✩.*˚警察官は苦悩の連続✩.*˚
高木刑事の運転する覆面パトカーで移動中に、この間の訪問者の家に着こうかという時に、高木刑事が口を開いた。
「実はね、この間の二人目の人の事をあの後個人的に調べたんだけどね…どうやら、あの人あそこに住んでないみたいなんだ。」
「え!?」
「もしかしたら、身代わりで頼まれたのかも知れないね…」
そう高木刑事に助言され、僕はこの間のあの人の目が泳いでいた事を思い出す。
「とにかく、あのお宅に行く前に周辺を探った方が良さそうだね…着いたよ」
そして、事件現場から少し離れた所に車を停め、僕と高木刑事は周辺を探る事になった。しばらく探っていた時…例のあの人が姿を現し、遠くから覗いて見ていると、自分の住居と思われる部屋のチャイムを押している所だった。
何回か押して居ないことが分かると、その男は部屋を後にした所で僕達は男に駆け寄り、職質をかけようと近づいた。
僕達は警察手帳を男に見せると、高木刑事は男に言う。
「警視庁の高木です。少しお話よろしいでしょうか?」
「なんでだよ?」
「少々気になる事がありまして…この間、あのお宅に居ましたよね?なのに、何故今チャイムを鳴らしたんですか?あのアパートの住人では無かったんですか?」
「知らねーよ」
「すいませんが、任意同行願います。」
男は逃げ惑いながら、高木刑事から早々に立ち去ろうと質問も適当に交わしていたが、高木刑事の最後の言葉で足は止まる。
「……」
「何もなければ直ぐに帰れます。話を聞くだけですから…お願い出来ますか?」
「任意なら行かねーよ」
「いいですけど、その後貴方に落ち度があれば逮捕となりますよ?」
大人しく応対していたその男は、高木刑事のその言葉に反応し興奮し始めた。
「何なんだよ?俺は何もやってないんだ!事件とは関係ねーよ」
そう怒鳴って僕達から立ち去ろうとした時、僕はその男の腕を握り言った。
「何もやってないなら、どうして目が泳いでたんですか?泳いでましたよね?この間聞き込みした時に…」
「別に…」
「貴方に頼んだ人が居るんじゃないんですか?あの部屋にいた事にしてくれと…」
そこまで言うと、男は黙って俯きながらやっぱり目が泳いでいた。
高木刑事はその男を見つめて優しく諭す様に言う。
「貴方の事を脅している方がもし居るのであれば、我々は救ってあげる事が出来ます。ですが、このまま任意同行を拒絶し続ければそれは不可能になります。1度、警察に来て頂けませんか?」
「ほ、本当に…」
「え?」
「何でもない…」
その時、後方から微かに人の気配がし、その男は言いかけた言葉を止めてしまった。とりあえず、大人しくなったこの男を取り調べようと僕達は高木刑事の車で警視庁に向かった。
警察署に着くと、男の写真と指紋採取をした後、直ぐに取り調べ室の一室へ連れていき、高木刑事と男が面と向かって座ってる横で僕はパソコンを前に補助者として座っていた。
「任意の同意を受け入れてくれてありがとね…まずこの書類を書いてもらってもいいかな?」
高木刑事から渡された書類に目を通す男は、少しの間黙って見つめていたけど、素直にペンを受け取るとスラスラと書いていた。
その書類に目を通す僕と高木刑事は、やっぱり思った通りで…あのアパートはやはりこの男の住居ではなかった。そして、何と年齢は弱冠二十歳で僕と一歳しか変わらない…何より、僕達が思っていた男の見た目年齢よりかなり若かった事に驚く。
「早速だけど、質問させてもらえるかな?君は何であのアパートにいたんだい?」
「そんなの…聞かなくても、分かってるくせに。」
「君の口から聞きたいんだ。」
高木刑事は男にやんわりと聞き出そうとしていたが、男は黙って俯いていた。
「じゃあ、質問変えようか…誰に脅されているんだい?何かに利用されているんじゃないのかな?」
その質問に男の肩がピクリと反応する。そして、顔を上げると高木刑事に喚くように訴えかけて来た。
「助けてくれ…俺、殺される。ここを出たらあいつに殺されるんだ…そうだ、もう逮捕してくれ!あいつに殺されるくらいなら捕まってもいい…」
「あいつ?」
男の顔は演技でも何でもなく、明らかに怯えていた。男の影に隠れている存在に恐怖を見出している事に、何が起きているのか…知る由もなかった。
何としても、男に聞き出さないと行けないと悟った僕達は男に冷静になる様に促しながら、再度質問する。
「全て話してくれないかな?君とそのバックにいる人の間で何が起きているのか…」
「……最初は、友達だった。いや、友達になってもらったんだ。俺には友達って呼べる奴が居なかったから…だから、友達になる代わりに色々やらされていたんだ。今回も、身代わりになってくれって…何も危険はないからって…」
そこまで言うと、高木刑事は厳しい顔つきになり男に言う。
「君ね、簡単に身代わりになったみたいだけど…それは捜査撹乱と言って、やってはいけないことなんだ。あのアパートに住んでいたもう一人の人物こそ、事件に関わっている人物だね?」
「はい。俺は、そいつに言われてあの日アパートにいました。何かあったら知らないとでも言っておけと言われて。」
「なるほどね、分かった。それで、その人は今どこに居るか分かるかな?」
「多分、新宿を根城にしてるのかと…」
そこまで聞いて、高木刑事は席を立つと男を見張るように僕に言うと、一度取り調べ室を出ていった。
二人きりになった僕とその男の間で…少しばかりの沈黙が流れた……。
そして、男は独り言の様に口を開く。
「友達になりたかっただけなんだ…困ってるからって、相談受けて…じゃあ俺が身代わりをって…それから、何かあると俺を頼って…友達の頼みならって……だから…」
男は俯きながら淡々と話していた。だけど、僕は思う。
「そんなの友達じゃないよ、相手の男は貴方を利用していたんですよ…本当の友達なら、友達が困る様な事頼んだりしませんよ。アリバイ工作して、その男がしてしまった事…きっと貴方は分かっていたはずでしょ?」
「ああ…」
「だったら、いけない事はいけないと言ってあげるのが本当の友達なんだから…今度、いつか本当の友達が出来た時はそうしてあげてください。」
僕がそう言うと、彼は今にも泣きそうな瞳を浮かべて精一杯の笑顔を僕にくれた。きっと、この人は大丈夫だろうと僕はそう確信していた。
その後、高木刑事が戻ってきてベテラン刑事と共に、新宿へ向かう事になり、僕にはこの男を安全に家に帰すように委ねられた。
「実はね、この間の二人目の人の事をあの後個人的に調べたんだけどね…どうやら、あの人あそこに住んでないみたいなんだ。」
「え!?」
「もしかしたら、身代わりで頼まれたのかも知れないね…」
そう高木刑事に助言され、僕はこの間のあの人の目が泳いでいた事を思い出す。
「とにかく、あのお宅に行く前に周辺を探った方が良さそうだね…着いたよ」
そして、事件現場から少し離れた所に車を停め、僕と高木刑事は周辺を探る事になった。しばらく探っていた時…例のあの人が姿を現し、遠くから覗いて見ていると、自分の住居と思われる部屋のチャイムを押している所だった。
何回か押して居ないことが分かると、その男は部屋を後にした所で僕達は男に駆け寄り、職質をかけようと近づいた。
僕達は警察手帳を男に見せると、高木刑事は男に言う。
「警視庁の高木です。少しお話よろしいでしょうか?」
「なんでだよ?」
「少々気になる事がありまして…この間、あのお宅に居ましたよね?なのに、何故今チャイムを鳴らしたんですか?あのアパートの住人では無かったんですか?」
「知らねーよ」
「すいませんが、任意同行願います。」
男は逃げ惑いながら、高木刑事から早々に立ち去ろうと質問も適当に交わしていたが、高木刑事の最後の言葉で足は止まる。
「……」
「何もなければ直ぐに帰れます。話を聞くだけですから…お願い出来ますか?」
「任意なら行かねーよ」
「いいですけど、その後貴方に落ち度があれば逮捕となりますよ?」
大人しく応対していたその男は、高木刑事のその言葉に反応し興奮し始めた。
「何なんだよ?俺は何もやってないんだ!事件とは関係ねーよ」
そう怒鳴って僕達から立ち去ろうとした時、僕はその男の腕を握り言った。
「何もやってないなら、どうして目が泳いでたんですか?泳いでましたよね?この間聞き込みした時に…」
「別に…」
「貴方に頼んだ人が居るんじゃないんですか?あの部屋にいた事にしてくれと…」
そこまで言うと、男は黙って俯きながらやっぱり目が泳いでいた。
高木刑事はその男を見つめて優しく諭す様に言う。
「貴方の事を脅している方がもし居るのであれば、我々は救ってあげる事が出来ます。ですが、このまま任意同行を拒絶し続ければそれは不可能になります。1度、警察に来て頂けませんか?」
「ほ、本当に…」
「え?」
「何でもない…」
その時、後方から微かに人の気配がし、その男は言いかけた言葉を止めてしまった。とりあえず、大人しくなったこの男を取り調べようと僕達は高木刑事の車で警視庁に向かった。
警察署に着くと、男の写真と指紋採取をした後、直ぐに取り調べ室の一室へ連れていき、高木刑事と男が面と向かって座ってる横で僕はパソコンを前に補助者として座っていた。
「任意の同意を受け入れてくれてありがとね…まずこの書類を書いてもらってもいいかな?」
高木刑事から渡された書類に目を通す男は、少しの間黙って見つめていたけど、素直にペンを受け取るとスラスラと書いていた。
その書類に目を通す僕と高木刑事は、やっぱり思った通りで…あのアパートはやはりこの男の住居ではなかった。そして、何と年齢は弱冠二十歳で僕と一歳しか変わらない…何より、僕達が思っていた男の見た目年齢よりかなり若かった事に驚く。
「早速だけど、質問させてもらえるかな?君は何であのアパートにいたんだい?」
「そんなの…聞かなくても、分かってるくせに。」
「君の口から聞きたいんだ。」
高木刑事は男にやんわりと聞き出そうとしていたが、男は黙って俯いていた。
「じゃあ、質問変えようか…誰に脅されているんだい?何かに利用されているんじゃないのかな?」
その質問に男の肩がピクリと反応する。そして、顔を上げると高木刑事に喚くように訴えかけて来た。
「助けてくれ…俺、殺される。ここを出たらあいつに殺されるんだ…そうだ、もう逮捕してくれ!あいつに殺されるくらいなら捕まってもいい…」
「あいつ?」
男の顔は演技でも何でもなく、明らかに怯えていた。男の影に隠れている存在に恐怖を見出している事に、何が起きているのか…知る由もなかった。
何としても、男に聞き出さないと行けないと悟った僕達は男に冷静になる様に促しながら、再度質問する。
「全て話してくれないかな?君とそのバックにいる人の間で何が起きているのか…」
「……最初は、友達だった。いや、友達になってもらったんだ。俺には友達って呼べる奴が居なかったから…だから、友達になる代わりに色々やらされていたんだ。今回も、身代わりになってくれって…何も危険はないからって…」
そこまで言うと、高木刑事は厳しい顔つきになり男に言う。
「君ね、簡単に身代わりになったみたいだけど…それは捜査撹乱と言って、やってはいけないことなんだ。あのアパートに住んでいたもう一人の人物こそ、事件に関わっている人物だね?」
「はい。俺は、そいつに言われてあの日アパートにいました。何かあったら知らないとでも言っておけと言われて。」
「なるほどね、分かった。それで、その人は今どこに居るか分かるかな?」
「多分、新宿を根城にしてるのかと…」
そこまで聞いて、高木刑事は席を立つと男を見張るように僕に言うと、一度取り調べ室を出ていった。
二人きりになった僕とその男の間で…少しばかりの沈黙が流れた……。
そして、男は独り言の様に口を開く。
「友達になりたかっただけなんだ…困ってるからって、相談受けて…じゃあ俺が身代わりをって…それから、何かあると俺を頼って…友達の頼みならって……だから…」
男は俯きながら淡々と話していた。だけど、僕は思う。
「そんなの友達じゃないよ、相手の男は貴方を利用していたんですよ…本当の友達なら、友達が困る様な事頼んだりしませんよ。アリバイ工作して、その男がしてしまった事…きっと貴方は分かっていたはずでしょ?」
「ああ…」
「だったら、いけない事はいけないと言ってあげるのが本当の友達なんだから…今度、いつか本当の友達が出来た時はそうしてあげてください。」
僕がそう言うと、彼は今にも泣きそうな瞳を浮かべて精一杯の笑顔を僕にくれた。きっと、この人は大丈夫だろうと僕はそう確信していた。
その後、高木刑事が戻ってきてベテラン刑事と共に、新宿へ向かう事になり、僕にはこの男を安全に家に帰すように委ねられた。