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☆四周年小説꙳★*゚本当に戻るべき選択☆

喫茶店を駆けでると、新一と灰原はいつも遊んでいた公園に足を向けていた。到着すると、やっぱり三人がいつもの様にそこにいた。

違うのはコナンと灰原が居ないこと。そして、いつもと違う明るさはなく、三人とも肩を落とし…暗い影を落として、ただその思い出の公園に集まっているだけだった。

「灰原さん!」
「哀ちゃん!」
「久しぶりですね、灰原さんが来るなんて…」
「ええ。」

灰原の様子を感じて、光彦が続ける。

「やっぱり、灰原さんも居なくなっちゃうんですか?」
「え?」
「いえ、何となくそんな感じがして…」
「だってよ、コナンが居なくなってから…お前まで公園に来なくなっちまったからさ…一人で先に帰っちまうしさ…」

三人とも同じ気持ちでいた。一人欠けただけで…こんなに寂しい気持ちになるなんて…誰一人、思っても居なかった。




哀の背後から新一がゆっくり歩み寄ると、三人によっ!っと軽く手を掲げると、三人は"こんにちは"と軽く会釈をする。

新一は、三人に目線を合わせる様にしゃがみこんで話し掛けた。

「お前らに話があって来たんだ…」
「何ですか?」

新一の登場に、三人は顔を合わせると不思議な顔をしていた。

「江戸川コナンの事なんだけどさ…」
「コナン君、今どこに居るか知ってるんですか?」
「コナン君、急に引越しちゃったの。どこに居るか分からないの。お兄さん、コナン君どこにいるか知ってるの?」
「なあ、兄ちゃん!コナンに合わせてくれよ!」

コナンと言う名前を口にした途端、三人から訴えかけるように懇願され、新一は一度出そうとした言葉を言い淀んでしまった。

「急に引越しちまってよ…」
「最後くらい、さよなら言いたかったのに…」
「突然だったから、僕達…」
「俺だ…」

新一の言葉に三人は同時に顔を上げる。

「江戸川コナンは、俺なんだ。」
「え!?」

三人に近寄りながら灰原も助言する様に近寄る。

「あなた達、この間の大事件知ってるわよね?」
「はい。テレビで見ました。」
「その事件、私も江戸川君も…関わっていたのよ」
「「え!?」」

三人はその言葉を聞いて、灰原と新一を交互に見る。そして、灰原と新一の想像を超える様な説明は、三人の耳に信じられない現実として届けられた。

「信じられないかもしれないが、これが現実なんだ。お前らには、やっぱり伝えてやらなきゃいけないと思ってな、ごめんな…急に居なくなっちまって、でも…この街で元気にやってるから、心配すんな!」

そう言って笑顔を向ける新一に、三人はコナンの顔が被り目を丸くしていた。

「コナン…くん?私達、すごく心配したんだから!酷いよ、突然いなくなるなんて!」
「歩美ちゃん…コナン君も事情あったんですから…」

光彦に諭されながら、歩美は俯いていた顔を上げコナンに言った。

「でも…コナン君がちゃんと言ってくれてよかった。コナン君の事、忘れないから!」

涙ながらに言う歩美の言葉に、哀しげな表情が宿っていた…。同じ街に住んでいても…同級生じゃなくなったことで、歩美の中でも江戸川コナンにお別れを告げていたのかも知れない…。

それは、光彦や元太も同じ事が言えていた。

「コナン!今までありがとな!俺達、お前に助けられてばかりだったけどさ、楽しかったぜ!」
「僕もです!少しの間でしたけど…コナン君と友達になって、色んな事件に遭遇して沢山の事学びました!ありがとうございます」

三人の言葉に、新一も江戸川コナンとしての別れを告げるかの様に言う。

「お前らも、ありがとな…お前らが居てくれたお陰で助かった事もあったんだぜ!同級生じゃ無くなっちまったけど…この街で住んでるんだ。いつでも会えるさ…でも、江戸川コナンとしては今日でお別れだ。」

新一がそう言うと、三人はゆっくり頷いていた。

話がひと段落したのを見て、傍で見ていた灰原が笑みを浮かべながら近寄る。

「もしかして、灰原さん…灰原さんも居なくなっちゃうって事なんですか?」
「……そうね。」
「えええ!」
「灰原もでっかくなっちまうのかよ!」
「元に戻るだけよ、彼と一緒よ!あなた達だって、すぐ大きくなるわよ、早く追いついてきなさい。それに、きっと…事件現場で会うわよ」

灰原の言葉に新一も口を開いた。

「そうだな、お前ら少年探偵団なんだから…きっとこれからも、事件現場に遭遇するだろうな…でも、あんまり危ない事すんじゃねーぞ?お前ら子供なんだから。」
「コナン君に言われたくありませんよ」
「ほんとほんと!」
「お前が一番危なっかしかったもんな!」
「危ない事に一番最初に首突っ込んでたのコナン君じゃないですか!」
「そ、そうか?」
「そうそう」

自覚のなかった子供の姿の自分と接してきた三人の言葉が、新一の行動を自覚させられていた。こいつらと出会えた事、新一自身もよかったと思えた事でもあった。

姿は変わって再開した五人の笑顔が、よく遊んでいた公園の中に広がっていた。昨日の事のように…サッカーや野球で遊んでいた光景が脳裏に浮かび消えていく。




それでも、思い出だけは消えずに五人の心の中に残り続ける事はこの笑顔だけが知っていた。近くて遠くなってしまった友達。

だけど、きっと…事件現場で出くわすのは目に見えていた。

「じゃあな」

というさよならの言葉に、三人の"バイバイ"と言う言葉がさよならじゃない事を表していた。


そして、数日後…小学校の教室で、灰原が転校した事を聞かされたが、三人は事前に聞いていた為さほど驚く事はなかった。

(哀ちゃん……バイバイ。)

歩美は心の中でそっと別れを告げた。
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