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✩.*˚哀とコナンと……③✩.*˚

公務員試験に合格した工藤君をサポートする様に、私と工藤君は度々会って…図書館や工藤君の家のパソコンで色々と調べ物をしていた。

「少しランニングしておかないとね」
「え、それは入ってからでいいよ」
「ダメよ、入校してあなただけ置いてかれたらどうするの?」

そう言って、工藤君に言い聞かせながら10月の入校までランニングを勧めた。

私はと言うと、初出勤初日まで薬剤師の本を読み続けた。何となく、現場がどんな感じで働くのかは一通り勉強していたから分かっているけど…やっぱり不安。

そんな時…ふと最近の体調が気になって、トイレへ向かう私は…ある物を見て、驚いていた。

「……え。うそ…」

私は思わず声が出る。本当は、喜ばしい現実に…私の今の状況が見合ってない。工藤君だって……。

そう思って私は工藤君の家に足を運んだ。

"ピンポーン"と鳴らすチャイムに工藤君は慌てて玄関のドアを開けて迎えてくれた。

「灰原…どうしたの?こんな時間に…」

時刻は20時を回っていた。普段だったら、また明日と言ってそれぞれの家に帰ってる時間に私は訪れたのだから…それは驚くわよね。

「……」

久しぶりに工藤君の眼鏡姿を見て、少し口を空けている私に気づいたのか、工藤君は口を開く。

「あ、これ?さっきまでパソコン弄っていたから、かけっぱなしで来ちゃったんだ…」

そう言う工藤君に私は微笑み、その後"上がる?"と言って、招き入れてくれた工藤邸に私は足を踏み入れた。

「ごめんなさい、こんな時間に…ちょっと、話しておきたい事があって…」
「何かあったの?」

工藤邸の廊下を歩きながら、私は足を止める。私が止まったのを気づいた工藤君も足を止めて半分振り向いた。

「私…」

先を歩いていた工藤君は俯いたままの私にゆっくり近づく様に戻ると、私の言葉を工藤君は待つ様に、私の目の前で立ち止まった。

「妊娠……したみたいなの…」
「……え!?」

工藤君の顔を見なくても驚いているのは分かってる。まともに息が出来ない感覚に居た堪れず、私は顔を上げた。

「妊娠て…どうしよう……」

私は工藤君の言葉に絶句する。こんな状況になっても、やっぱり彼はこうなんだ……。この先の私の未来を彼に預けてもいいのか不安になり、再び私は俯いた。

「どうして?…どうしてそんな事しか言えないの?」
「いや、僕は…だって……」
「こういう時くらいちゃんと決めてよ!」
「うん…」
「分かってるの?……あなたの、子供なのよ?」

私は涙を流しながら、絞り出すように彼に訴えかけた。それでも、何も決められずただ黙っている工藤君に私はもうダメなのかも知れないと思い始めていた。

それでも、私は彼が好きだから…最後に彼に私の思いの内を話そうと顔を上げ、口を開いた。

「私はっ……」
「灰原…」

諦め半分に工藤君に向かって大きく口を開く私に、工藤君は真剣な表情になり、そっと…そして、静かに言った。

「僕と、結婚…してくれる?」

その予想外の言葉に、私は更に涙が頬を伝っていた。

そして、笑みを浮かべると…工藤君の唇に飛び込む様にキスをすると言った。

「もちろん。いいわよ!」

そう返事をした工藤君は私をぎゅっと抱き締めてくれた。

やっぱり、工藤君は工藤君だった事に安心した。このまま不安になる事を口走られていたら、私達の関係は終わっていたのかもしれない。

でも、工藤君の"結婚"の言葉に、嬉しい反面…色々な問題がやって来る事に不安が押し寄せていた。

それは、工藤君も同じ考えで…卒業したばかりの私達は、色々な人の支えがないとやっていけないのは目に見えていた。

「でもどうしよう…とりあえず兄ちゃんに!」

そう言って、近くの電話に手をかける工藤君を慌てて私は止めに入った。

「何言ってるの?こういう時はまずご両親でしょ?」
「だって、お父さんとお母さん外国に行ってるし…」

そんな時、玄関のドアが開きキャリーケースを押しながら帰宅した二人に私達は目を向けた。

「あ……」

工藤君は掛けようとした電話から手を離し、丁度帰ってきた優作さんと有希子さんの方へ目を向けた。

「どうしたの?こんな時間に、二人で……」
「何かあったのか?」
「えっと…何でもないよ」

二人の登場に焦る工藤君は、私の妊娠の事を隠そうとしている様子だと感じ、私は工藤君にちゃんと話した方がいいと思い言った。

「何でもなくないでしょ?」
「でも、一度兄ちゃんに相談してから…」

二人で口論しているのを不思議になっていた有希子さんにリビングに誘導された。

「とりあえず座りなさい」

どうしていいのか立ったままの私達に優作さんに座るように促され、私達は静かに座った。

「何か揉めていたようだが…まさかコナンが警察学校に行かないと言い出したのではないだろうな?」
「そんなんじゃ……ないよ…」

優作さんに言い放たれた言葉に、工藤君はそれだけ言うと再び黙ってしまった。大事な事だから言わなきゃいけないのに…そんな思いでいた私は口を開いた。

「落ち着いて聞いて欲しいんです。」

そう切り出す私に、工藤君は勢いよく私の方を向いた。

「実は…」

そう切り出して、最近の私の体調がおかしかった事や妊娠の事を発覚した経緯を話した。

「え、妊娠!?」

そう言って、口に手を当てながら…有希子さんの顔は綻んでいた。

優作さんは妊娠が理由で思い詰めていた私達を見て、高笑いすると言った。

「いや、すまんすまん…お前達が思い詰めた顔をしていたんでな、もっと別の理由かと思っていたんだが…妊娠か~こりゃめでたい。」
「本当に~おめでとう、哀ちゃん!」

その二人の意外な反応に私達は顔を見合わせる。もっと別の反応をされると思っていた私は驚いて二人を見ていた。すると、優作さんはそんな私達を見て、再度言った。

「そんな事で悩んでいたのか?」
「そんな事って…大事な事だし…怒られると思ってから…」
「怒るはずないじゃないか、めでたい事なんだぞ?」
「そうよ~それにしてもコナンちゃん、進路決めるのは遅かったのに、子供作るのは早かったわね~」
「ちょっとお母さん!そんな言い方しないでよ!」

有希子さんに笑いながらそんな事言われ、工藤君は顔を真っ赤にして言い返していた。

二人が喜んでくれたのを見て、私は気持ちが穏やかになって自然と笑みが零れる。やっぱり、二人に話して正解だったと、心の中で思い安堵していた。

「それでね、僕灰原と結婚しようと思うんだ。でも、警察学校の事もあるし…灰原だって9月から仕事始まるのに、体調の事とかもさ…色々大変な時に、警察学校行ってる場合じゃない気がして…」
「何言ってるのよ、私の事は大丈夫。心配しないで行ってきて!」
「そうよ、なんなら私がしっかりサポートするし…大丈夫よ。」
「でもさ…」
「まあ、お前は子供を作ってしまった責任を感じているかも知れないが…男には何も出来ん。それよりも、無事に警察官になってくれた方が…嬉しいと思うがな。」

私の妊娠が発覚して、心配してくれてる工藤君の気持ちは充分に理解している。だけど、警察学校に行くのを止める事はして欲しくなかった。その点、有希子さんの言葉が私の不安を消し去ってくれていた。




私が出産するまでは、有希子さんはこっちで面倒見てくれると言ってくれ、優作さんもそれに同意した。その言葉が私にはとても頼もしかったから、私も甘える事にしたの。

「しかし、コナンには驚かされてばかりだな。」
「何で?」
「警察官になると言ったと思ったら、今度は妊娠に結婚。母さんの時よりも早いんじゃないか?なあ、有希子」
「本当よね~あんなにちっちゃくて甘ったれだったコナンちゃんがパパになるなんてね~」
「そんなにからかわないでよ」
「からかってなんかいないさ、お前も父親になるんだ。しっかり警察学校を卒業しないとな!」
「うん!僕頑張るよ!」

そう言った彼の力強い言葉に、私は嬉しくなった。彼なりに、父親になる事の重みを感じているのかな?と、何度もうじうじしていた彼が…初めて前を向いてる様な気がして……私はそれだけでも嬉しかった。

「それで?結婚はいつするの?」
「それは、二人で話し合ってから…決まったら報告するよ」

そう言って、工藤君のご両親から軽くなじられながらも、とりあえず報告出来た事に私達は安堵した。
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