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第一章:このままの身体では……

退院し、休みが開け…俺は体力を戻して学校に行けるようになった。

灰原が迎えに来てくれ、一緒に行く事になった。元太達は途中で合流するらしい。

「いってきまーす」
「気をつけるのよ!薬持った?」
「うん、大丈夫!」

そう返事をして、下で待ってる灰原の元へ駆け寄る。しばらく灰原と肩を並べて通学路を歩いていく。

「ありがとな、迎えに来てくれて…」
「よかったじゃない?とりあえずは」
「まあな、マジ焦ったぜ…全然熱下がらないし」

その言葉に灰原は反応し、俺の顔をチラッと見る。

「ん?」
「その事なんだけど…」

灰原はそう言うと、静かに話し出した。

「あなたの手術に使った薬…昨日もう一度調べてみたの。強力な強い薬だって言うのは言ったと思うんだけど……」
「ああ…」
「抗ヒスタミン薬というのも配合されていたのよ、つまり子供にはあまり飲ませては行けない薬で凄い眠気が襲うから勧められないもの。ま、手術が成功したのはそれが入っていたからなんだけど…ただ、退院して時々倒れるのはその処方された薬にそれが入っているから。先生から、大きくなればだんだん良くなるとか言われてるんでしょ?」
「ああ」
「薬が増えてるのもその薬をカバーする為に処方されてるのかもしれないわね。すなわち……」

淡々と語る灰原は言葉を区切ると俺の方へ視線を向け言い放った。

「貴方の身体は、元の身体に戻らない限り…続くかもしれないわね……今のような状況が…」
「……」
「倒れない様に薬を処方されていると思うけど、でも…早くしないと元の身体に戻れないかもしれない」

俺は言葉を失った。今はひたすら体力を戻す事ばかりに焦ってそこまで気が回らなかったのかもしれない。元の身体に戻れないという衝撃な言葉が俺の希望を奪っているのを感じた。

「でも大丈夫。薬の改良はしておいてあげるから……これは、仮説なんだから諦めちゃだめよ!」
「ああ……それなら、1番手っ取り早いのは奴らの組織に忍び込んで完全な解熱剤を手に入れるしか」
「そうだけど…焦っちゃだめよ!あなたはまだ体力を完全に戻した訳じゃないんだから!」
「分かってるよ」

灰原に釘をさされ俺は考え込む。もしこのままずっと体力が戻れなかったとしたら、解熱剤も試すことが出来ないんじゃないか。例え試したとしても、死ぬ覚悟も居るだろうなと。今は、ちょっとの風邪で寝込んでしまう俺の体力で…解熱剤を試した事でどこまで身体が持つのだろうか。俺は、灰原の横で早く体力を戻そうと、焦りばかり感じていた。

「無理したら、もっと体力戻す事に長引くかもしれないんだから…焦ったら、許さないからね!それに、風邪になったらすぐ病院行く事。もしかしたら、今回風邪引いたことでちょっと薬増えるかもしれないし」
「また、強い薬になるかもしれないのか…」
「あのね!」
「大丈夫だって!」

灰原が何か言おうとしていたみたいだけど、俺はそれを聞かず遮った。手術して、悪いところは取り除き回復に向かってる俺の体がなかなか良くならないことには不信感があり、再発したのではないかと思っていたけど、灰原の説明を聞き俺は納得した。何故体力が戻らないんだろう?って、ずっと心の中で納得行かない思いが宿っていたんだが、子供の身体じゃあんな大きな病気をした俺の身体を完全に元に戻すのは無理だって事なんだ。

それでも、少しづつ良くなってるという先生の言葉に俺は信じようとしていた。

本当は死んでるはずの俺の身体を治してくれた先生だから……。

それに、生きていれば何とかなるんだ。諦めちゃダメなんだ、横で心配してる灰原の言葉に元の身体に戻れる希望が少しでもあるなら今はそれを信じようと誓った。

「おーい!コナン!灰原~」
「コナンくーん!灰原さーん!」
「おっはよー」

俺が決意したその時、あいつらが大きな声で声を掛けてきた。

俺がちょっとでも体調崩せばあいつらは凄く心配してくる。そんなヤツらに今は元気な姿を見せられるなら、元気よく手を振るのが1番なんだ……。

「「おはよう」」

俺と灰原はそんな3人にいつもの様に挨拶を返し、みんな揃って登校した。
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