新一とコナン③
「哀君にも姉妹(きょうだい)がおればのぉー……」
日曜日の昼下がり……昼食を済ませた後、博士は私にコーヒーカップを差し出しながら、ポツリとそんな事を言い出した……。
「何!?」
「いや~近頃哀君の様子がおかしいし……何か悩み事があるんじゃったら、相談に乗ってもらえると思ってのぉ……」
物思いに、そんな事を言い出す博士に少しムッと来てコーヒーカップをコトンと置きながら言い返した……。
「仕方ないじゃない……お姉ちゃん死んじゃって、私に姉妹(きょうだい)がいなくなっちゃったんだから!!今更そんな事言わないでよ!!」
「哀君…………」
そんな私の態度に驚きを隠せない博士は、焦った様に宥(なだ)め始めた。
「あ、哀君……わしはそんな事言っとるんじゃなくて……哀君に姉妹(きょうだい)がおれば、少しは……」
「だったら、お姉ちゃんを連れて来てよ!!私のたった一人のお姉ちゃんを……返してよっ!!!」
私は、博士に向かって言い放つと……阿笠邸から飛び出していた……。
博士を責めたって、どうにもならない事分かってる……分かってるハズなのに、私の悲しみは依然と消え失せる事は出来てない……。
「兄ちゃん、早く~~」
「待てよ、コナン!!」
阿笠邸から出る私は……その時、丁度出て来た工藤君とお兄さんを見つめる……。
私だって、お姉ちゃんが生きてさえいてくれれば……あんな風に、仲良く出かけたり出来たのに……。
手を繋いで、お姉ちゃんの顔を下から覗き込んで……沢山、色んな話をする事出来たのに……私だって……私だって………………。
工藤君の明るい笑い声を聞くと、無性に腹立たしくなる……そして、嫉妬深くなる…………お姉ちゃんが……お姉ちゃんが欲しい…………。
私の中に芽生える感情は、誰にも止める事なんて出来ない……。
工藤君の兄弟を見ると余計に…………。
隣に住んでるんだもん……否が応でも目に入ってしまう……。
そんな思いを胸に抱え、ぼんやり立っていると……私に気付いた工藤君が、お兄さんと少し言葉を交わした後、こちらに向かって掛けて来た……。
「灰原!!今からアイス食べに行くんだ!!お前も一緒に行こーぜ!!」
「いいわよ、別に……」
「兄ちゃんが買ってくれるから大丈夫だって!!ほら、早く!!」
工藤君は、目を輝かせながら言うと……私の手を引っ張りお兄さんの元へ走り出した。
「ちょ、ちょっと~」
「兄ちゃん!!灰原も一緒にアイス食いたいって!!」
「ちょっと、誰もそんな事言ってないでしょ!?私帰る!!」
勝手な事を言う工藤君に腹を立て、私は帰ろうと背を向けた。
「あっ、灰原さん!!ちょっと待って……良かったら、一緒に行ってくれないか!?コナンが灰原さんと行きたいらしいんだ……」
「兄ちゃん!!僕、そんな事……」
「いいから、いいから……ほら行くぞ、二人とも……」
工藤君はお兄さんに背中を押されながら、笑顔で従っていたけど……私は行きたくもないアイスのあるショッピングセンターに食べに行く羽目になってしまった……。
「はぁ~~」