✩.*˚警察官を目指すコナン✩.*˚
警察学校の入校が終わり、コナンは同期生と一緒に訓練が始まった。起床するとすぐに点呼が始まり、慌ただしく一日が始まった。
入校前に、コナンは灰原のアドバイスに従って少しランニングをしていたのだが、そんな軽いものではなかったものが現実としてやってくる。
「おい、工藤!止まるな!走れ!」
「はい…」
そう返事をして、やっとついて行くコナンにとって体力作りだけでもやっとだった。ハアハアと息を吐き出し、体を折り曲げて休憩するものなら速攻で怒られる始末。転んでも"大丈夫か?"なんて甘い言葉が帰ってくる訳ではなく、"さっさと立て"と厳しい言葉が降ってきた。
やっとお昼になり、食堂で食事しようとするも疲れきっているコナンにとっては食欲がわかなかった。子供の頃によく食べていた好きなカレーが喉を通らない。それほどまでにコナンの体力はどんどん削られていった。
少し食べただけのカレーを片付けようと席を立つコナンに隣の男子生徒が声をかけてくる。
「おい、工藤!もういいのか?午後も長いんだぞ?しっかり食べないと…」
「あ、食欲なくて…」
「いいから、もう少し食べろよ!」
そう言って、コナンの手を引っ張って無理やり座らせ、コナンに食事をする様に誘った。刻々と迫る食事の時間。早く食べないと次の授業が始まると言われ、コナンはもう少しだけ食事をする事にした。
体力だけではなく、警察官としての知識を身に付ける授業にも頭を悩ませながら、またしてもグランドに出てハードな逮捕術やジョギングが待っていた。そんなハードな一日を経験し、やっと終了した初日の訓練後…コナンは一人、休憩室のテーブルに顔を突っ伏していると…食事の時に声を掛けてきた同期生が再びやってきて声を掛けてくれた。
「ほい、大丈夫か?」
「あ、うん…」
疲れきって元気の無いコナンに気遣い、目の前にコーヒーを置く。それを見て、コナンは身体を起こし驚く様に男子生徒を見つめていた。
「俺の奢りだ。明日も頑張ろうな!」
「あ、ありがとう。」
「多分、こんなんを毎日熟さないといけないんだろうな…辛いのは今日だけじゃない。10ヶ月後、卒業出来るかがミソだな。」
そう言われ、コナンは弱音が口から出ていく。
「僕、卒業出来るか自信ないよ…」
「俺だってないさ!でもさ、これをクリア出来ないと警察官にはなれないんだぜ?一緒に頑張ろう!な?」
「うん。」
コナンはこの一日が、地獄の様に感じていた。だけど、卒業しなかったら、警察官になれないし…灰原と結婚出来ない。そんなノルマがコナンには課せられていた。これに耐えなければならない事は理解していても、身体がついて行くか…自信がなかった。
同期生に励まされながら、コナンは心の底で…"もう辞めたい"そんな甘えた気持ちが芽生えてくる。
そして、コナンに課せられた試練は…体力だけじゃなかった。
「声が小さい!」
「はい!」
「もっと腹から力をだ出せ!」
コナンは他の男子生徒から比べて、一際声が小さかった為、教官の一人に声の事を指摘されていた。コナンの中では精一杯出してるつもりだったのだが、それでも小さいと言われ…妥当な声量になるまでそれは続けられた。
それは、コナンが思ってる以上に辛い訓練だった。コナンがこれまで経験した事ない以上の厳しい訓練に耐えきれず、涙が出そうになるのを何度も食いしばり耐えていた。
だけど、それは…一日一日と厳しい訓練を耐え続ける内に、コナンにも少しづつ体力がついて行き、やっと皆と肩を並べて走れる様にまでになっていた。
「よーし、いいぞ!」
「1.2.1.2....」
駆け声を合わせながら、毎日の訓練が身体に身についていく感じがして、コナンは心身共に鍛えられていった。一緒に頑張っている同期生や友達も同じ様に厳しい訓練をしている事を思うと、自分だけじゃないと思い、頑張れた。
「工藤!」
「はい!」
「よーし、声出るようになったな?その調子だ!」
そう言って、コナンに時々声を掛ける教官の目には少しづつ成長していくコナンや同期生の姿が教官の目には映っていた。
そして、厳しい訓練の中コナンは辛抱強く警察学校の訓練が身につき始めた頃…初日に声を掛けてくれた同期生の姿が見当たらなく、コナンは不思議に思いながらいつも通り訓練を指導されていた。
「おお、コナン君!やっとるな!」
「目暮警部!」
そんな時、目暮警部が警察学校に訪れコナンに声を掛けるなりコナンにこう言った。
「あの小さかった君が…良くやってるそうじゃないか!感心感心!夏前には君にも子供が産まれるみたいだしな。頑張るんだぞ!」
「な!何でそんな事知ってるんですか!?」
コナンは慌てて目暮警部に言い放つと、警部は言っては行けなかったのかと思いながら、不味そうな顔を浮かべながら笑って誤魔化しそそくさと行ってしまった。
「ちょっと、目暮警部!」
そんな目暮警部に助け舟を求める様に声をかけるが、目暮警部はコナンに向けて、スマンという様に手でジェスチャーをし、一緒に来た教官と一緒に去っていってしまった。
「おい、お前結婚してんのか?」
「あ、結婚はまだ…」
「妊娠て、今何ヶ月なんだ?」
「男の子か?女の子か?」
「えっと…」
目暮警部が落としていった情報という餌に食いついて、同期生達による質問攻めに困り果てていた。
「よーし、続き始めるぞ」
そういう教官の言葉に解放されたコナンは、はぁ~とため息をすると、"兄ちゃんだな"とムッとしていた。
そして、それから三ヶ月が過ぎた頃…いつもの様に週末に家に帰る準備をした後、休憩室を通りかかった時……コナンは足を止めた。
「なんだ、ここにいたんだね。今日姿が見えなかったから、どうしたのかと思ってたよ。」
「……ああ、工藤か。」
同期生はそっとコナンの顔を見るなり、元気なさそうにぽつりとコナンの名を呼んだ。
「どうかしたの?」
「お前…ここ、楽しいか?」
「え?」
そう質問しコナンの顔をじっと見ていた。それを聞いたコナンは、いつもと様子が違う同期生の様子が心配になり…傍の椅子に静かに座った。
「楽しいというより…毎日毎日、大変で…正直辛いよ。一日目で辞めたくなってたもん。」
「ハハッ…だろうな。」
「でも、卒業しないと…警察官になれないから…。それに、僕には警察学校卒業しないといけない約束があるから。」
「フッ、そうか。」
そんなコナンの言葉を聞いて、同期生はゆっくりと口を開いた。
「俺さ…辞めるんだ、ここ。」
「え!?」
コナンは思いもよらない言葉を聞いて驚きのあまりその同期生から目を離せないでいた。
「…なんで?」
「もう、俺にはとてもじゃないと耐えきれないんだ。こんなに厳しいとは思わなかったしな。」
「……」
「止めたりするなよな?俺はもうどうしたって、継続する事は無理なんだ。でもさ、お前はしっかり卒業して…立派な警察官になれよな?」
「う、うん…」
この同期生とは初日から頑張っていた事もあり、コナンにとってはショックが大きかった。励ましてくれた事もあり、同期生の方が早く脱落なんて思いもよらなかった。
「あ~あ!本当はさ、お前が辞めるタイミングで俺も辞めようと思ってたのによ、お前結構しぶとくてさ、中々辞めねーんだもんな~」
同期生は大きく伸びをすると、コナンを見て笑いながら言う。
「初日のお前見て、これは続かないだろうなと思ってたんだ……でもさ、今のお前なら卒業出来る様な気がするぜ!」
そう言って、コナンは初日の記憶を脳裏に思い出しながら、悲しい顔を浮かべていた。"そんな顔するな"って、頬っぺをつねられるコナンは、笑みを浮かべながら同期生に言う。
「残念だな…僕の兄ちゃんに少し似ててさ、そんな君となら卒業まで一緒に頑張れると思ってたのに…」
「お前の兄ちゃんに?俺がか?」
「うん。」
「何言ってんだ、同い年だろ?」
「そうなんだけど…なんとなくね。」
コナンははにかみながら、席を立つと自動販売機から缶コーヒーをひとつ買ってその同期生の前に置いた。
「いつかのお礼。僕が辛かった時にくれたあの日の缶コーヒーの味は忘れてないよ。あの缶コーヒーのお陰で、僕は辞めずに居られているのかもしれないし…だから、ここを辞めても君は君の道を目指して…頑張って!」
そう言って笑顔を向けるコナンに、同期生は熱いものを感じコナンがくれた缶コーヒーを握りしめた。
「サンキュ…」
俯きながら、絞り出す様にやっと出るその声にコナンも同期生もしばらくそこを動く事は出来なかった。体格が大きくても、厳しい訓練に耐えられない生徒もいるのを目にして…警察学校というものは、こんなにも厳しい所なんだと、コナンはこの時厳しい現実に直面した。
それから、仲の良かった同期生が辞めても…悲しんでる暇はなく、翌週の月曜日には…引き続き、訓練に授業に…武術等、現場に出ても大丈夫な様にしっかりと基礎を学び応用しながら訓練は続いた。
拳銃訓練も最初は怖くて怯えていたコナンだっが、同期生が色々アドバイスをしてくれた事もあって、少しづつ上達していた。居なくなった同期生の分までしっかり頑張って絶対に卒業すると決め…コナンは今日も警察学校の中で厳しい訓練に立ち向かっている。
入校前に、コナンは灰原のアドバイスに従って少しランニングをしていたのだが、そんな軽いものではなかったものが現実としてやってくる。
「おい、工藤!止まるな!走れ!」
「はい…」
そう返事をして、やっとついて行くコナンにとって体力作りだけでもやっとだった。ハアハアと息を吐き出し、体を折り曲げて休憩するものなら速攻で怒られる始末。転んでも"大丈夫か?"なんて甘い言葉が帰ってくる訳ではなく、"さっさと立て"と厳しい言葉が降ってきた。
やっとお昼になり、食堂で食事しようとするも疲れきっているコナンにとっては食欲がわかなかった。子供の頃によく食べていた好きなカレーが喉を通らない。それほどまでにコナンの体力はどんどん削られていった。
少し食べただけのカレーを片付けようと席を立つコナンに隣の男子生徒が声をかけてくる。
「おい、工藤!もういいのか?午後も長いんだぞ?しっかり食べないと…」
「あ、食欲なくて…」
「いいから、もう少し食べろよ!」
そう言って、コナンの手を引っ張って無理やり座らせ、コナンに食事をする様に誘った。刻々と迫る食事の時間。早く食べないと次の授業が始まると言われ、コナンはもう少しだけ食事をする事にした。
体力だけではなく、警察官としての知識を身に付ける授業にも頭を悩ませながら、またしてもグランドに出てハードな逮捕術やジョギングが待っていた。そんなハードな一日を経験し、やっと終了した初日の訓練後…コナンは一人、休憩室のテーブルに顔を突っ伏していると…食事の時に声を掛けてきた同期生が再びやってきて声を掛けてくれた。
「ほい、大丈夫か?」
「あ、うん…」
疲れきって元気の無いコナンに気遣い、目の前にコーヒーを置く。それを見て、コナンは身体を起こし驚く様に男子生徒を見つめていた。
「俺の奢りだ。明日も頑張ろうな!」
「あ、ありがとう。」
「多分、こんなんを毎日熟さないといけないんだろうな…辛いのは今日だけじゃない。10ヶ月後、卒業出来るかがミソだな。」
そう言われ、コナンは弱音が口から出ていく。
「僕、卒業出来るか自信ないよ…」
「俺だってないさ!でもさ、これをクリア出来ないと警察官にはなれないんだぜ?一緒に頑張ろう!な?」
「うん。」
コナンはこの一日が、地獄の様に感じていた。だけど、卒業しなかったら、警察官になれないし…灰原と結婚出来ない。そんなノルマがコナンには課せられていた。これに耐えなければならない事は理解していても、身体がついて行くか…自信がなかった。
同期生に励まされながら、コナンは心の底で…"もう辞めたい"そんな甘えた気持ちが芽生えてくる。
そして、コナンに課せられた試練は…体力だけじゃなかった。
「声が小さい!」
「はい!」
「もっと腹から力をだ出せ!」
コナンは他の男子生徒から比べて、一際声が小さかった為、教官の一人に声の事を指摘されていた。コナンの中では精一杯出してるつもりだったのだが、それでも小さいと言われ…妥当な声量になるまでそれは続けられた。
それは、コナンが思ってる以上に辛い訓練だった。コナンがこれまで経験した事ない以上の厳しい訓練に耐えきれず、涙が出そうになるのを何度も食いしばり耐えていた。
だけど、それは…一日一日と厳しい訓練を耐え続ける内に、コナンにも少しづつ体力がついて行き、やっと皆と肩を並べて走れる様にまでになっていた。
「よーし、いいぞ!」
「1.2.1.2....」
駆け声を合わせながら、毎日の訓練が身体に身についていく感じがして、コナンは心身共に鍛えられていった。一緒に頑張っている同期生や友達も同じ様に厳しい訓練をしている事を思うと、自分だけじゃないと思い、頑張れた。
「工藤!」
「はい!」
「よーし、声出るようになったな?その調子だ!」
そう言って、コナンに時々声を掛ける教官の目には少しづつ成長していくコナンや同期生の姿が教官の目には映っていた。
そして、厳しい訓練の中コナンは辛抱強く警察学校の訓練が身につき始めた頃…初日に声を掛けてくれた同期生の姿が見当たらなく、コナンは不思議に思いながらいつも通り訓練を指導されていた。
「おお、コナン君!やっとるな!」
「目暮警部!」
そんな時、目暮警部が警察学校に訪れコナンに声を掛けるなりコナンにこう言った。
「あの小さかった君が…良くやってるそうじゃないか!感心感心!夏前には君にも子供が産まれるみたいだしな。頑張るんだぞ!」
「な!何でそんな事知ってるんですか!?」
コナンは慌てて目暮警部に言い放つと、警部は言っては行けなかったのかと思いながら、不味そうな顔を浮かべながら笑って誤魔化しそそくさと行ってしまった。
「ちょっと、目暮警部!」
そんな目暮警部に助け舟を求める様に声をかけるが、目暮警部はコナンに向けて、スマンという様に手でジェスチャーをし、一緒に来た教官と一緒に去っていってしまった。
「おい、お前結婚してんのか?」
「あ、結婚はまだ…」
「妊娠て、今何ヶ月なんだ?」
「男の子か?女の子か?」
「えっと…」
目暮警部が落としていった情報という餌に食いついて、同期生達による質問攻めに困り果てていた。
「よーし、続き始めるぞ」
そういう教官の言葉に解放されたコナンは、はぁ~とため息をすると、"兄ちゃんだな"とムッとしていた。
そして、それから三ヶ月が過ぎた頃…いつもの様に週末に家に帰る準備をした後、休憩室を通りかかった時……コナンは足を止めた。
「なんだ、ここにいたんだね。今日姿が見えなかったから、どうしたのかと思ってたよ。」
「……ああ、工藤か。」
同期生はそっとコナンの顔を見るなり、元気なさそうにぽつりとコナンの名を呼んだ。
「どうかしたの?」
「お前…ここ、楽しいか?」
「え?」
そう質問しコナンの顔をじっと見ていた。それを聞いたコナンは、いつもと様子が違う同期生の様子が心配になり…傍の椅子に静かに座った。
「楽しいというより…毎日毎日、大変で…正直辛いよ。一日目で辞めたくなってたもん。」
「ハハッ…だろうな。」
「でも、卒業しないと…警察官になれないから…。それに、僕には警察学校卒業しないといけない約束があるから。」
「フッ、そうか。」
そんなコナンの言葉を聞いて、同期生はゆっくりと口を開いた。
「俺さ…辞めるんだ、ここ。」
「え!?」
コナンは思いもよらない言葉を聞いて驚きのあまりその同期生から目を離せないでいた。
「…なんで?」
「もう、俺にはとてもじゃないと耐えきれないんだ。こんなに厳しいとは思わなかったしな。」
「……」
「止めたりするなよな?俺はもうどうしたって、継続する事は無理なんだ。でもさ、お前はしっかり卒業して…立派な警察官になれよな?」
「う、うん…」
この同期生とは初日から頑張っていた事もあり、コナンにとってはショックが大きかった。励ましてくれた事もあり、同期生の方が早く脱落なんて思いもよらなかった。
「あ~あ!本当はさ、お前が辞めるタイミングで俺も辞めようと思ってたのによ、お前結構しぶとくてさ、中々辞めねーんだもんな~」
同期生は大きく伸びをすると、コナンを見て笑いながら言う。
「初日のお前見て、これは続かないだろうなと思ってたんだ……でもさ、今のお前なら卒業出来る様な気がするぜ!」
そう言って、コナンは初日の記憶を脳裏に思い出しながら、悲しい顔を浮かべていた。"そんな顔するな"って、頬っぺをつねられるコナンは、笑みを浮かべながら同期生に言う。
「残念だな…僕の兄ちゃんに少し似ててさ、そんな君となら卒業まで一緒に頑張れると思ってたのに…」
「お前の兄ちゃんに?俺がか?」
「うん。」
「何言ってんだ、同い年だろ?」
「そうなんだけど…なんとなくね。」
コナンははにかみながら、席を立つと自動販売機から缶コーヒーをひとつ買ってその同期生の前に置いた。
「いつかのお礼。僕が辛かった時にくれたあの日の缶コーヒーの味は忘れてないよ。あの缶コーヒーのお陰で、僕は辞めずに居られているのかもしれないし…だから、ここを辞めても君は君の道を目指して…頑張って!」
そう言って笑顔を向けるコナンに、同期生は熱いものを感じコナンがくれた缶コーヒーを握りしめた。
「サンキュ…」
俯きながら、絞り出す様にやっと出るその声にコナンも同期生もしばらくそこを動く事は出来なかった。体格が大きくても、厳しい訓練に耐えられない生徒もいるのを目にして…警察学校というものは、こんなにも厳しい所なんだと、コナンはこの時厳しい現実に直面した。
それから、仲の良かった同期生が辞めても…悲しんでる暇はなく、翌週の月曜日には…引き続き、訓練に授業に…武術等、現場に出ても大丈夫な様にしっかりと基礎を学び応用しながら訓練は続いた。
拳銃訓練も最初は怖くて怯えていたコナンだっが、同期生が色々アドバイスをしてくれた事もあって、少しづつ上達していた。居なくなった同期生の分までしっかり頑張って絶対に卒業すると決め…コナンは今日も警察学校の中で厳しい訓練に立ち向かっている。