」
「にーちゃん……おはよう……うん、大丈夫!」

そう言って笑うコナンに、俺はコナンの身体を支え身体を起こす……。

「熱も下がってるから、大丈夫だと思うけど……後で病院行って見てもらおう……」
「え~大丈夫だよ!!」
「念の為だから……な!」
「うーん……」

俺は、汗でびっしょりのコナンの身体を拭きながら……そう、話していた。





そして……。

朝ご飯を済ませると、俺はコナンを連れて……灰原さんがいる阿笠邸へ向かった。

博士の家の門まで来ると、俺の手を繋いでいたコナンの小さな手に力が入る……。

きっと、緊張しているんだろう……。

コナンは遂に、座り込んでしまった……。

「どうしたんだよ、コナン……」
「…………」
「大丈夫だって……行くぞ、ほら……」

俺は、ほぼ強引にコナンの手を引き……博士の家のチャイムを押した……。

「おう、新一……ん?コナン君か~よく来たな~……」
「博士……あ、哀…ちゃんは……?」

俺の足に隠れながら、コナンは少し顔を出して……恐る恐る博士に尋ねた。

「ああ、居るぞ……ちょっと、待ってなさい……おーい、哀君!」

博士はコナンに笑って答えると……灰原さんを呼びに向かった。

残された俺とコナンは、二人で顔を見合わせる……顔が強張るコナンに、俺はコナンの頭をぽんと叩くと言った……。

「大丈夫だよ、コナン……きっと、大丈夫……な!」
「うん……」

根拠なんてなかったけど、俺はコナンにそう言って励ました。

「哀君、コナン君が来たぞ……」

奥の方から、灰原さんに伝える博士の声が聞こえて来ると同時に、灰原さんが勢い良く駆け寄って来た。

「コナン君!!もう大丈夫なの?」
「哀ちゃん……」

元気良く駆け寄って来る灰原さんとは逆に、コナンはまだ俺の後ろでもじもじしてた……。

「コナン君!!行こう!私の絵本見せてあげる!」
「…………」

灰原さんのその言葉に、コナンは俺の顔をジロジロ見る……。

「行って来いよ!にーちゃん、ここで待ってるから……」
「うん!!」

俺の言葉に、コナンは元気良く返事をすると……灰原さんに誘導されながら手を繋ぎ、奥の部屋へ走って行った。




二人になった俺と博士は、あの二人を見て安心していた……。

コナンと灰原さん……。

二人は、周りの俺らが何もしなくても自然と打ち解けていたのだろう……。

コナンが勇気を持って告白した産まれた頃の自分の姿…………それを、快く受け入れてくれた灰原さんの間には、とても大きくて……途轍もなく深い友情が生まれていた……。

それは、博士も俺も……勿論父さんも母さんも、二人を見れば一目瞭然だと言う事は、分かっていた。




元気良く走るコナンを見た博士が微笑みながら呟く……。

「風邪が治って……良かったの~……」
「ああ、だけど今回は、風邪なんかより……いろいろ大変だったんだけどな……」

俺は、そう言って……笑って答えると、隣にいた博士も笑っていた……。

「灰原さんがコナンと友達になってくれれば、少しは甘えが抜けるかもしれないけど………」
「何を言っとる…… 大きくなれば自然と無くなる……今は充分に甘えさせてあげたらいいじゃろ…」

博士の言葉に、唖然とする俺は……一瞬微笑み、ポツリと言った……。

「あ、そうだな……」





そしてこの後、コナンは病院に連れて行かれた……。

母さんに手を引かれ、駄々をこねるコナンに……博士が“ハンバーグ作って待ってるから、頑張っておいで……”そう言うと、笑顔になって手を振り返した……。

母さんと一緒に病院に向かうコナンを、家の門まで見送る灰原さんも“待ってるからね~”そうコナンに声を掛けてあげていた事に、コナンも少しだけ不安がなくなったんだろう。

「行って来まーす……」

そう、元気良く博士と灰原さんに向かって大きく手を振っていた。

コナンも、灰原さんと言う友達ができた事で……少しだけ、寂しい気持ちが薄れていくだろうと……俺は、確信していた……。

博士が作ったあのおもちゃもいずれ要らなくなる時が来るだろう……。

その時まで、俺たちが守っておいてやろう……。

そう、心に決めて……病院に行く母さんとコナンの後ろ姿を見送った……。
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