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✩.*˚警察官は苦悩の連続✩.*˚


次の日俺は、昨日バタバタしてちゃんと見てやる事が出来なかったコナンの様子を覗きにきた。

「父さん!コナンは?」

俺は、工藤邸に入ると丁度父さんがいて理由を聞かされた。父さんは、腕組みしながらコナンの寝室の方へ視線を送ると呟くように口を開いた。

「警察官という仕事は、コナンには少し荷が重すぎたのかもしれんな…でも、まあ…昨日話した様子だと大丈夫だとは思うが…後は新一…お前達に任せる」
「あ、ああ。分かったよ…」

昔からコナンの事はよく俺に委ねられていたから慣れてはいたが、相変わらずな発言に思わず笑みが零れる。

寝室に入ると、コナンはまだ眠っていて俺は布団を捲り上げた。

「うーん…」

まだ寝ぼけているコナンに俺は声を掛けながら身体を揺すった。

「おい、コナン…起きろ!珍しい奴が来てるぞ!」
「兄ちゃん?どうしたの?」
「いいから着替えて出掛けるぞ?」
「どこへ?」
「俺んち」

そう言ってほぼ強引にコナンに服を着替えさせ、灰原さんと勇嗣を連れて俺の家に連れて行く為、工藤邸を後にした。

「兄ちゃん、今日仕事は?」
「今日は休み。」
「珍しい奴って、誰か来てるの?」
「家に来れば分かるよ」
「蘭ねーちゃんは?」
「家で料理作ってお前らが来るのを待ってるんじゃねーか?」
「じゃあ仲直りしたんだ?」

自分の家までの道のりで、久しぶりにコナンの質問攻めに合ってる俺とコナンを交互に見る灰原さんはクスッと笑ってコナンに言う。

「あれから何日経ってるのよ…とっくに仲直りしてるに決まってるじゃない…」
「あ、そっか…」

そう言って笑みを浮かべるコナンを見て、これなら大丈夫かと俺は一人安心していた。

玄関を開けると、鈴がよちよち歩きながら玄関へ向かいでてくれて、コナンはそれを見て感性の声を上げていた。

「わあ、鈴ちゃん大きくなったね〜」
「あ〜」

鈴は少しづつだけど、歩き始め…言葉も少しづつだけど話始めていた。コナンが声を掛けると、鈴は両手をコナンの方へ伸ばしていてそんな鈴をコナンは抱きしめていた。俺がママは?と問いかけるとキッチンの方へ指指すと一人でまたよちよちと戻っていった。

その様子を微笑むと、俺達も鈴を追い掛けるようにキッチンへ向かって行く。

「おかえり。コナン君たちもいらっしゃい。」

蘭が明るくそう声をかけるが、コナンの視線は先に来ていたある人物たちに視線を移しながら目をパチパチしていた。

「よう、久しぶりやな〜元気にしとったか?」
「え?」
「大きくなったな、コナン君…」
「コナン、お前がまだ小さい時に何回か会っただろ?服部達覚えてるか?」

そう言うとやっと思い出した様に、コナンは口を開く。

「え、あ…平次兄ちゃんと和葉姉ちゃん?」
「せや、覚えとったか…」
「う、うん…」
「それと、隣の家に住んでた灰原哀さん。去年コナンと結婚してから性は変わってるけどな。」

その言葉に、服部は丁度飲んでたお茶を吹き出し驚いていた。

「ぶっ…お前ら結婚したんか?」
「やるやんか、コナン君!ほんなら、授かり婚やね〜」
「う、うん…そんなに驚かないでよ〜」
「せやけど、早すぎんで…お前らまだ成人しとらんやないか。」

服部には前もって言っておくべきだったなと思いながら、一番驚いていた服部を見て笑っていた。

「早くてもええやん、大変かも知れへんけど…よかったやん。おめでとう!」
「ありがとう。」
「ありがとうございます」

和葉ちゃんの言葉に、コナンと灰原さん二人一緒にお礼を言っていた。そんなやり取りを傍で見ていた蘭は、クスクス笑いながら…そして、俺達に気を使ってくれた様に言ってくる。

「カレー煮込むのもう少し時間かかりそうだから…その間、新一達は話してていいわよ…私達はあっちで鈴達と遊んでるから。」
「え?話って?」
「ああ…悪いな。」

何も聞いてないコナンと灰原さんは顔を見合わせて不思議な顔をしていたが、俺は強引にコナンを椅子に座らせる。

「兄ちゃん?」
「……何の話なのか分からないけど、彼をあんまり虐めないでよね?立ち直ったばかりなんだから。」
「よ、余計な事言わないでよっ」
「だって本当の事じゃない…」

灰原さんはそれだけ言うと、身を翻し…勇嗣を抱いて、蘭と和葉ちゃんのいる方へ行ってしまった。

残された俺達は不思議な顔をしているコナンと相向かいになりながら、話は始まった。

「あ、いやな…お前が刑事課の研修で悩んでるみたいだしさ…服部が丁度こっち来るって言うから相談したんだ。」
「ほんま、工藤から電話もろて…弟が心配で夜も眠れんちゅーからな…こっち来るついでに寄ったったんや!」
「そこまで言ってねーだろ?」

俺は服部が大袈裟な言い方をしている事にムッとし言い返すと再び口を開いた。

「あ、ほら…服部今刑事だからさ…少しは参考になるんじゃねーかなー?と思ってさ。」
「平次兄ちゃん今刑事なの?あ、でも兄ちゃん…僕もう大丈夫だよ。昨日お父さんに話聞いてもらったし…だから…」
「ほんまか?」

無理矢理な笑顔を作って言うコナンの言葉が引っかかったのか…服部は真剣な表情をさせて、コナンに問いかけていた。

思った通り、服部の言葉でコナンの表情からすっと笑顔が消えた…。

そんなコナンに服部は更に突っ込んだ言い方でコナンに詰め寄った。

「警察官辞めようと思ってたんとちゃうか?まあ、それは解決したようやけど…お前見とると大丈夫やと思えへんで…何か思う様な事あるんちゃうか?ほれ、言うてみ?」
「別に…何もないよ…」
「ほんなら代わりに言うたろか?お前、刑事課が嫌なんやろ?今は研修やからしゃーなしにしとるみたいやけど…早う、刑事課から移動ならへんかなー?って思っとるんちゃうか?」

図星を言い当てられ、コナンは黙って俯いてしまった。この間からずっと刑事課の研修で悩んでいたのは知っていたが、父さんが話してくれた事で解決した様に思われた。

でも、コナンの中では…まだ刑事課に居るという事が引っかかりになっていて、悩みから抜け出せない様に思えた。

「平次兄ちゃんだって、今刑事課でしょ?怖いとかないの?」
「そんなんあらへん…怖がってたら、刑事課なんか務まらんて!」

服部のその返事にコナンはただ"そう…"と呟くだけだった。

「なんや、怖いんか?」
「うん…ちょっとね…」
「せやけど、警察学校で訓練したんとちゃうんか?」
「だけど、現場初めてだし…こんなすぐにあんな凶悪犯に会うなんて思わなかったんだ…」

その言葉に服部は瞬時に反応し問いかけた。

「凶悪犯!?」
「詳しくは言えないけど…僕、初めて手錠かけた日に、会っちゃったんだ…だけど、怖くて…それ以上は何も出来なかったんだ。」

やっと話すコナンに、服部の歓声が飛び。

「そりゃよかったやんけー、手錠かけて逮捕したったんやろ?」
「そんな喜べる事じゃないよ!僕、その人の事余計不安にさせちゃったんだから…」

詳しくは事件についての事情は言えないと打ち明けるコナンの言葉の裏には、逮捕した人の心情が現れていた。きっと、手錠の重みと同時に…罪の重みもコナンの中に重くのしかかっていたのだろう。

逮捕されたその人の事を口にしたコナンだったが、それ以上話さなくなったコナンを見て、服部は言う。

「お前…もしかしたら、ええ警察官になるんちゃうか?」
「え?」
「泣き虫な分、人の気持ちが分かるっちゅうこっちゃ!」
「泣き虫じゃないよっ」

コナンにとって、何よりも泣き虫という事だけは認めたくない事に俺は笑いが込み上げてしまう。

「兄ちゃん…」
「わりぃ、わりぃ…」
「そう言うたら、ガキん頃しょっちゅう泣いとったな…」

そう言ってコナンをからかっていると、鈴達の面倒を見ている灰原さんから声が飛んでくる。

「それは今もよ!」
「ほんまか?」
「ち、違うよっ、変な事言わないでよ…」
「あら、ごめんなさい。本当の事言わない方がよかったのかしら?」

その言葉にコナンはそれ以上何も言えなくなり恥ずかしさに顔を染めていた。そんなコナンがおかしくて、笑う俺達の目の前でコナンはもっと顔を真っ赤に染めていた。
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