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✩.*˚哀とコナンと……①✩.*˚

漸くコナンが落ち着いた時、タオルを肩に掛けたコナンを椅子に座らせた。

俺と蘭はコナンと向かい側に並んで座った。

蘭に差し出された温かいココアを啜りながら、飲むコナンに……。

俺はそっと、何があったのか聞いてみた。

「灰原が……」

そう、切り出したコナンの胸の内を…俺と蘭は黙って聞いていた。

コナンは俯いたまま、顔を上げようとはせず……。

ただ、黙々と話していた。

「留学か………」
「二年て………長いわね…………」
「灰原さん、何て言ってたんだ?」
「二年ぐらい、我慢して待っててって………」
「そりゃあ、きついなあ………」

俺は、そう思いながら…つい、口から出てしまう。俺が家を出てからと言うもの、コナンの側にはいつも灰原さんがいた。

その灰原さんがいなくなってしまうと、コナンはまた一人になってしまう事を俺は知っていた。

俺が居なくなった隙間を灰原さんが埋めてくれていたものだったから、灰原さんには感謝している。

両親はお互い忙しく、コナンが小さい時に比べて、家に居る事も最近は少なくなったという。

また、コナンの心の中に…ぽっかり穴が空きそうで、少なからず俺の心に心配が募っていた…。

コナンが元々、一人っ子ならと…何度も思った。

でも、コナンと過ごした生活は…かけがえのない物だと思うと、そんな事を思うのがバカバカしくなっていた。

肩を落とし続けているコナンに、蘭はポツリとこう言う。

「哀ちゃん、我慢強そうだもんね!!」

そんな蘭の言葉に黙ってしまったコナンを、俺と蘭は何て言ったらいいか分からず……暫しの沈黙がのしかかる。




「そういや、灰原さんと付き合ってるんだって?」
「……」

そう言う俺の言葉に、顔を真っ赤にして俯く姿勢が…俺の言葉でもっと、俯かせた。

「隠すことないだろう?灰原さんの事、好きか?」
「新一っ!!コナン君は新一と違ってカッコつけじゃないんだから、そんな聞き方………」
「別に、俺はカッコつけなんかじゃ………」

蘭とそんな言い争いをしていると、何も言わなかったけど…コナンはただ黙って、顔を真っ赤にしながら、頷いていた。

そんな、コナンを見て…俺は微笑みながら、そうか。と、コナンの頭をポンと撫でた。

そんな、俺の仕草に…肩に掛けていたバスタオルを両手で掴むと、俺達に見えない様に顔を隠した。

そんな、照れ屋な弟が何とも微笑ましくて…俺と蘭はただ微笑んでいた。

灰原さんが好きで、好きで堪らなくて…離れたくない気持ちでいっぱいで、家を飛び出して来たコナンの気持ちは、凄くよく分かっていた…。

灰原さんから告白されたとしても、そのずっとずっと前から…子供の頃からコナンを知り尽くしてきた俺だから、灰原さんの事を誰よりも心配していた事は知っていた。




だから、今回の灰原さんの留学は…途轍もない、衝撃が…コナンの心を抉(えぐ)る形となってしまったんだろう。

17歳と言っても、まだ中身は子供で…どうしようもない気持ちを抱えて生きている。

俺がコナンと同じくらいの歳には…探偵としての第一歩を進み始め…子供らしさなんて、なかったかも知れない。

逆に、周りからは…小生意気なガキと認識されてしまい、こんな愛らしい一面は数知れていた。

そんな事を思いながら、俺はコナンが照れから回復するのを待ち続けた。
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