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✩.*˚哀とコナンと……③✩.*˚

灰原さんがアメリカに帰ってから、コナンや同級生達は毎日の様に集まって博士の家で勉強する日々が続いていた。

時よりコナンは俺と蘭の住む家に来て、色々と報告しにやって来ていた。灰原さんともあれからお互い頻繁にメールのやり取りをしている様で…学校や勉強に忙しい中、充実しているみたいだ。

そして、あっという間に月日が流れ…年明けも近づく頃、父さんと母さんと俺と蘭とコナンの五人は、工藤家へ集まっていた。

「こうやって、集まるのも久しぶりね」
「しょーがねーだろ、母さん達忙しくて日本にあまりいねーんだからよ」
「まあ、そう言うな…今年も一段落着いたんでな、こうして帰ってきたんじゃないか。」
「今年って…今日で終わるじゃねーか」
「いいじゃない、新一…」
「とりあえず、乾杯しましょ」

俺と父さんのやり取りを見兼ねて、母さんのグラスをもつ合図に、皆で乾杯し食事は始まった。

「所で…勉強の方はどうだ?」

食事をしながら父さんはコナンの事が気になってるんだろう。そう問いかけ、最近の様子を聞いていた。

「んー、ぼちぼち」

そう簡潔に答えるコナンに一同は唖然。

「もう少しちゃんと話せよ、コナン!」
「ちゃんとって言っても、本当にぼちぼちなんだもん」
「まあ、元太君達と皆で勉強してるみたいだし、大丈夫だと思うぜ?この間のテスト見せてもらったけど、結構いい点数取ってたし…な?」
「うん!」

代わりに俺がコナンの日頃の事を教えてやると、二人とも安心してる様だった。

「新一も勉強教えてあげてるみたいで、コナン君結構頑張ってるんですよ」
「そう…なんだぁ~新ちゃんもちゃんとお兄ちゃんやってるのね~」

そう蘭が付け加えると、母さんは嬉しそうに喜んでいた。最近は父さんの仕事が忙しく、めっきり日本に帰って来れなくなった二人。仕事の合間に連絡はくれるけど、やっぱり離れて暮らしてる事に気がかりで、二人の息子の事は遠く離れて暮らしてる事もあって心配なのだろう。

「そういえば蘭ねーちゃん、そろそろだよね?赤ちゃん!」
「うん、春前には産まれるかもしれないわね…」
「何故かコナンが1番楽しみにしてるんだよな」
「あらそうなの?」
「だって…」

そう言われて食事を頬張りながら照れくさそうにしていた。

「楽しみね」

そう母さんが声掛けると、コナンは元気よく返事をしていた。

「うん!」
「たくっ、お前の子供じゃねーだろうが!」

元気よく返事を返していた弟に、俺は笑いながら頭を小突くと口を尖らせていた。


そして……。

お寺の鐘が鳴り響くのを聞いて年が明けたのだと気付かされた。今年はどんな年になるのか、そして俺と蘭の間には新しい命が産まれてくる事に期待しつつ、いつもの年明けよりわくわくしていた。

「「明けましておめでとう」」

その挨拶を今年も言えた事に安堵し……そして、その言葉と共に…胸に込める新しい年の期待と共に、一年の始まりがスタートしたのだった。




新学期がスタートし、正月の騒がしさも落ち着き始めた頃、コナンは家にやって来た。

「兄ちゃん…」

また何かあったのかな?と、コナンの困っ顔をみて俺は家に招いた。

「どうしたの?」

蘭がコナンの座るテーブルの前にコーヒーを差し出した。

「ありがとう、蘭ねーちゃん…」
「何かあったのか?」

そう言って、コナンの悩みを聞き出して俺は笑いだした。

"新一っ!"と、蘭に怒られる俺だったが訳を聞いたら、受からなかったらどうしようと言う悩みだった。

「お前の成績なら大丈夫だよ!」
「でも……」

年が明けて、試験の日が着々と近づくにつれ…コナンはプレッシャーに押し潰されている様だった。コナンの成績を見ていた俺は、何も不安がなかった為に泣きそうな弟の悩みに笑いが込み上げてしまったのだった。

「何でそんなに心配なんだよ」
「だって、落ちたら灰原がっかりするし皆にだってまた心配かけると思うし…僕、自信なくてさ」
「担任の先生だって、大丈夫だって言ってたじゃねーか。お前先生の話ちゃんと聞いてたか?」
「うん…でも……」

子供の頃から心配し過ぎる事もあったが、きっと今はどんなに大丈夫だと思っても無理なんだろうなと思う。俺にすれば、試験よりその後の訓練の方がもっと大変だと思ってるのだが。

「まったく、心配し過ぎなんだよ…バッカだなあ~」

と、余計な心配しすぎて落ち込む弟を目の前にして笑う俺にコナンは泣き出してしまった。

「うっ…」
「コナン君!……新一~?」
「あ、悪い」

泣き出してしまったコナンに駆け寄り肩を擦る蘭に、俺は睨まれてしまった。

「ごめんな、コナン…」
「僕、兄ちゃんみたいに自信なんて持てないんだもん。勉強しながら、落ちたらって思うと…怖くなって、眠れなくなる事もあって…」
「コナン君……」

そんなコナンを目の前にして、余計な心配だと思っている俺だが、コナンにとっては勉強の狭間にプレッシャーという恐怖に押しつぶされている様子だった。

「あんまり考え込むと熱が出るぞ?」

そういう俺に俯いたままのコナン。見兼ねた蘭はコナンに諭す様に話していた。

「ねえ、コナン君…私は、今のコナン君の成績なら大丈夫だと思うよ?」
「え!?」

そう言われたコナンはゆっくり顔を上げて蘭を見る。

「だって、コナン君がちゃんと勉強してるの私知ってるもん。皆別々の夢だけど、一緒に頑張って留学から帰ってきた哀ちゃんに、ちゃんと見せてあげなきゃ…」
「うん…」
「それに、もう泣いちゃだめ。コナン君は警察官になるんだから、今度はコナン君が泣いてる子を救ってあげなきゃ…」
「うん!」

母親の自覚を持つと女性は逞しくなるという事もあって…蘭は今までよりもコナンを力強い言葉で慰めていた。

そんな蘭の言葉に、コナンは涙を拭うとしっかりと返事をしていた。

こんなコナンが警察官になるなんて、俺にはまだ想像出来ないけど…いつかコナンにも、ケジメを付ける時が訪れればいいのだが…そんな思いで、俺は弟を見てとにかく今は勉強を進める事だけを集中する様に促した。

「とりあえず、試験の事は考えるな!数ヶ月先の試験を考える度に不安になってたら、コナンの身が持たなくなるからな」
「うん、わかったよ」

そう納得したコナンを見て、俺達が居なかったらコナンはどうなっていたんだと思うと恐ろしくなる。

そんなコナンの背中を押し、コナンが不安になる度に俺達はコナンの心の悩みを解きほどいていっていた。

解決はしなくとも、少しづつでもコナンの押しつぶされる不安が解きほぐされていけばと、俺はそう思い…それからも、時々コナンの勉強を見てやっていた。
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