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✩.*˚警察官を目指すコナン✩.*˚

そして…そんな俺にコナンは不思議な顔をしながら聞いてきた。

「ねえ、兄ちゃん…僕に何か用なの?」
「え!?」

そう聞かれた俺は驚いた。その通りなんだが、どう切り出そうか迷っていた所にコナンは言ってきた。

「だって、今日の兄ちゃん何か口数少ないし…何か言いたそうにしてるしさ…どうかしたの?」
「あ、ああ…まあな。」
「警察学校のこと?」
「え!?」
「まさか、訓練中に倒れたから、教官の先生から何か言われたの?卒業出来ないとか?」

言い渋ってる俺に、コナンは言い当てる様に次々へと口をついて出ていた。そんなんじゃねーと言う俺に、コナンは悪い報告だと思っている様で…聞き出そうとしている様だった。

そんな俺は、テーブルの上に一枚の写真と封筒を差し出すと…コナンの顔が一瞬曇った。

「その顔は…見覚えあるな?」
「ないよ。」

コナンはそう一言いい、何も見なかったように、平静を装って俺の顔を真っ直ぐ見ていた。

「嘘つくなよ…もう知ってんだぞ?お前を含め、数人が嫌がらせ受けてたって…調べて分かってんだ。」
「兄ちゃん…」
「探偵なめんなよ?何で言わねーんだよ、話してくれていたらもっと早く解決出来てたんだぞ」

そう言う俺も、気づいてやれなかった事に悔やんでいた。俯くコナンに俺は少し責めるような言い方をしてしまった様を感じていたが、直ぐにコナンは口を開いた。

「だって、もうその人居ないよ?退学させられたって、教官の先生言ってたから…」
「だけどな…」
「それに…僕が解決しないと意味ないから…頼ってばかりじゃ、警察官になれないから…子供の時とは違うんだよ。」
「コナン…」

今まで、こういう嫌がらせをされたという事は聞いた事がなかった。灰原さんや元太くん達の様な友達が傍に居たからか、コナンが言わなかっただけか…なんにしても、嫌がらせの件が発覚したのは初めてだった。

「確かにね…嫌がらせされていたよ、でも教官の先生がそれに気づいて、その人を問い詰めたら白状したんだ。それで、僕達の証言で退職になったんだよ。だから、今は居ないし…もう大丈夫だよ、兄ちゃん。」
「けどな…」
「それにね、僕の事守ってくれた人も居たんだよ!その人は嫌がらせされていた人じゃないんだけど、灰原の出産が始まる時にも応援してくれてね、産まれた事知ったら喜んでくれたんだ。だから、僕は1人じゃないんだよ?」

コナンは俺の心配を解きほぐすように、色々と警察学校で起きた事を話していた。心配する俺を他所に、コナンに宥められている俺は…掻き集めた証拠写真を見つめ、心配要らなかった事に落胆していたが…。

「でも、兄ちゃん!ありがとう。心配してくれてたんでしょ?」

そう言って、逆に俺はコナンに気を使われていた。"まあな"と返す俺に、コナンは衝撃の言葉を口にする。

「でもね、僕…いずれこういう事になるのは分かってたんだ!」
「え!?」
「だって、僕の家族皆有名人ばかりじゃない。兄ちゃんだって警察に顔が知られてるし…僕と兄ちゃん、顔似てるしさ…兄弟だって知って何か言われると思っていた…こういう事は避けられないよ…」
「それ分かってたんなら、言えって…何か対処出来たかも知れなかっただろ!」
「ダメだよ!」

コナンはそっと呟くように言うと、俺の顔を真っ直ぐ見て言った。

「そりゃ、兄ちゃんに言えば、すぐ解決してくれるって分かってるけど…さっきも言ったでしょ?自分で解決しなきゃ…僕の為にならないから…守ってもらってばかりだったんだもん。自分の事すら自分で守れなかったら、警察官になっても…誰も守る事なんて出来ないよ」

コナンの言葉にハッとした。小さい頃から何があっても弟を守ろうと決めて守っていたつもりだったが、俺は…余計な事だったなと、この時ハッキリ分かった。

よく母さんに甘やかし過ぎだと言っていたが、俺が一番甘やかしていたのかもしれないな。

「そうだな…悪かった。余計な事したな!」
「ううん。ありがとう、兄ちゃん!」
「でも何か困った事あったら、ちゃんと言うんだぞ?」
「うん!分かった。でも、この事は灰原には言わないでよ?」
「ああ、分かったよ」

コナンがいつの間にか心も体も大きくなっていた事、気づいているようで気づいてなかったんだな、俺は。そんな思いを胸に、何でも頼ってきたコナンが文字通り自立していた事に嬉しくなりつつも、少なからず寂しさも覚えた。

俺はこの写真や資料を封筒にしまい、こう切り出した。

「だけど、よく続いてるな?途中で辞めると思ってたぜ?」
「酷いよ兄ちゃんまで…皆そればっかり言うんだもん」
「わりぃ、わりぃ…」
「でもね、本当に訓練は辛くて辞めたくなることもあるんだ。でも、ここで逃げ出したら、誰も守れないって思うし…子供の事も…それから、灰原に…警察学校逃げ出したら結婚してくれないって言われててさ」

そう言って、笑いながら言うコナンに逃げ出さなかった1番の理由はそれかと俺は妙に納得してしまった。そして、俺は思い出した様にコナンに言う。

「同期生の3分の1程辞めたらしいな。」
「うん。初日から一緒に頑張っていた人が居たんだけど…その人も耐え切れなくて辞めてったよ」
「その中でもよく残ってるよ、風邪も引くことなく皆勤らしいじゃねーか!それが一番びっくりしてるぜ!子供の頃はしょっちゅう風邪引いてたのにな!」
「でもこの間倒れちゃったけどね~ハハハッ…」

コナンのこの明るさは、灰原さんの言葉の力もあると確信していた。あまりの訓練の厳しさに、体調崩す者や、精神的に参る者もいると聞く。少し前のコナンなら、泣いて辞めていたんじゃないかとさえ思う。

だけど、今のコナンは違っていた。

「あと2ヶ月…この調子なら卒業出来そうだな!」
「うん。僕頑張れるよ!」
「まあ、でもよかったな!いい教官の先生に当たってよ!」
「え!?」
「昔は理不尽な先生も居たらしいぜ?」
「脅かさないでよ兄ちゃん!」

笑い合う俺達は、大人になっても仲のいい兄弟のままで居られる事に父さんと母さんに感謝していた。あの二人に育てられたからこんな風に笑っていられるのかもしれない。

時には喧嘩したり、困った事があれば助け合ったり……そんな兄弟関係で居られる事は、嬉しい事なんだ。

「僕ね、いつだったか、お父さんに言われた事あったんだ。何か一つでも得意科目を持ちなさいって…だから僕、今逮捕術に一番力入れてるんだよ!今後絶対必要になるのが逮捕術だと思ってね!」
「捜査一課の方に進むのか?」
「え!?違うよ…交番勤務とかでも、必要なるでしょ?絶対安全って訳じゃないんだからさ…いざと言う時にひったくりとか捕まえられる様に頑張ってるんだ!」
「なるほどな!でも、無理すんなよ?」
「うん!」

コナンの夢がどんどん近づいていく。目を輝かせ、警察官になった時の事を話すコナンを見て、一時はどうなるかと思っていたコナンの進路がこんな形で進むのかと思うと、近い未来警察官になったコナンを想像すると、楽しみで仕方なかった。

その後、仕事がある為…俺はコナンの病室を後にした。子供っぽさはあるものの、全て頼る事をせず自分で解決する様になったコナン。

だけど、今でも"兄ちゃん"と言って俺に話かけてくるのをみて…コナンが弟で良かったと、安心していた。
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