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新一とコナン⑤

「ああ、そっか分かった。こっちの事は心配しなくて大丈夫だぜ、コナンにも言っておくよ。じゃあ、気をつけてな…」

そう言って、俺は母さんからの電話を終えると受話器を置いた。すると、傍で電話する俺に不安な表情を向けながら見つめてくるコナンに俺は言った。

「父さんと母さんな、台風の影響で帰って来れないみたいなんだ…だから、もうしばらく留守番してような?」
「えー」
「仕方ないだろ?飛行機飛ばねーんだから…」

そう宥(なだ)める俺にコナンは観念した様に静かに頷いた。

「兄ちゃんいるんだから、寂しくないだろ?」
「分かったよ…」
「じゃあ、飯にしようぜ…」
「うん」

それから俺は二人きりの昼食をしながら外の台風の様子を気になっていた。

「兄ちゃん…外凄いね…」
「ああ……まあ、家の中にいれば大丈夫さ!心配ないよ」
「うん」

そう言って、コナンは時より外の様子を気になっているみたいだった。窓を叩きつける音に時々ピクンと身体を反応させるコナンに少し心配になる。

ご飯を食べ終わったコナンは窓際まで行き、カーテンを明けて外の様子を見ていた。俺はそんなコナンに近寄り、強引に窓から引き離した。

「危ねーから、こっち来い」
「でも兄ちゃん、外凄いよ!川みたいになってる」
「明日まで大荒れみたいだから、外出ちゃダメだぞ?」
「博士んちまでなら行ってもいい?」
「ダメだよ、台風去ったら連れてくよ」
「それっていつ?」
「兄ちゃんにも分からねーよ」

好奇心が有り余ってるコナンに、ヒヤヒヤさせられる俺は、今日はいつも以上にコナンから目を離したらいけないと誓った。

「絶対外出ちゃダメだからな?いいか?絶対出るなよ?お前…ちっちゃいんだから」

そういう俺の言葉に大人しく頷いていたコナンだったが、途中ムッとして言い返してきた。

「ちっちゃくないもん」
「分かった分かった…とにかく、今日は大人しく家で兄ちゃんと過ごしてような?」
「うん」

そう言って、コナンが納得したのを安心して昼の片付けをし終わりトイレを済ませ出てくると、コナンが玄関のドアを少し開けて外を覗いてる様子に驚くと、慌てて止めた。

「コナン!ダメって言っただろ?なんで分かんねーんだよ」
「ちょっとだけ」
「だめ」
「博士んち行くだけだから」
「だーめ」
「灰原に用があって…」
「ダメって言ったらダメなんだよ、台風って言うのは怖いんだ…外に出て、巻き込まれたらどうするんだよ…」

コナンが俺の隙をついて外に出そうになったらまずいと思い、俺は再度言い聞かせる様に真剣な顔でコナンに諭すように言っていた。

両親も帰って来れない、外は台風で出れない今…コナンは遊びたくても遊べないでつまらなそうにしている。そんな時、外の川のように流れる濁流を見て好奇心が湧いたのだろう。

俺は、そんなコナンを止めるのは大変になっていた。

その後もずっと同じ部屋で過ごしていたのだが、そっと部屋を出ようとするコナンにその度に"どこ行くんだ?"と声をかけながら、警戒しながらついて行った。

俺がトイレに行ってる間、玄関の扉に手をかけるコナンに呼びかけ、少し鬼ごっこの様になっていた。

何度言っても外に出たがるコナンにテレビのニュースを付けて危険な事説明してやったんだが、濁流で遊んでる人の姿が少し映ったところで"楽しそう"と言い放ち、逆効果だった。

「まったく…」

俺は方を落とし、どうしたものかとやきもきしていると1本の電話が鳴った。

「もしもし?」

そう受話器を取ると、驚く事に隣の家の灰原さんからだった。

「おい、コナン…灰原さんからだぞ」
「え!?灰原~?」

少し嬉しそうに電話を代わったのも束の間。だんだんと声のトーンが下がり、電話を切って俺の方にとぼとぼと戻ってきた。

「なんだ?灰原さん、何だって?」
「興味本位で外に出たら許さないからって言われた…台風の中外出て死んでも知らないからって……僕まだ何もやってないのに怒られた…」

そんな風にしょんぼりしながら立ち尽くすコナンをリビングのソファーに誘導し、テレビを見せながらココアを作ってやると"ありがとう"といい大人しく飲んでいた。

「台風が去ったら出かけようか、コナン…」
「うん」

そう声をかけながら、灰原さんの偉大さを痛感した。俺がいくら言っても聞かなかったのに、すんなり言うこと聞きやがって…そう不満な気持ちを抱きながら、大人しくなったコナンの頭をそっと撫でた。

(とりあえず、外を出るのを諦めてくれてよかったぜ)

俺は安堵しながら暖かいココアを両手で支えて飲みながら、テレビを見ているコナンを見て胸を撫で下ろしていた。

数日して、台風も収まり…やっと帰ってこれた父さんと母さんにその事を話すとびっくりされたが、灰原が電話してくれた事を感謝していた。




俺だって一生懸命止めていたんだけどな…。そんな事を思いながら、"まあ、よかったかな"そんな事を思いながら、すっかり晴れた青空の下をコナンと二人、手を繋いで出掛けて行った。
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