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✩.*˚警察官を目指すコナン✩.*˚

そして、翌日…。工藤君と私は未成年の為、優作さんか有希子さんの承認を貰おうと婚姻届を持って証人欄に記入してもらおうと行ったら、有希子さんが"博士に書いてもらった方がいいんじゃない?"という言葉に、私達は阿笠邸を尋ねた。

「これでいいかの~?」

書き終えた博士は婚姻届を私達に返しながら聞く。

「「ありがとう、博士!」」

私達は博士の証人欄を見るなり、笑顔を浮かべると精一杯のお礼を言った。

「博士、結婚前に…突然家を出る事になってしまって…ごめんなさい。」
「いいんじゃよ、有希子さんの方が色々分かってると思うし…男より女性の方が何かとな…ハハッ…」

そう言って笑う博士に笑みを浮かべながら、私は博士に向けてこれまでの想いを打ち明けようと口を開いた。

「博士…私、初めて博士の家に連れてこられた時、不安で不安で仕方なかったと思う。子供の頃の記憶だから、うる覚えしかないけど…私、博士に心配ばかり掛けていたと思う…それでも、私をここまで育ててくれた事は本当に感謝してる。」
「哀君…」
「本当なら、私も家族と一緒に死んでいたと思うの。でも、生きてて…よかった。生きてなかったから、こんな幸せ…味わえなかったもの。」

私は博士に笑みを向けながら、感謝の言葉を述べる傍らで…大粒の涙が私の頬を伝い、零れていた。そんな博士は私の肩に手を置いた。私はその瞬間に博士の大きな胸に飛び込んだ。




「博士っ!ありがとう、博士の家に来てよかった。博士に育てられて、本当によかった。私を引き取ってくれて、本当にありがとう。」

私はいつの間にか博士の胸の中で大きな声を上げて、泣いていた。私を引き取った時、引き取り先は揉めた事は…その時博士は、私にその事が伝わらない様に引き取っていた。

いずれバレるかも知れないけど、まだ小さかった私には知らせまいとその時だけは伝えずにいたらしい。そして、私が成長してから両親の事を調べ始めた時に初めて私は幼少期の時の事情を知ったのだった。

泣いている私を後ろから見守る様に工藤君はは心配な眼差しで私を見つめていたと、後から博士に聞かされた。そんな工藤君に、博士は私の背中を擦りながら言う。

「コナン君、哀君の事…よろしくな。幸せにしてやってくれ。」
「うん。絶対、幸せにするよ!」

後ろ背に、聞こえてきた彼の言葉に…私は嬉しくてもっと涙が溢れた。一生、工藤君から…彼から離れないと…この時私は心に誓った。

博士に肩を掴まれ、顔を上げながら私は涙を拭う。そんな私の顔を覗き込んで、あの頃の事を博士に正直に打ち明けられた。




「哀君。正直わしは、君を引き取った時…君を育てる自信はなかったんじゃ。でもな、君が大きく成長するに連れて…本当の親子の様に、愛情が湧いての…君に子供が産まれたのを知った時は本当に嬉しかったんじゃ…」
「は、かせ…」
「君はもうわしが居なくても大丈夫じゃ。これからはコナン君と一緒に…新しい未来を勇嗣君と一緒に作っていくんじゃ!」
「うん。」

博士の言葉一つ一つに、私の瞳からぽつりぽつりと涙が零れていた。

「でもまあ、隣に住んでるんじゃから…気が向いたらいつでも来なさい。」

博士の優しさが私の気持ちを和らいでいく。私は涙を拭って、博士に笑みを浮かべた。

そして、博士は照れながら言う。

「それと…落ち着いたらでいいんじゃが…わしにも、孫を抱かせてくれんかの?」

その言葉に私は驚きクスッと笑うと博士に顔を向ける。

「もちろん!」

そして私は博士に向かってお辞儀と共に…この言葉で感謝の気持ちを博士に捧げた。

「博士……今まで育ててくれて、ありがとうございました。」
「哀君…」
「なんてね…」

顔を上げる私は博士ににっこり微笑んだ。本当の親子じゃないけど、本当の親子よりもかけがえのないものを手に入れた気がする。この16年間は、私にとっても、博士にとっても忘れてはいけない想い出だから。

「それと…私達、まだ未成年だし…色々助けてもらう事沢山あると思うの。だから、その時はよろしくね、博士!」
「ああ、もちろんじゃ。困った事があったら、遠慮なくいいなさい。」

その博士の言葉に、私は安心するかのように微笑んだ。私の挨拶で何となく寂しそうにする博士だったけど、これからも変わらず関係でいる事を委ねると、博士はいつもの優しい笑みを浮かべて安堵していた。

そして…私達は婚姻届を握りしめ、市役所へ向かう。

「いよいよだね。」
「ええ。」

工藤君にそう声を掛けられ、私は返事する。

そう、いよいよ…本当だったらとっくに結婚していた私達。それでも、工藤君の警察学校を卒業するまではと、私が長引かせてしまった。

警察学校を卒業しなくても、何らかのタイミングで結婚していたと思う。

でも、私の思った以上に工藤君は根性も体力もあった事を卒業という言葉で思い知らされた。

市役所の前に辿り着いた時…私は彼の手を握っていた手をもう一度握りしめた。

「行きましょ」
「うん。」

彼と手を繋いで市役所へ向かって歩いていく…子供の頃、手を繋いで遊んでいた私達は成長し、今もこうして手を繋いで今度は二人で決めた事に向かって歩みだしている。

お父さん、お母さん…お姉ちゃん。

私、今日結婚するのよ。どうか…天国から見守っていてください。

私、今でも充分幸せだけど…もっともっと幸せになるから…。

だから、見ててね。

私はそう心の中で亡くなった家族に問いかけながら、市役所の入口に向けて歩いていた。
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