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哀とコナンと…

そして、その夜……。

病院から帰ってきて、コナンに薬を飲ませて寝かせていると、玄関のチャイムが鳴った……。

玄関まで顔をだす俺に、その人物は何かを決めかねた様子で俺の方を見て言った……。

「コナン君、いますか??話したい事があるの……」
「え?ああ、でも……さっき、薬飲んで寝ちまったんだ……」
「え?あ………そう……」

チャイムを鳴らした灰原さんは、きっと何かをコナンに伝えに来たんだろう……。

そう思って、起きるか分からないけど、コナンが寝てる部屋に連れて行った。

「コナン、コナン!!」
「ん~~」

案の定、コナンは薬の力もあって中々起きてはくれなかった……。

「コナン!おい……」
「ん~眠いよ、兄ちゃん……」
「灰原さん、来てるんだけど……起きれるか!?」

俺のその言葉に、ピクリと眉が動く……。

やっと、目を開けるコナンに灰原さんは顔を覗かせた。

「コナン君……私、話があってきたんだけど……寝てたのに、ごめんね!また来るね……」

コナンは身体をやっと起こしながら、背を向けた灰原さんを呼び止めた。

「あ、哀ちゃん……待って!!」
「コナン、大丈夫か?」
「うん!」

コナンは眠たそうに目を擦り、起き上がって灰原さんを呼び止めた。

二人が見つめ合う視線を見ながら、俺はコナンに声を掛けた。

「じゃあ、兄ちゃんあっち行ってるからな……」
「え?うん……」

俺は、そう言って二人から背を向けて部屋を出た…。








新一が部屋を出た後……コナンは哀をベットの方へ誘導して……二人で並んで壁に背中を付けて、話し始めた…。

「コナン君、この間の話……話してくれてありがとう……私、本当は…写真見て、びっくりした……でも、でもねっ!!私はその時、コナン君の友達になりたいって思ったの……ちゃんと、話してくれたから……」
「…………」
「だから、だからねっ!私も……話に来たの……お父さんとお母さん、お姉ちゃんの事……」
「この間、言ってた事?その……死んじゃったって……!?」
「うん……コナン君、あのね……死ぬって言うのはね……」

哀は…そこまで言うと、自分の顔を覆うと……涙を流した…。

だけど、小さな哀には……説明する事なんて、できる筈もなく…ただ、悲しくて悲しくて…そんな気持ちをどう話せばいいのか、どう言えばコナンに伝わるのか…まだ、分からなかった。

「コナン君は……居なくならないよね!?私の側から居なくなったりしないよね……!?居なくならないで!!お願い……」
「哀ちゃん……」
「死ぬってね、大切な誰かが……居なくなっちゃうことだって……言ってたの……居なくなったら、もう会えないって……だから、コナン君……お願い……」

涙ながらに訴える哀を見つめながら、コナンは哀の手を握って言った。

「居なくならないよ……哀ちゃんの側から、僕は居なくなったりしないよ!!絶対に!!」
「コナン君……」
「約束……」

そう言って、コナンは哀の顔の前に小指を差し出した。

「指切り………約束だから!」
「……うん!!」

そうして、二人は小指を絡ませて約束した……。二人共、お互いの側から離れないように…。




その後、コナンはベッドに戻った………哀はそんなコナンに、布団をゆっくり掛けた………。

「哀ちゃん……また、遊ぼう!元気になったら、遊びに行くから……」
「うん!待ってる!!だから、コナン君も頑張って!元気になってね!」
「うん!!」

そして、新一が様子を見に戻ってきた時……、哀は帰ろうとドアを開けた……。

「灰原さん……」
「もう、いいのか!?」
「はい……また、来ます…」

心配する新一の横で、哀は新一に笑顔を向けた……。

そんな新一も、哀に笑顔を返しながら見送った……。

新一がコナンの部屋に戻ると、コナンは哀が出て行ったドアを見つめていた。









「コナン、大丈夫か!?」
「兄ちゃん…」

俺はコナンの元へ歩み寄り、コナンの頭に手を置いた。

「哀ちゃんの家族、死んじゃったんだって……」
「あ、ああ…聞いたのか…」
「死ぬって、居なくなることだって……とても、寂しいんだって…」
「コナン?」

コナンは、俺の顔をじっと見つめ…悲しそうな顔をさせながら、俺に尋ねた。

「兄ちゃんは……僕が居なくなったら寂しい!?」

自分から聞いたのは、コナンだったけど……その質問にコナン自身、俺の口から帰ってくる言葉が怖かったんだろうと思う。

「コナン…寂しいのは当たり前だろう!何言ってるんだよ!!」

俺のその言葉に、コナンは頬を赤らめて……安心するかの様に呟いた。

「よかった……じゃ、僕居なくならない!!」
「ああ、コナンがいなくなったら、寂しがる人沢山いるんだから、居なくなっちゃダメだぞ!」
「うん!」

そのあと、コナンはスヤスヤ眠っていった。

灰原さんに聞いた事のあらましを、コナンの口から少し聞いた俺は、灰原さんの事を思い……自分の事の様に、寂しい気持ちを宿したのは間違いなかった。




翌朝、すっかり元気になったコナンを連れて……俺は阿笠邸に向かった。

「おはよう、博士……灰原さん、いるか?」
「ああ、おるよ……」

俺の質問にそう答えて、振り向くとそこに灰原さんが立っていた。

「コナン君!!」
「哀ちゃん!!」

二人は、顔を合わせると同時にお互いの名前を呼んだ。

灰原さんは、コナンの元へ駆け寄ると……コナンの手をギュッと握って聞いた。

「もう、治ったの!?」
「うん、もう大丈夫だょ!」

コナンのその言葉に笑顔になったは灰原さんは、コナンの手を引っ張った。

「行こう!あっちに行って遊ぼう!!」
「うん!」

灰原さんに誘われて、コナンは履いていた靴を乱暴に脱ぎ捨てると……灰原さんに手を繋がれて二人で駆けて行った。

「おい、コナン!靴ぐらい揃えろよ!」

俺は、呆れながらコナンの靴を揃えると…博士が、クスリと笑って言った。

「コナン君が居て安心したわい……」
「え?」
「あの子の家族が全員亡くなって……わしが引き取ったが……何日か前は、あんな笑顔をみせてくれんかったんじゃ…女の子は、難しいからの~」

博士は、そう語りながら……もう、既に姿が見えなくなった二人が駆けて行った方へ視線を向ける。

「コナン君のお陰じゃな……」
「博士、俺こそ……コナンが元気になったのは、灰原さんのお陰でもあるよ!灰原さんに、後で礼言っておいてくれよ……」

俺がそう言うと、博士はにっこり笑って笑顔を向けた。
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