「お邪魔しまーす…」

博士の家の玄関を開けると、コナンの乱雑に脱いだと思われる靴を目にした…。

そんなに慌てて走って来なくても良いのにと、俺はその靴を見て思いながら、リビングへ向かった…。

「あっ、兄ちゃん！！」
「おお、新一…すぐ出来るから、そこへ座っておれ…」
「博士……悪いな…」
「良いんじゃよ…気にする仲じゃないじゃろ？…」

そう言われ…コナンの隣に座る……。

「まーったく、お兄さんにも呆れるわ…料理ロクに出来ないくせに、無理して作ろうとしなくて良いのよ…」
「無理じゃないさ…俺だって作れるぜ？」

博士の横で皿におかずを盛りながら言う灰原さんに、俺は訂正するが…灰原さんは俺を睨むとまた言い返して来た…。

「そうかしら？だったら何で工藤君…ここに逃げて来たのかしらね？」
「それは…コナン、心配するなって言ったろ？」

灰原さんに返す言葉が見つからなくなった俺は、コナンに逃げた事に対して注意をするが…コナンも不安な表情で言い返して来た。

「だって～危なかったもん！！」
「ほれほれ、もういいじゃろ！出来たぞ…」

博士と灰原さんが運んで来てくれた食事を目の前にすると、コナンが安心した様に笑顔で食べ始めた…。

「美味し～」
「良かったわね…殺されなくて…」
「何だよ、それ…」

相変わらず、灰原さんの毒の付いた発言を言い返しては返されで、結局俺は惨敗してしまった…。

「まぁ、こう言う事もまたあるかもしれないし…少しは料理勉強しておくのね…」
「そうじゃぞ、新一…有希子さんが帰って来たら、料理教えてもらわんとな…」
「わってるよ…たく……」

灰原さんだけではなく、博士にも注意され……俺は今回のこの騒動で肩をガクンと落としていた…。


夕食も食べ終わり…俺は博士の手伝いで食器を片付けながらコナンに声をかけた…。

「コナン！！そろそろ帰るぞ！」
「もうちょっと！！」

灰原さんとゲームに夢中になっていたコナンは、俺が声をかけても画面に目を向けたままで返事をしていた。

「あんまりゲームやりすぎると目、悪くなるぞ！！」
「ならないもん！！」

そんなやり取りを見兼ねた博士が、俺の肩を叩いて言った…。

「まあまあ、新一…もう少しやらせてやったらどうじゃ…新一もゆっくり寛(くつろ)いで…」
「ああ…でも、明日も学校だしな…」
「隣なんじゃから、いつでも帰れるじゃろ？？」

そう博士に言われ、もう少しゆっくりして行く事にした…。

差し出されたコーヒーを飲みながら、俺はコナンと灰原さんの様子をしばらく見つめていた…。

「あっという間に大きくなったのぉ…産まれた時はあんなに小さかったのにな～…」
「ああ…まあ、今でもちっせえけどな…」

俺の言葉に博士が笑う…コナンを見て…俺も微笑む…コナンが産まれた時…俺はまだ小学生だった…。

勿論、その時は弟ができたなんて実感なんてなかった…でも、今はコナンとの生活が当たり前で…危ない事をしない様に目が離せない状況にいる…。

兄弟と言うよりも、親子の様な感覚になっているのかと、時々…疑う時もあるくらいに…。



家に戻って、台所の状況を見たコナンが俺に一言、言った…。

「博士の家に行って良かったね…兄ちゃん！！」
「ああ…そうだな………」

台所の残骸を見て、俺も素直にその状況を認めた…。