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✩.*˚哀とコナンと……③✩.*˚

そして、三月に入る頃…蘭が重そうなお腹で、一生懸命家事をしている様子を見て、俺は時々手伝おうとしていたんだが…。

蘭は必ず大丈夫。そう言って、一人で家事をこなしていた。

「もうすぐだね、コナン君の卒業式…」
「え、ああ…そうだな」

俺は蘭にそう話を振られ、高校生になっても色々あったコナンの事を思い出しながら時の流れの早さを感じていた。

「産まれるのはコナンが卒業した後になりそうだな」
「そうね…早く産まれたくてうずうずしてるみたい。コナン君の言う通り、男の子かな?」

そう言って、蘭のお腹の中の胎動を感じながら、以前コナンが男の子と言ったことを思い出していた。

「でも、卒業式に行くのは少し難しそうね…」
「そうだな。でもコナンも分かってくれるさ…」
「本当は、行ってあげたいんだけど…」

そう言って残念がる蘭を見て、卒業式の事はコナンに伝えておくと話すと、何も言わず笑っていた。



そして、卒業式当日。

色々あったコナンの高校生活についに卒業式を迎えた。父さんと母さんは何とか都合つけ、博士も一緒に卒業式に出席した。

「二人とも卒業式に参列できて良かったわい」
「博士も、今日はありがとうございました」
「コナンの事、いつもすいません…」
「いやいや…」

俺や父さんと母さん博士が集まる中で、元太くん光彦君、歩美ちゃんのご両親と顔を合わせ挨拶をしていた。

そんな時、コナンは同級生と一緒に俺達の所へ掛けてきた。

「お父さん、お母さん、兄ちゃん!博士!卒業出来たよ!」

もう少しで留年する所だったと言わんばかりの言い方をして、コナンは俺達に卒業証書を広げてみせた。

「たくっ…卒業出来て当然なんだよ」

俺はコナンにそう言うと、頭を掻きながら照れていた。そんな相変わらずのコナンに、一同の笑い声が響いていた。

「高校でも色々あったね…ね、コナン君?」
「え、うん…」
「相変わらず灰原に怒られていたしな!」
「入学した時は五人で卒業するかと思いましたけど、灰原さんが留学するなんてびっくりしましたよ!」
「灰原さんの卒業式はいつなの?」
「五月だって…」
「そっか、じゃあ五月の卒業式を迎えたら帰って来れるんですね!」
「よかったな、コナン!」
「う、うん。」

同級生の会話を聞きながら、灰原さんの帰りが待ち遠しそうにしてるコナンに"卒業おめでとう"と声を掛けてやると、恥ずかしそうにしていたが満面の笑みを浮かべて"ありがとう"と言っていたことに俺達家族は安堵していた。

本当は灰原さんを混ぜて卒業したかった気持ちは大きいと思うが、コナンは灰原さんが留学する時、帰ってくるまで待っていると約束し送り出していた。その約束を守る様に、灰原さんとこの学校で卒業する事は我慢している様子だった。




いっとき、灰原さんの留学の事で大喧嘩して俺の所に来た事もあったが、今では灰原さんの帰国を心待ちにしている様だった。

そして、俺達は四人の卒業生と一緒に記念撮影をする事にした。色々あった三年間の終止符を打って、よく晴れたこの日…コナンは無事に帝丹高校を卒業した。


そして、その足で卒業式に来れなかった蘭に報告しに行くと言って聞かないコナンと同級生を引き連れて家に帰宅した。

「蘭ねーちゃん!卒業したよ」
「あらいらっしゃい、よかったわね~おめでとう。」

そう言って、蘭はコナンに見せつけられた卒業証書を手に取り喜んでいた。卒業しても、子供の頃についた何でも見せたがる癖は変わらないんだなと俺は一人思っていた。

「ごめんね~出席出来なくて…私もしたかったんだけど…」
「いいよ、だって赤ちゃんもうすぐ産まれるんだもん」
「後どのくらいなんですか?」
「うーん、どうだろう?もう少しで産まれるかもしれないんだけど…」

そう話す蘭は、ふと思いコナンに聞く。

「そういえばコナン君、卒業式で泣かなかったのね?」
「え!?泣かないよ」

蘭は泣き跡のないコナンの顔を見るなり思ったのだろう。クスッと笑ってコナンに尋ねると、コナンはムキになって答えていた。

この間蘭に言われたのを気にして泣かずに居たのかは分からないが、コナンが泣くと思っていた俺は正直驚いていた。

そんなコナンの照れ隠しに同級生達はコナンと蘭の話に突っ込んでいた。

「珍しく泣いてないぜ」
「なんだよ、珍しくって…」
「だって~コナン君は泣き虫だから…ね?」
「灰原さんにいつも言われてましたし」

そんな風にからかわれるコナンだったが、歩美ちゃんは目頭を軽く拭うとぽつりと言う。

「でもね、歩美は…ちょっと、うるっと来ちゃった…皆と過ごした三年間、とっても楽しかったもん…何だか、寂しいね…」
「歩美ちゃん…」
「これからも、友達ですよ!歩美ちゃん!」
「うん!そうだね…」

瞳を潤ませながら笑みを浮かべる歩美ちゃんの笑顔が皆の瞳にも涙を誘っていた。

「なんだよ、光彦…」
「元太くんだって…」

同級生と少し離れた所で涙を拭うコナンに近寄り、頭を撫でて言った。

「おめでとう、コナン…」
「うん…」

あんなに小さかったコナンが高校を卒業し、警察官を目指すだなんて…コナンが小学一年生だったあの頃には想像すら付かなかった。

俺も蘭もこいつらが小さい時から見てきたから余計に今日の卒業式が自分の事のように嬉しくなっていた。

そして、歩美ちゃんはコナン達に気付かれないように蘭に近寄って何やら話してる様子だった。



「蘭お姉さん…」
「何?」
「私ね、実はコナン君の事好きだったんだよ」
「え、そうなの?」
「うん。でも、コナン君気づいてないから…コナン君の目には哀ちゃんしか見えてないの。だから、これはここだけの内緒の話。」

歩美は蘭に向けて唇の前に人差し指を立てて、何か吹っ切れた様子でニコニコしていた。



俺は少し離れた所でその様子をちらっと見ていたが、どんな話をしていたのかは分からなかった。後で蘭に聞いてみたものの、女同士の秘密と言って教えてはくれなかった。

そして、歩美ちゃんは元太くん達の所へ戻ると後ろで手を組んで話しかけた。

「哀ちゃんが帰ってきたら、絶対また集まろうね!」
「そうですね~」
「灰原混ぜて、卒業パーティーだなあ!」

嬉しそうに話す元太くん達を見て、俺は思った。こいつらがコナンの傍で灰原さんが居なくなった心の隙間を埋めてくれたんだなと。

俺と蘭が見守る中で、コナンや元太くん光彦君、歩美ちゃんは卒業したこの日、これからも一生友達だと笑いながら話していた。




時には喧嘩する事もあるだろう、だけど…この関係が失われる事なく続いていけばと、俺は笑い合ってる同級生を見て、願っていた。
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