新一とコナン①
"コンコン"
コナンの部屋の扉を叩いて部屋を開けると…母さんの看病をしている後ろから蘭がコナンの顔を覗き込んでいた…。
「蘭…悪いな…」
「大丈夫よ…」
俺が声をかけると、蘭の瞳はコナンから目線をずらして俺へ向けられた…。
「もう、大丈夫そうね…今朝、具合悪そうだったから…休ませれば良かったわね…」
母さんはコナンの額に冷えたタオルを乗せながら今朝の事を思い浮かべながら悔やんでいた…。
「ああ…でもコナンもきっと分かってるだろうし…熱が下がれば心配ないさ…」
「そうね…」
コナンの思いを母さんに言えない俺は、そう言うだけで精一杯だったが、母さんはそんな俺の言葉に笑顔を向けた。
「じゃあ、後は二人に任せて大丈夫ね…夕飯の支度して来るわ、蘭ちゃんも食べて行って…」
「あっ、でも…」
「遠慮しなくていいのよ…コナンちゃんを診てくれたお礼よ…」
そう言うと母さんは、蘭にウインクを見せて…そそくさと部屋を出て行った…。
残された俺たちはコナンの側に近寄って、暫くの間小さく寝息を立てながら寝ているコナンを見つめていた…。
俺はコナンの額に手を当てながら…蘭にさっき父さんが言った事を話し始めた…。
「さっき…父さんに言われたよ…コナンの一人部屋…まだ早かったかもって…」
「えっ?新一のお父さんに??」
俺はコナンの額から手を離して…ベッドに背をもたれかかせながら足を組ませて再び口を開いた…。
「コナンがさ、一人部屋が欲しいって言った時…父さんも母さんも俺も…すんなり許したんだよ…誰も反対なんてしなかった…今思えば、甘かったかもしれないな…」
「そうね…」
俺の話を聞いていた蘭が…納得したのように呟いた…。
「特に、新一がね…」
「えっ??俺??」
蘭の言葉で驚いた俺に…蘭は微笑みながら言って来た…。
「だって~コナン君、いつも新一と喧嘩ばかりしてるけど、こうやって困った時にはいつだって…"お兄ちゃん"なのよ…その度に新一…コナン君の為に色々してあげてるじゃない…それに今日も頼られたんでしょ?」
「えっ?何で…」
俺の思いを見透かしたかのように話す蘭の微笑みに一瞬驚かされる…。
「分かるわよ…コナン君の顔見れば…」
「コナンの?」
そう言われ、蘭と一緒に再びコナンの顔を覗いた…。
「保健室で寝ていた時とは、違うもの…安心して寝てるじゃない…」
「そうか?」
そんな話をしていると…ドアが開いた…。
「どう?具合…」
「ああ、だいぶ良くなったよ…」
部屋に入って来た母さんが、ベッドに近寄ってコナンの顔を覗きこんで微笑んだ…。
「じゃあ、二人ともリビング来て…そろそろご飯できるから…」
そう言う母さんに連れられて…コナンを一人残して俺達は静かに部屋を後にした…。