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✩.*˚警察官を目指すコナン✩.*˚

それからコナンは厳しい訓練を受けながら、警察学校で精神共にしごかれ…土日には家に帰宅し、灰原さんの様子を見に帰って来ている生活を送っていた。

時々俺達の所に二人でやって来て報告もしてくれている。

三ヶ月たった頃に、弱音を吐くんじゃないかと思っていたが、三ヶ月たった今でもなんとか警察学校を辞めずに続いている様だ。

時々探偵の仕事の合間に訓練を受けているコナンの様子を覗いて見ると、必死に学んでいるコナンが遠くから見ても分かるくらいだった。

警部の話だと、泣くことも無くしっかりやっていると担当の教官が話していたとこっそり教えてくれた。

「まあ、だから工藤君、弟さんのことは心配しなくても大丈夫だぞ」

そう言われ、安堵する俺は調子に乗ってある事も口走ってしまったのだ。

そして、年も明け…コナンも灰原さんも19の年になり春の季節がやってくる頃には、灰原さんは安定期を迎え…ほとんど明かりのつくことがなかった工藤邸は、出産までこっちにいると言う母さんの帰国で再び明かりが灯していた。

灰原さんはギリギリまで働くと言っていたのだが、職場や母さんの助言を受け…漸く産休を取る事になった。

そして、週末。工藤邸でコナンの帰りを蘭と一緒に待っていると、コナンが警察学校から帰って来るなり、何やら不満な様子で俺を見ていた事に不思議になる俺。

「どうした?」

そう声を掛ける俺に不満を向け口を開いた。

「兄ちゃんでしょ?妊娠の事言ったの。僕誰にも言ってないのに、なんで目暮警部が知ってるの?」
「あ、ああ…」

そう言えばと俺は思い出し、しまったという様に苦笑いを浮かべた。

「新一、目暮警部に話したの?」
「え!?いや…なんつーか、成り行きで…」
「この間訓練中に目暮警部が様子見に来ててさ、僕を見るなり"子供産まれるそうじゃないか、しっかり頑張るんだぞ"って、皆の前で言われてさ!その訓練が終わった後、皆に色々聞かれて大変だったんだから!」
「わりぃわりぃ…いいじゃねーか、いずれ分かることなんだし」
「良くないよ!なんで勝手にいうんだよ」

怒りの収まらないコナンが口を膨らませて怒ってる姿を見て、蘭や母さんが宥めていたがそれでもコナンの怒りは鎮まらなかった。

「この間目暮警部と仕事で落ち合った時、お前の話が出てよ、ついポロッと…」
「もう、酷いよ兄ちゃん!」
「悪かったって、そんな怒るなよ」

謝っても機嫌が収まる事がないコナンを見て、どうしようかと、困惑していると隣で見ていた蘭がクスッと笑って口を開いた。

「なんか、久しぶりね…新一とコナン君が喧嘩するなんて…」
「「え!?」」

蘭の言葉に、俺とコナンは同時に声を上げる。

「コナン君が小さい時はよく口喧嘩していたけど…最近じゃぱったりだったから…でも新一!コナン君は恥ずかしがり屋さんなんだから…考えてあげなきゃダメじゃない……」
「あ、ああ…」

そう言われた俺はつい口を滑ってしまった事に蘭に攻められていた。

「コナン君も…きっと新一、嬉しくて言っちゃったと思うから許してあげてね」
「うん」

そう言って、蘭はコナンを宥めていた。そんな情景を目のあたりにしていると、昔の事が蘇ってくる。コナンが子供の頃、よくこうやって蘭が間に入って取り持ってくれたのを思い出す。

その後の食事で、コナンは怒っていたことなんて忘れ、笑顔を取り戻していた。蘭も俺も、母さんも…灰原さんのお腹が大きくなるに連れて、すくすくと育ってる様子がよく伝わっていた。




「本当は優ちゃんも来るはずだったんだけど…なかなか難しくて~その代わり、私はこっちにいるから…心配しなくていいのよ?哀ちゃん!!」
「はい」

母さんは楽しそう灰原さんに声を掛けていた。そんな灰原さんも、母さんの声に応えるように笑みを浮かべて返事をしていた。

「でもあれか…子供が産まれる頃、まだ警察学校終わってないのか…そう言えば、学校の方はどうだ?順調か?」

俺がそうポツリと言うと、コナンは警察学校の事を思い出して愚痴のように言い放つ。

「僕の教官の先生、僕にだけ異常に厳しいんだ…絶対わざとやってるよ、あれ…」
「そんな訳ないだろ、皆平等に教えてると思うぞ」
「何で兄ちゃんがそんな事分かるの?」

そう突っ込まれ、隠れて覗いてるなんて言えず…勘だという事にしてはぐらかした。

「でも、ここまでよくやってるじゃねーか。俺は弱音吐くと思ってたぜ!」
「私もよ…コナンちゃん、未だに泣いてないみたいだし」
「泣かないよ」
「産まれてくる子供のお陰かしら?」
「え!?」

コナンは皆から褒められてるような貶されてるような勢いで、灰原さんの言葉に反応し図星だと言うような反応を見せていた。

そんなコナンは思い出した様に灰原さんに言う。

「あ、そうだ!僕出産の時はちゃんと病院に駆けつけるから、ちゃんと知らせてよ!」
「ええ。一応しらせるわ。」
「許可取れるのか?」
「大丈夫だよ、多分…」

少し自信なさげだったが、コナンは何としても灰原さんの出産に立ち会いたい様子だった。蘭の時も楽しみにしていたが、それよりももっと楽しみでならない様子でいる。

そりゃそうだ。自分の子供が産まれてくるんだからな。

「しっかり支えてやれよ」
「うん!」

そう言う俺に、コナンから力強い言葉が聞こえてきていた。

隣に座っていた灰原さんのお腹を触るコナンは"また大きくなってるね"と言って笑みを浮かべ、会う度にどんどん大きくなっていくお腹に感動している様子でいた。

そんなほのぼのする光景を見て、俺達も笑みを浮かべていた。



そして、六月に入り…蘭と鈴と夕食のひと時を過ごしていると、1本の電話がなった。

「え!?産まれる?」

電話の向こうから、母さんの声が聞こえてきた。灰原さんの出産準備がいよいよ始まったらしい。

「コナンに連絡は?」

そう聞く俺の言葉に、連絡済みだと聞き安心した俺はとりあえず病院へ向かった。


(警察学校にて)

本日の訓練も終わり、コナンは仲間と一緒に夕食を摂っていた頃、教官がコナンの所へ慌ててやって来るなり声を荒らげながら言った。

「工藤!奥さん産まれるらしいから、すぐに行ってやれ」
「え!?」

その声に反応し、慌てて立ち上がるとコナンは食事を片付けようと手にかけた時、隣にいる同期生がその手を止めて言った。

「工藤、片付けておいてやるから、お前は早く行けよ」
「え!?でも…」
「いいから!しっかり立ち会ってこい!この幸せもん」

そう言って、躊躇しているコナンにいたずらっぽい笑みを浮かべると、コナンを送り出した。

「ありがとう」

そう言って、コナンは食堂にいた面々に声援を貰いながら、足を走らせた。



俺が病院に付くと、既に灰原さんは分娩室に入っていたと付き添っていた母さんから聞かされた。コナンはまだ来てないけど、ちゃんと許可してくれる教官ならいいなと願いながら、待っていた。

「お母さん、兄ちゃん!」

そうこうしていると、コナンは警察学校の制服のまま駆けつけた。

「今、分娩室に入った所だ行ってやれ」
「うん!」
「コナンちゃん、しっかりね」
「うん、分かった!」

コナンはいよいよ産まれる灰原さんの出産に立ち合いべく、分娩室に入室した。ここからが長い戦いになる事を、俺も母さんも知っていた。

「頑張れ、灰原さん」

俺は分娩室の扉が閉じて行くのを見つめながらそう呟いて見送った。
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