✩.*˚哀とコナンと……③✩.*˚
そして、試験当日…俺はコナンの事が気になって、工藤邸に訪れると、中からガタガタと騒がしい声が聞こえてきた。
「どうしよう、お母さん!」
「大丈夫よ、落ち着いて行ってきなさい!」
スーツに身を包んだコナンは母さんに肩をぽんと叩かれながら、試験に行く準備をしていた。
俺が顔を覗き込むと、コナンは俺に気付いて駆け寄ってきた。
「兄ちゃん!」
「今日だったな、試験…気になって様子見に来たんだが…って、大丈夫か?」
コナンの顔を見ると、不安な表情しか無く思わず笑ってしまう様な表情がそこにはあった。
「大丈夫だよ、今日は面接ねーし…しっかりやってこいよ、な?」
「うん…」
不安な面持ちながらも試験に向かうコナンの背を見つめて俺は見送った。
「お腹痛いって言って、泣きそうだったのよ、コナンちゃん…」
「え?」
「緊張し過ぎなのよね~」
そう言って母さんは俺に教えてくれた。コナンは昔から緊張し過ぎるとお腹痛いって言う事あったのを知ってる俺は、少し心配していた。
だが……。
「コナンももう大人だ…きっと大丈夫さ」
「そうね~」
本当は、父さんか阿笠博士が車で試験会場まで送っていくと言っていたんだが、自分で行くと言っていたコナンに、少し期待している。
何とか試験会場へ向けて歩き出したコナンの背中を目で追いながら…着実に夢に向かっているコナンの背中にそっと声をかけた。
「頑張れ」
その日、試験を終えたコナンの話を聞いてるとあまり自信ないけど、多分出来たと思うと曖昧な出来栄えを話していた。
「でも、僕覚えるのは得意だから…」
そう言って、安心させられた部分もあり、二次試験に進めればとこの時は思っていたが、二次試験の案内が来た時にはコナンは嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。
二次試験の面接が特に心配だったコナンは、灰原さんにその日まで毎日の様に特訓されていた。特訓されながらも、少しづつ身についていくコナンは自信もついて行ってるようだった。
「ありがとう、灰原。」
「練習した様にすれば大丈夫だから…頑張って」
「うん。」
そんなやり取りをしながら、送り出す灰原さんにコナンは笑顔を返していた。この二次試験が運命を決める。何せ、筆記試験より面接試験の方が重要だと言われているらしいから。
緊張し過ぎなコナンに、大丈夫かと不安な面持ちで見送っていると灰原さんに忠告される。
「大丈夫ですよ、お兄さんまでそんなに心配していると受かるものも受からないわよ」
「え、ああ…」
それだけ言うと、灰原さんは俺に背を向けて帰っていった。
落ち着いて自分の意志を伝える事が出来れば大丈夫だろうと、俺はコナンを思い心配しない様にいったん帰宅して待つことにした。
「お帰り。」
「ああ、ただいま」
「鈴、今寝た所なの…」
「そっか、日に日に大きくなってるな」
「成長早いわよね…」
そう言う蘭の言葉に俺はたった今眠った鈴を見て、笑みを浮かべた。
「コナン君、きっと大丈夫よ」
俺の心の中を見透かしているのか、蘭はそう声をかけてきた。
「心配しないで、帰り待っていよう?受けるのはコナン君なんだから…私達が心配しても、仕方ないわよ…」
「そうなんだけどな…」
「それに、コナン君の試験だからって依頼断っちゃって…コナン君がそれ知ったら、僕のせいだって言われちゃうよ?」
「いや、だけど…仕事になんねーつーか…」
蘭の言葉一つ一つに、的をえてる事に俺は言葉を失う。分かってはいても、コナンの事が心配なのは消えない。だけど、上手くやってくれる事を願っていた。
試験から帰ってきたコナンはため息を吐いていた。上手く出来なかったと話していたが、まだ落ちたなんて決まってはいない。まだ諦めるのは早いと慰めるが、顔を上げることはなかった。
「落ちたらごめん、灰原…」
そんな事を言うコナンに、灰原さんは呆れながらコナンに言い返していた。
「まだ合否の通知来てないのに、変な事言わないでくれる?通知が来てからにしてよ、そういうのは」
「だって、上手く答えられなかったんだ、僕…」
「まだ分からない!合格発表まで待ってなさい」
そう言って、コナンに厳しく諭していた。コナンは灰原さんの言葉で口を噤むと、黙って頷いていた。
「大丈夫だ、コナン…とりあえず今日はゆっくり休め…色々緊張して来たんだ、疲れただろ?」
そう言って俺はコナンを部屋に促した。今日は父さんや母さんも仕事で居ない。明日には一度日本に帰ってくるらしいが、こんな状態のコナンを一人にさせられず…俺は灰原さんにコナンを任せ帰宅した。
二次試験がダメだったと諦めていたコナンに、気晴らしに教習所に行ってきなさいと、父さんはコナンに言う。
「何で?」
「落ち込んでるよりも、次のステップに行かないとな…」
そう言う父さんにコナンは不思議に思っていたが、勝手に手続きをされてしまったコナンは泣く泣く通っていた。
合否通知が来るまでの間、コナンにとって教習所が何かと気晴らしになってる様で、最初は気が乗らない様子ではいたが、今では楽しく通っていた。
そして、教習所を卒業したこの日、二次試験の合否通知が届く日でもあって、コナンは嬉しい反面気が気でない状況に陥り、逐一ポストを覗いていた。
そんな時、俺はコナンの様子を見に工藤宅へ来た。
「コナン!」
「兄ちゃん!」
「どうだった?通知もう来ただろ?」
「うん、教習所は卒業したんだけど…二次試験の通知来ないんだ…やっぱり、落ちたのかな?」
そう話すコナンに俺は不思議になっていた。もうとっくに来ていても不思議はない。だが、何故か来てない合否通知に、俺もポストを覗いた。
「おかしいな~」
「落ちたから来ないのかな?」
「いや、絶対来るはずなんだ。例え、不採用だとしてもな。」
「あ……うん。」
まずい事を口走ってしまったと思った俺は、コナンの肩を叩くと言った。
「ちょっと、郵便局に行って確かめてくる!お前はここで待ってろ!」
「え、兄ちゃん!」
俺はコナンにそう伝え、走り出した。コナンが不安になっている時こそ、兄貴の出番だと思い俺は足を早めた。郵便局が向かってるにしても、配達に時間がかかってるにしろ…俺は確かめるしかないと思い、郵便局員に問いただした。
「ああ、すいません。何故か紛れ込んでしまっていて…」
そう言って申し訳ありませんと頭を下げる郵便局員からそれを受け取った。印鑑を押し、分厚いそれを握り締め待っているだろうコナンの元へ走る。
「コナン!」
俺はそう叫び、コナンが居るところまで走った。息を切らしながら、先程受け取ったばかりの書類をコナンに渡す。
俺は、中身が何かは開けるまでもなく分かっていた。笑みを浮かべながら俺はコナンに渡した。
「ほら、合否通知だ!」
「ありがとう…取ってきてくれたの?」
「いいから、開けてみろ」
そう促す俺の前で緊張しながらゆっくり開けていくコナン。中身を恐る恐る出しながら、その文字に大きく目を開きながら驚いていた。
「兄ちゃん…」
「おめでとう、コナン!」
"合格通知"の言葉に、コナンは信じられない思いで俺を見つめる。涙を我慢してる様にも見え、俺はコナンの頭を叩いて言った。
「こういう時は、我慢しなくてもいいんだぞ」
「兄ちゃん…僕、僕……うっ、ううっ……受かってよかった…」
合格通知を顔に押し付けながら、コナンは涙をぽつりぽつりと流していた。必死に頑張っていたコナン。周りの皆も、コナンの事を心配し合格できる様に願っていた。そんな思いが通じたこの結果に、俺もコナンもやっと安心できるのだった。
その後、心配していた皆に合格した事を知らせてやると凄く喜んでくれていた。その夜、俺と蘭はコナンを交えた久しぶりの食事をしていた。
「灰原に言ったら、当然でしょ?って言うんだよ、酷いよ僕がこんなに心配してたって言うのにさ!」
「哀ちゃんだって、心配していたと思うよ?」
「面接手伝ってくれたのは助かったけどさ、もう少し優しくしてくれっていいのに…」
「まあまあ、灰原さんは感情を表に出さないタイプだからな、あれでも喜んでるんだよ…」
「うーん」
コナンをそう宥める俺達は、すっかり心配事が無くなったコナンがよく喋る様になった事で安堵していた。
その後、鈴を抱きながら笑うコナンに"お前も早く子供作れよ"と言うと、真っ赤な顔して否定していた。
「哀ちゃんと仲良くね」
そう言って、コナンに声を掛ける蘭の言葉にコナンが一瞬止まった気がして不思議に思うが、その後"うん"と返事していたのを聞いて、いつもの照れかな?と思っていた。
そして、後日、コナンは無事に合格し運転免許を取得した。それを父さんに報告すると、得意気に電話口で話す父さんの声が聞こえてきた。
「そうか…受かったか。これで、警察官になっても役立つぞ!」
「え、何で?」
「警察官になったら、どの課に進んでも問題無いように…取っておくように勧めたんだ。」
「え?そうだったの?」
「ん?言ってなかったか?」
「聞いてないよ~僕…」
「まあ、いいじゃないか…いい気晴らしにはなっただろう」
「うん…」
きっと父さんはあえて言わなかったんだろうと、俺は思い…同時に、コナンが受かると信じて勧めたんだと俺は思っていた。静かにおめでとうと父さんはコナンに投げかけていたようで、コナンは嬉しそうにそれに答えていた。
「まったく、父さんは…」
電話を切った後、俺はコナンから灰原さんのご両親が生前勤めていた製薬会社に採用された事を聞く。
灰原さんは皆より一足早く夢を叶えたんだと思い、笑みを浮かべた。そして、10月からコナンは警察学校だ。どうなるか分からないが、途中で辞めることが無いように願うばかりだ。その時は精一杯止めるつもりだが…。
「じゃあね、兄ちゃん!」
「え?帰るのか?」
「うん!僕、警察学校の事少し調べて予習して置きたいから、今日は家に帰るよ!」
「そっか、気をつけてな!」
「うん!」
コナンは足早に家に帰っていった。鈴を寝かしつけて戻ってきた蘭にコナンが帰った事を話すと、感心していた。
「コナン君、あれだけ心配していたのに……やっぱり、嬉しいのね。警察学校は厳しいって聞くけど、今のコナン君なら大丈夫だって思ってるよ。」
「灰原さんと離れるのが心配で決め兼ねて泣いてた頃が懐かしいぜ」
「そうね…」
帰っていったコナンの事を笑いながら話し、二人きりの時間を過ごしていた俺と蘭は…このまま何事も無く、コナンは警察学校に行くと思っていた事に…後日聞かされた衝撃的な報告に驚かされる事になる。
「どうしよう、お母さん!」
「大丈夫よ、落ち着いて行ってきなさい!」
スーツに身を包んだコナンは母さんに肩をぽんと叩かれながら、試験に行く準備をしていた。
俺が顔を覗き込むと、コナンは俺に気付いて駆け寄ってきた。
「兄ちゃん!」
「今日だったな、試験…気になって様子見に来たんだが…って、大丈夫か?」
コナンの顔を見ると、不安な表情しか無く思わず笑ってしまう様な表情がそこにはあった。
「大丈夫だよ、今日は面接ねーし…しっかりやってこいよ、な?」
「うん…」
不安な面持ちながらも試験に向かうコナンの背を見つめて俺は見送った。
「お腹痛いって言って、泣きそうだったのよ、コナンちゃん…」
「え?」
「緊張し過ぎなのよね~」
そう言って母さんは俺に教えてくれた。コナンは昔から緊張し過ぎるとお腹痛いって言う事あったのを知ってる俺は、少し心配していた。
だが……。
「コナンももう大人だ…きっと大丈夫さ」
「そうね~」
本当は、父さんか阿笠博士が車で試験会場まで送っていくと言っていたんだが、自分で行くと言っていたコナンに、少し期待している。
何とか試験会場へ向けて歩き出したコナンの背中を目で追いながら…着実に夢に向かっているコナンの背中にそっと声をかけた。
「頑張れ」
その日、試験を終えたコナンの話を聞いてるとあまり自信ないけど、多分出来たと思うと曖昧な出来栄えを話していた。
「でも、僕覚えるのは得意だから…」
そう言って、安心させられた部分もあり、二次試験に進めればとこの時は思っていたが、二次試験の案内が来た時にはコナンは嬉しそうに満面の笑みを浮かべていた。
二次試験の面接が特に心配だったコナンは、灰原さんにその日まで毎日の様に特訓されていた。特訓されながらも、少しづつ身についていくコナンは自信もついて行ってるようだった。
「ありがとう、灰原。」
「練習した様にすれば大丈夫だから…頑張って」
「うん。」
そんなやり取りをしながら、送り出す灰原さんにコナンは笑顔を返していた。この二次試験が運命を決める。何せ、筆記試験より面接試験の方が重要だと言われているらしいから。
緊張し過ぎなコナンに、大丈夫かと不安な面持ちで見送っていると灰原さんに忠告される。
「大丈夫ですよ、お兄さんまでそんなに心配していると受かるものも受からないわよ」
「え、ああ…」
それだけ言うと、灰原さんは俺に背を向けて帰っていった。
落ち着いて自分の意志を伝える事が出来れば大丈夫だろうと、俺はコナンを思い心配しない様にいったん帰宅して待つことにした。
「お帰り。」
「ああ、ただいま」
「鈴、今寝た所なの…」
「そっか、日に日に大きくなってるな」
「成長早いわよね…」
そう言う蘭の言葉に俺はたった今眠った鈴を見て、笑みを浮かべた。
「コナン君、きっと大丈夫よ」
俺の心の中を見透かしているのか、蘭はそう声をかけてきた。
「心配しないで、帰り待っていよう?受けるのはコナン君なんだから…私達が心配しても、仕方ないわよ…」
「そうなんだけどな…」
「それに、コナン君の試験だからって依頼断っちゃって…コナン君がそれ知ったら、僕のせいだって言われちゃうよ?」
「いや、だけど…仕事になんねーつーか…」
蘭の言葉一つ一つに、的をえてる事に俺は言葉を失う。分かってはいても、コナンの事が心配なのは消えない。だけど、上手くやってくれる事を願っていた。
試験から帰ってきたコナンはため息を吐いていた。上手く出来なかったと話していたが、まだ落ちたなんて決まってはいない。まだ諦めるのは早いと慰めるが、顔を上げることはなかった。
「落ちたらごめん、灰原…」
そんな事を言うコナンに、灰原さんは呆れながらコナンに言い返していた。
「まだ合否の通知来てないのに、変な事言わないでくれる?通知が来てからにしてよ、そういうのは」
「だって、上手く答えられなかったんだ、僕…」
「まだ分からない!合格発表まで待ってなさい」
そう言って、コナンに厳しく諭していた。コナンは灰原さんの言葉で口を噤むと、黙って頷いていた。
「大丈夫だ、コナン…とりあえず今日はゆっくり休め…色々緊張して来たんだ、疲れただろ?」
そう言って俺はコナンを部屋に促した。今日は父さんや母さんも仕事で居ない。明日には一度日本に帰ってくるらしいが、こんな状態のコナンを一人にさせられず…俺は灰原さんにコナンを任せ帰宅した。
二次試験がダメだったと諦めていたコナンに、気晴らしに教習所に行ってきなさいと、父さんはコナンに言う。
「何で?」
「落ち込んでるよりも、次のステップに行かないとな…」
そう言う父さんにコナンは不思議に思っていたが、勝手に手続きをされてしまったコナンは泣く泣く通っていた。
合否通知が来るまでの間、コナンにとって教習所が何かと気晴らしになってる様で、最初は気が乗らない様子ではいたが、今では楽しく通っていた。
そして、教習所を卒業したこの日、二次試験の合否通知が届く日でもあって、コナンは嬉しい反面気が気でない状況に陥り、逐一ポストを覗いていた。
そんな時、俺はコナンの様子を見に工藤宅へ来た。
「コナン!」
「兄ちゃん!」
「どうだった?通知もう来ただろ?」
「うん、教習所は卒業したんだけど…二次試験の通知来ないんだ…やっぱり、落ちたのかな?」
そう話すコナンに俺は不思議になっていた。もうとっくに来ていても不思議はない。だが、何故か来てない合否通知に、俺もポストを覗いた。
「おかしいな~」
「落ちたから来ないのかな?」
「いや、絶対来るはずなんだ。例え、不採用だとしてもな。」
「あ……うん。」
まずい事を口走ってしまったと思った俺は、コナンの肩を叩くと言った。
「ちょっと、郵便局に行って確かめてくる!お前はここで待ってろ!」
「え、兄ちゃん!」
俺はコナンにそう伝え、走り出した。コナンが不安になっている時こそ、兄貴の出番だと思い俺は足を早めた。郵便局が向かってるにしても、配達に時間がかかってるにしろ…俺は確かめるしかないと思い、郵便局員に問いただした。
「ああ、すいません。何故か紛れ込んでしまっていて…」
そう言って申し訳ありませんと頭を下げる郵便局員からそれを受け取った。印鑑を押し、分厚いそれを握り締め待っているだろうコナンの元へ走る。
「コナン!」
俺はそう叫び、コナンが居るところまで走った。息を切らしながら、先程受け取ったばかりの書類をコナンに渡す。
俺は、中身が何かは開けるまでもなく分かっていた。笑みを浮かべながら俺はコナンに渡した。
「ほら、合否通知だ!」
「ありがとう…取ってきてくれたの?」
「いいから、開けてみろ」
そう促す俺の前で緊張しながらゆっくり開けていくコナン。中身を恐る恐る出しながら、その文字に大きく目を開きながら驚いていた。
「兄ちゃん…」
「おめでとう、コナン!」
"合格通知"の言葉に、コナンは信じられない思いで俺を見つめる。涙を我慢してる様にも見え、俺はコナンの頭を叩いて言った。
「こういう時は、我慢しなくてもいいんだぞ」
「兄ちゃん…僕、僕……うっ、ううっ……受かってよかった…」
合格通知を顔に押し付けながら、コナンは涙をぽつりぽつりと流していた。必死に頑張っていたコナン。周りの皆も、コナンの事を心配し合格できる様に願っていた。そんな思いが通じたこの結果に、俺もコナンもやっと安心できるのだった。
その後、心配していた皆に合格した事を知らせてやると凄く喜んでくれていた。その夜、俺と蘭はコナンを交えた久しぶりの食事をしていた。
「灰原に言ったら、当然でしょ?って言うんだよ、酷いよ僕がこんなに心配してたって言うのにさ!」
「哀ちゃんだって、心配していたと思うよ?」
「面接手伝ってくれたのは助かったけどさ、もう少し優しくしてくれっていいのに…」
「まあまあ、灰原さんは感情を表に出さないタイプだからな、あれでも喜んでるんだよ…」
「うーん」
コナンをそう宥める俺達は、すっかり心配事が無くなったコナンがよく喋る様になった事で安堵していた。
その後、鈴を抱きながら笑うコナンに"お前も早く子供作れよ"と言うと、真っ赤な顔して否定していた。
「哀ちゃんと仲良くね」
そう言って、コナンに声を掛ける蘭の言葉にコナンが一瞬止まった気がして不思議に思うが、その後"うん"と返事していたのを聞いて、いつもの照れかな?と思っていた。
そして、後日、コナンは無事に合格し運転免許を取得した。それを父さんに報告すると、得意気に電話口で話す父さんの声が聞こえてきた。
「そうか…受かったか。これで、警察官になっても役立つぞ!」
「え、何で?」
「警察官になったら、どの課に進んでも問題無いように…取っておくように勧めたんだ。」
「え?そうだったの?」
「ん?言ってなかったか?」
「聞いてないよ~僕…」
「まあ、いいじゃないか…いい気晴らしにはなっただろう」
「うん…」
きっと父さんはあえて言わなかったんだろうと、俺は思い…同時に、コナンが受かると信じて勧めたんだと俺は思っていた。静かにおめでとうと父さんはコナンに投げかけていたようで、コナンは嬉しそうにそれに答えていた。
「まったく、父さんは…」
電話を切った後、俺はコナンから灰原さんのご両親が生前勤めていた製薬会社に採用された事を聞く。
灰原さんは皆より一足早く夢を叶えたんだと思い、笑みを浮かべた。そして、10月からコナンは警察学校だ。どうなるか分からないが、途中で辞めることが無いように願うばかりだ。その時は精一杯止めるつもりだが…。
「じゃあね、兄ちゃん!」
「え?帰るのか?」
「うん!僕、警察学校の事少し調べて予習して置きたいから、今日は家に帰るよ!」
「そっか、気をつけてな!」
「うん!」
コナンは足早に家に帰っていった。鈴を寝かしつけて戻ってきた蘭にコナンが帰った事を話すと、感心していた。
「コナン君、あれだけ心配していたのに……やっぱり、嬉しいのね。警察学校は厳しいって聞くけど、今のコナン君なら大丈夫だって思ってるよ。」
「灰原さんと離れるのが心配で決め兼ねて泣いてた頃が懐かしいぜ」
「そうね…」
帰っていったコナンの事を笑いながら話し、二人きりの時間を過ごしていた俺と蘭は…このまま何事も無く、コナンは警察学校に行くと思っていた事に…後日聞かされた衝撃的な報告に驚かされる事になる。