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☆総合短編集☆

太陽の照りつける様な8月という、夏真っ只中の季節の中で、蘭はいつもの様に家事をこなしていた。

クーラーの効いた部屋の中でコナンは漫画本を両手に持ちテーブルに身体を預け、この夏の暑さにばてていた。

午後だというのに、未だに照りつけられる太陽に、蘭は手をかざし眩しそうに目を細める。洗濯物を取り込みながら、外を歩いてる近所の子供達に目を向ける。

お祭り帰りのその子達はヨーヨーを片手にニコニコして両親に挟まれて歩いていた。

「そろそろあの子達も来る頃ね…」

蘭はそう呟くと、布団を畳み終わるとコナンに声を掛ける。

「コナン君、支度しよう!もうすぐ皆来ちゃうから…」
「うん」

コナンは怠そうに振り返ると蘭に返事をする。

「ほらほら、夏バテなんかに負けないで!」

そう言うと蘭は手際よくコナンに浴衣を着せていた。そんな時、元太、歩美、光彦は顔を覗かせた。

「コナンくーん!」
「みんな!いらっしゃい、もうちょっとで終わるから待っててね!」

そう言われて、微笑みながら3人はコナンが着替え終わるのを黙って待っていた。

「はい、出来た!」
「ありがとう!」
「じゃあ、私も着替えてすぐ行くから下で待ってて!」
「うん」

そう言われて返事するコナンに蘭はうちわ5人分を渡すと急いで着替えを始めた。コナンはうちわを受け取ると、三人と共に階段の下へ降りていくと、灰原とその後ろには園子が待っていた。

「遅い!」
「ごめん…」

階段の下で待っていた灰原に文句を言われるコナン。そんな灰原を含めて、5人分預かったうちわを配るコナン。

「蘭ねーちゃんが作ってくれたんだ!お前の分も」
「…」

コナンに手渡され、それを灰原は黙って受け取り、見つめていた。うちわには、蘭の手作りであろう、蘭の文字でカラフルにお祭りのイラストを加え、「少」、「年」、「探」、「偵」、「団」と1枚1枚別々の大きな文字が書かれており、5人合わせて少年探偵団となる様にされていた。

「へー、蘭の手作り!?」
「みたいだよ」

そばに居た園子が感心した様に見る。それぞれ受け取ると嬉しそうにしながら、各々浴衣の紐に刺そうぜという元太の提案に五人とも、背中に指して、蘭を待った。

「お待たせ!…って、あら?」

慌てて駆け寄る蘭の前に背中を見せて待っていた子供達。

"蘭お姉さんありがとう"と、口々にそう言いながら、喜んでいた。

「よかった。みんな浴衣似合ってるわよ」
「お姉さんも素敵だよ」
「お、お綺麗です」
「おお、このねーちゃんよりイケてるぞ!」
「何よ?」

微笑む蘭を他所に、元太の一言で園子は不機嫌になっていたが、蘭に慰められ機嫌を取り戻した園子を先頭に花火会場へ向かった。

花火会場に向かっている途中、華やかな飾りと共に、数々の屋台が元太達の目を輝かせていた。

「焼き鳥に、イカ焼きに、わたあめ…美味そうだなあ~」
「いっぱいありますね~」
「ねえねえ、ちょっと寄っていかない?」
「そうねえ…」

蘭は腕時計に目をやり考え混むと"少しなら"と、承諾し、はぐれないようにみんなで同じ所へ回ることにした。

「俺焼きそば5個と…」
「アンタって本当に食い意地張ってるわね~1個にしなさい!」
「僕イカ焼き」
「歩美、落書きせんべいがいい!」
「じゃあ、じゃんけんして勝った人から順に回りましょう!」

蘭の提案に3人ともじゃんけんをするがあいこの連続でなかなか勝負がつかない。"うーん"と困ってる蘭達を他所に、灰原はある屋台を眺めていた。

「どうした?灰原!」
「あれ…」

そう言われてコナンは灰原の指した方に目をやる。

「ああ、型抜きか?」
「じゃんけんで勝負がつかないならあれで勝負しましょ!」
「いや、あれ子供には難しいぞ?」
「子供にはってあんたも子供じゃない!」

灰原と話をしていると、話を聞いていた園子が横を割って入り何を言ってるのかと突っ込んできた事にコナンは焦り苦笑いを返していた。

「いいんじゃない!?やる?みんなで…」
「でも、蘭ねーちゃん…あれ難しいよ?成功しない人もいるって聞くし…」
「成功しなくても、誰が1番出来たかで決めればいいじゃない!ね?」

半ば強引に蘭に連れられ、型抜きの屋台まで連れられた子供達達と園子。私も?と園子は嫌そうにしていたが、蘭はお金を払って人数分の型抜きを屋台の人に貰っていた。

「あ…」

型抜きを始めるも、次々と失敗した声が飛び交う。

「あ…割れた……おい、これ無理なんじゃ…」

そう言って、灰原に話かけるコナンは灰原の手元を見ると目を丸くする。

「お前、上手いな…」
「好きなの、こういうネチネチしたもの…」
「え…お前な!」

やはりこういった物は、子供達には無謀で成功したのは灰原だけだった。コナンにどう?と見せかけんばかりのすまし顔にコナンは不満そうにしていた。

その後、屋台のおじさんから賞金を貰い灰原が行きたいというヨーヨーのお店へと決まった。

「なんだよー、食いもんじゃないのかよ~」
「文句言うなら型抜き成功してから言いなさい!」

灰原にそう言われ、元太は何も言い返せなかった。

「あ…切れちゃった」
「俺も」
「僕もです…」
「あ…残念…私も切れたわ」

水に濡れたら切れてしまう白い紐で釣ろうとするも、みんな紐が切れ落胆していた。そんな子供達や灰原の後ろからコナンは意気揚々とやって来て、貸してみろと自信満々にヨーヨーの前に座る。

「この紐は水に濡れたら切れちゃうんだ…だから、こうやって」

コナンは子供達にうんちくを述べながら手際よく1発でヨーヨーを取った。

「コナン君、すごーい!」
「な?ほら、出来たじゃねーか!」

自信満々にいうコナンにムッとして灰原はおめん屋の前にスタスタ歩いて行ってしまう。

「おい、灰原…やるよ」
「別にいい!」
「うわっ…」

背を向けていた灰原に、コナンはヨーヨーを突き出すが、振り返った灰原にコナンは驚いた。コナンからヨーヨーを受け取ると、型抜き代で買ったお面をコナンの顔に突っ伏す灰原。

よく見るとそのお面は"忍たま乱太郎"の"乱太郎"だった。灰原になんでこんなお面にしたのか?と問いただすと、貴方に似てると思ったからと返って来て、どこがだよと突っ込む間に灰原は歩美と肩を並べてスタスタ先に進んでいた。

その途中で蘭や園子は子供達に食べたいものを聞きながら皆で手分けして持ち、花火会場へ目指した。

「やっと着きましたね~」
「さあ、みんなシート引くの手伝って!」
「「はーい」」

準備が終わる頃には日が沈み、屋台で買った物を食べながら花火が始まるまで待っていた。周りの声も騒がしくなり、家族連れで辺りは握わり始めた。

「本当は鰻も食いたかったけどなー」
「元太くーん、鰻は売ってないですよ~」

元太の一言に笑いが溢れながら、蘭は空を見上げた。

「こんな風にして花火見るなんて久しぶり」
「いつもは会場でみたりしないもんね~」
「そうそう、音が鳴ってから花火だって気づいて見に行ったり…」
「この間なんかよ~小林先生遅刻するから始まっちゃうしよ~」
「でも、あの事件があったから白鳥警部といい感じになったよね!」

それぞれが花火の思い出に浸る中、最初の1発の花火がぴゅ~と共にゆっくり打ち上がった。

"ドォン"

「始まった~」

歩美の嬉しそうな声を合図に皆で空を見上げる。空には綺麗な花火が次々と打ち上がる。空に描かれた絵日記のように、その日の蘭や園子、少年探偵団達の上で打ち上がった花火が空に描かれていた。

「また来年も来ようね!」

その約束に複雑な思いで聞くコナンと灰原を他所に、皆で勝手に約束していた。

ビニールシートの上で足を伸ばし花火を見る一同の側で、先程取ったり買ったりしたヨーヨーとお面が佇んでいた。

"来年の今頃は元の高校生の身体に戻っているのかな?"と不安な想いを胸に込めるコナンを遮るかのように元太の声で我に返った。

「かいーよ、足の裏蚊に刺されたみたいだぜ」
「不運ね…」
「なんとかしてくれよ」
「これ塗って後は我慢してて」

時には騒がしくもあり、面倒を起こされる子供達を見てコナンは今のこの現状を大切に過ごしている。こうしてる瞬間も、捨てがたい大切な日々だと…打ち終わる花火とは違い、この関係だけは小学生でいる間は終わらないだろうと思っていた。

そんな事を思っているコナンの側でコナンに貰ったヨーヨーを片手に灰原は微笑みながらそれを見つめている。

「私の運命はどうなるのかしら?」

空高く打ち上がる花火がヨーヨーに反射して照らされる。それに気づいて灰原は再度空に上がる花火を見て、にっこり微笑むと胸を撫で下ろすと一言言った。

「大丈夫…私はここにいるもの」
「しけたツラしてんじゃねーよ」

1人で考え事していた灰原の隣に座るコナンは先程のお面を手に取る。

「お前が選んだにしちゃいいんじゃねーか?」

コナンはそう言うとお面を頭に付ける。

「バカ」

その後は、花火が打ち終わるまで黙ってずっと見ていた。この花火をずっと見ていたいと想いながら……。



2019/08/05(月) 蘭ran,
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