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✩.*˚哀とコナンと……①✩.*˚

時は流れ……私と工藤君は、兄さんや蘭さんが通っていた帝丹高校に入学した。

工藤君は高校生になって、お兄さんの所へ行く回数も減って行った。

17歳になった私達は、お互いの事を前よりももっと意識する様になり…その度に、工藤君は頬を真っ赤に染めて照れていた。

そんな工藤君が、私はもっともっと好きになって行った。

だから、私は…自分の夢への決意に、なかなか踏み込めないでいた……。

工藤君と離れてしまうかも知れないという、決意に………。





梅雨も近づきつつある、この日……私は、自分の夢への決心を胸に…工藤君を交えて、優作さんや有希子さんに会いに来た。

大事な話があると言って……。

工藤君は、不思議な面持ちでゆっくり椅子に腰掛ける。

「どうしたの?哀ちゃん……改まって……」
「はい、今日は…大事な話があって………とても、決意のいることなんですけど……」

そう言った私に向けられる、三人の視線が集中する……私は、それが居心地の悪い思いがして顔を上げ、真っ直ぐ工藤君の両親を見つめ…口を開く。

「実は、工藤君にも言ってない事なんですけど……」

隣に座っている工藤君の視線を感じながら、私は一言こう言った…。

「留学する事にしたんです!」
「えっ!?りゅ、留学!?」

私の言葉に、誰よりも先に工藤君が叫ぶ。

「何だよ、それ!聞いてないよ!!」

そう言いながら、工藤君は慌てて椅子から立ち上がった。

「だから、言ってないって言ったじゃない……」
「何だよ、何で留学なんて………」

戸惑う工藤君を他所に、私は二人に顔を向けて今の自分の意思を述べた。

「私の両親が…生前、働いていた場所が…大手の製薬会社に勤めていた事を知人を通して、博士から聞きました。だから、私もそれを引継ぎたいと思ったんです!どんな理由で亡くなったのか、今となっては知る術もないけど…私の両親のやりたかった仕事を今度は私が、その意思を引継ぎたいと思ったんです!だから、留学をしようと思ったんです!!」

私はそう、自分の気持ちを口から吐き出した。

「なるほどな、哀君の将来は薬剤師か……立派なものだな……」
「そっか~哀ちゃん、優秀だもんね!きっと大丈夫よ!」

優作さんや有希子さんが賛成してくれることに対して工藤君は……。

「何が立派だよっ!!なんで留学なんだよっ!」
「コナンちゃん…哀ちゃんの夢なのよ!それとも、あなたは哀ちゃんの夢を奪うの?」
「そんな事言ったって……僕はっ!!」

私の意見を聞きながら…悲しそうな表情で、私を見つめる工藤君を落ち着かせようと、有希子さんが口を開く。

「コナンちゃん、とりあえず落ち着いて……それで哀ちゃん、その留学ってどの位の期間なの?」
「二年………です!」
「に、二年て……そんな長い間……僕はどうすればいいんだよっ!!」
「コナンっ!たった、二年じゃないか!哀君を応援するのが、筋じゃないのか?」
「そうよ、ずっと甘えてばかりでどうするの?」

優作さんや有希子さんの説得も虚しく、工藤君は不安そうな表情をさせていた。

私は椅子から立ち上がると、工藤君に視線を向けて言った。

「一生の内の二年よ!たった二年なのよ!ずっと向こうに行ってる訳じゃないの!二年位、我慢して待っててくれたっていいじゃないっ!」
「くっ……」

私の投げられた言葉に、工藤君は何も言えないのが悔しいのか、そのままリビングを出て…自分の部屋へ行ってしまった。

私はため息を吐くと、再び椅子に座りながら言った。

「ごめんなさい……」
「何で哀ちゃんが謝るの?ごめんね、コナンちゃん……子供の頃から甘やかして育てたから、未だに子供みたいな性格で……」
「ふふっ、知ってます!」

子供の頃から、私はよく工藤宅へお邪魔していた。だから、手に取るように…この家族の事か分かっていた。

「順番、間違えたのかも知れません………初めに、工藤君に話しておくべきでした…」
「いや、コナンの場合、後にも先にも…こうなっていたかも知れん……新一ならともかくな!」
「え?」
「新一は、コナンが産まれるまで一人の時間があったしな…一人で居ることに何の違和感はなかったんだが、コナンは未熟児で産まれたせいもあって…私も有希子も新一も…コナンの事を大事に育てた…それこそ、過保護の様にな!だから、コナンは殆と言っていい程…一人という時間を味わったことがないんだ…新一が蘭君と結婚して家を出た時…凄く悲しんだと思う…だから、毎日の様に新一の家に行ってる訳だが…」

優作さんは長々と、彼の事を語ると…ふっと笑って言った。

「まあ、蘭君達にとっては…いい迷惑だがな!」
「大丈夫です!その度に、私が連れ戻しに行ってますから!」
「ははっ、そうか…」

そう言った、私の言葉に…私達はクスクス笑っていた。

「あの子は、お兄ちゃんが大好きだから…結婚した時は、喜びたくても…素直に喜べなかったんだと思う…でもね!哀ちゃんがいたから、あの子のそばに貴女がいたから、淋しい想いも少しは救われたんだと思うの…」
「それにね……あれでも、男らしい所…少しはあるのよ?」
「はい、それも分かってます!」

有希子さんと、クスクスと笑いながら目を合わせて微笑んでいた。

そして…。

「お兄ちゃんと違って、甘えん坊で色々と手は掛かると思うけど…これからも、あの子の事…宜しくねっ!哀ちゃん!!」
「はいっ!勿論です!もう、甘やかしません!」
「あらっ、大変!ふふっ…」
「はははっ…」

ひとしきり、笑った後…有希子さんはそっと立ち上がった!

「さて…あの甘えん坊さんを、呼んで来るわね!」
「あ、それは私が…やっぱり、私が事前に話しておかなきゃいけなかったんです…それに、二人だけの方が彼も話しやすいと思いますし……」

私は椅子から立ち上がりながら、そう言って…リビングの扉に手をかける。

「あ、哀ちゃん……一つだけ、聞いていい?」
「はい………」
「コナンちゃんの事、好き?」

ドキッとする質問を有希子さんに投げかけられ、私は一瞬、目を泳がせていたけど……。

次の瞬間には……。

「好きです!!」

そう、言っていた。

自分でも驚く様な、力強い言葉で。

そう言った、私の言葉に優作さんも有希子さんも安心仕切った瞳で見つめていた。

そんな二人に背を向け、私はいじけているであろう…工藤君の元へ歩を進めた。
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