✩.*˚哀とコナンと……③✩.*˚
そして、その後……一年ぶりに工藤君の部屋へ通され、私達は久しぶりにやっと二人きりの時間になった。
「久しぶりね、この部屋」
「ああ…もう一年なんだ…灰原が留学してから」
そう言って、工藤君はベットの上に腰掛けた。私もその隣にちょこんと座る。
「一年前、貴方が泣くから…私の留学の事説得するの大変だったのよね…」
「別に泣いてなんか…」
「本当に!?」
「……」
そう言って、工藤君の顔を見ると黙っていた。図星を突かれそれ以上何も言えないでいる彼に、私は続けた。
「でも、それだけ私の事を想ってくれてたって事なんでしょ?でも工藤君…貴方はまだいい方じゃない。私は家どころか、日本にもなかなか帰れないんだから。」
「そんなに大変なの?」
「当たり前じゃない。先生は厳しいし、勉強は頑張らなきゃ行けないし…それに、貴方にも会えないんだから。」
私がそう言うとドキッとして、目をパチパチさせている工藤君がいた。
「いい加減照れないでよ、卒業するまであと少し…待ってて、工藤君。私はちゃんと帰ってくるから。」
「灰原…」
「私は二月、あなたは五月の試験に向けてお互い頑張りましょ…」
「うん!」
進む道は違っても、お互いの気持ちは変わってない事に…私は日本に帰国し安心していた。お互いの視線がぶつかる中、胸の鼓動が伝わりそうで平静を装いながら私は工藤君の手にそっと触れた。
それから私達は会えなかった間、お互いに何があったかどんな事をしたのかとか、報告しあった。ただ、二人で話してるだけだったけど…それだけでもとても楽しかった。
工藤君の話は相変わらずお兄さんの事が多くて、そんな話を聞いて…今でも工藤君は、お兄さんを頼っている事がよくわかり、クスッと笑うと工藤君は不思議な顔をして私の顔を覗き込んでいた。
それから、また夢の話になり…私はこの工藤家の事を思い出すと口を開いた。
「でも、あなたが警察官の道を選んだ事…何となく分かる気がするわ。」
「なんで?」
「だって、お父さんは推理小説家、お兄さんは探偵だもの。そんな家庭で育ったあなただから、貴方が警察官目指す事、何となく分かるのよ。」
そんな私の言葉に、工藤君は不安な思いが言葉として出てくる。
「でも、僕…耐えられるかな…訓練の事聞くと、自信なくて…」
「何言ってるの、あなたはやる時はやるって私分かってるもの……大丈夫よ、自信持って、工藤君!」
「うん……」
「その前に、公務員試験に受かる方を心配しなきゃでしょ?しっかり勉強しなきゃね!」
「あ、うん…そうだね…」
工藤君の事を信じる私に、工藤君はやっと前を向き始めたと確信した。
それから、次の日から私がアメリカに戻るまでの間…博士の家に集まって、勉強会が開かれた。お互いに教え合って真剣に勉強に打ち込んでいた。
何より驚いたのは、昨日まであれだけ迷っていた工藤君が一番真剣に勉強していた事。私はその姿を見て自分の事のように嬉しくなった。
そんな姿を珈琲を注ぎながら見ていた私も、一度落ちてしまった試験を今度こそ、頑張らないといけないと心に誓った。
「お、やってるな?」
「こんにちは、ちょっと休憩しない?」
そう言ってやって来たお兄さんと蘭さんの登場に、工藤君以外は勉強を中断させて立ち上がった。
「コナン?お前は食べないのか?」
「もうちょっと、もう少しやってからにするよ」
そう言って教科書から目を離さない工藤君に、お兄さんはぽつりと言う。
「変わってねーな、お前は…」
「え!?」
そう言えば…と、小学生の時にお兄さんに貰った推理小説をもうちょっとと言って読み続けた工藤君の事を思い出す。ま、次の日風邪ひいて心配させられていたけど……。
「いいから、休憩、休憩~」
そう言ってお兄さんから取り上げられる教科書を目で追いながら、仕方なく分かったよと言って立ち上がり、やっと私達と一緒に蘭さんの持ってきたケーキを頬張っていた。
「皆頑張ってるようじゃの~」
「ケーキ沢山買ってきたから遠慮しないで食べるのよ?」
「ありがとう、蘭お姉さん」
「凄ぇうめぇーぞ!」
「ご馳走様です」
各々が美味しそうに頬張りながら食べるケーキに、私達も揃ってお礼を言う。
「ありがとう蘭ねーちゃん!」
「すいません、わざわざ…」
「いいのよ、頑張ってるんだもん。これくらいはね…」
蘭さんは相変わらず私達に優しい笑顔を向けてくれる。きっと、今つわりで大変な時なのに。そう思って私は蘭さんのお腹に視線を向けた。
後少しで私はアメリカに帰らなきゃいけない寂しさに、この勉強会が何よりも大切な時間だった。小学生の頃に戻った様な感覚に陥るこのひと時が、私にとって楽しい時間だと思わせてくれた。
そして、アメリカに戻る当日。
やっぱり工藤君は、空港まで行くと聞かずお兄さんに宥められていた。
「今回もダメなの?」
「コナン、灰原さんだって、我慢してるんだぞ?」
「そうよ、コナンちゃん…哀ちゃんの帰り、ここで待ってましょ。」
「コナンには我慢の訓練も必要だな、これは。」
「お父さん…」
家族中にそう言い聞かせられる工藤君を見て、嬉しい反面…私はアメリカに帰るのが寂しくなっていた。
「もう行っちゃうの?」
そんな言葉が出る工藤君に私は肩を落としながらいう。
「もうっ!そんな事言わないでよ、私だって寂しいんだから…」
「ごめん…」
「じゃあ、行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
最後は集まってくれた皆に送り出す言葉を掛けてもらって、私は前回と同様に博士の運転する車で空港へ向かった。
もう少し、あと少し…しっかり頑張って、日本に帰ってくる頃には、薬剤師としての夢…果たせるかな?そんな思いを胸に込め、私はアメリカに帰っていった。
「久しぶりね、この部屋」
「ああ…もう一年なんだ…灰原が留学してから」
そう言って、工藤君はベットの上に腰掛けた。私もその隣にちょこんと座る。
「一年前、貴方が泣くから…私の留学の事説得するの大変だったのよね…」
「別に泣いてなんか…」
「本当に!?」
「……」
そう言って、工藤君の顔を見ると黙っていた。図星を突かれそれ以上何も言えないでいる彼に、私は続けた。
「でも、それだけ私の事を想ってくれてたって事なんでしょ?でも工藤君…貴方はまだいい方じゃない。私は家どころか、日本にもなかなか帰れないんだから。」
「そんなに大変なの?」
「当たり前じゃない。先生は厳しいし、勉強は頑張らなきゃ行けないし…それに、貴方にも会えないんだから。」
私がそう言うとドキッとして、目をパチパチさせている工藤君がいた。
「いい加減照れないでよ、卒業するまであと少し…待ってて、工藤君。私はちゃんと帰ってくるから。」
「灰原…」
「私は二月、あなたは五月の試験に向けてお互い頑張りましょ…」
「うん!」
進む道は違っても、お互いの気持ちは変わってない事に…私は日本に帰国し安心していた。お互いの視線がぶつかる中、胸の鼓動が伝わりそうで平静を装いながら私は工藤君の手にそっと触れた。
それから私達は会えなかった間、お互いに何があったかどんな事をしたのかとか、報告しあった。ただ、二人で話してるだけだったけど…それだけでもとても楽しかった。
工藤君の話は相変わらずお兄さんの事が多くて、そんな話を聞いて…今でも工藤君は、お兄さんを頼っている事がよくわかり、クスッと笑うと工藤君は不思議な顔をして私の顔を覗き込んでいた。
それから、また夢の話になり…私はこの工藤家の事を思い出すと口を開いた。
「でも、あなたが警察官の道を選んだ事…何となく分かる気がするわ。」
「なんで?」
「だって、お父さんは推理小説家、お兄さんは探偵だもの。そんな家庭で育ったあなただから、貴方が警察官目指す事、何となく分かるのよ。」
そんな私の言葉に、工藤君は不安な思いが言葉として出てくる。
「でも、僕…耐えられるかな…訓練の事聞くと、自信なくて…」
「何言ってるの、あなたはやる時はやるって私分かってるもの……大丈夫よ、自信持って、工藤君!」
「うん……」
「その前に、公務員試験に受かる方を心配しなきゃでしょ?しっかり勉強しなきゃね!」
「あ、うん…そうだね…」
工藤君の事を信じる私に、工藤君はやっと前を向き始めたと確信した。
それから、次の日から私がアメリカに戻るまでの間…博士の家に集まって、勉強会が開かれた。お互いに教え合って真剣に勉強に打ち込んでいた。
何より驚いたのは、昨日まであれだけ迷っていた工藤君が一番真剣に勉強していた事。私はその姿を見て自分の事のように嬉しくなった。
そんな姿を珈琲を注ぎながら見ていた私も、一度落ちてしまった試験を今度こそ、頑張らないといけないと心に誓った。
「お、やってるな?」
「こんにちは、ちょっと休憩しない?」
そう言ってやって来たお兄さんと蘭さんの登場に、工藤君以外は勉強を中断させて立ち上がった。
「コナン?お前は食べないのか?」
「もうちょっと、もう少しやってからにするよ」
そう言って教科書から目を離さない工藤君に、お兄さんはぽつりと言う。
「変わってねーな、お前は…」
「え!?」
そう言えば…と、小学生の時にお兄さんに貰った推理小説をもうちょっとと言って読み続けた工藤君の事を思い出す。ま、次の日風邪ひいて心配させられていたけど……。
「いいから、休憩、休憩~」
そう言ってお兄さんから取り上げられる教科書を目で追いながら、仕方なく分かったよと言って立ち上がり、やっと私達と一緒に蘭さんの持ってきたケーキを頬張っていた。
「皆頑張ってるようじゃの~」
「ケーキ沢山買ってきたから遠慮しないで食べるのよ?」
「ありがとう、蘭お姉さん」
「凄ぇうめぇーぞ!」
「ご馳走様です」
各々が美味しそうに頬張りながら食べるケーキに、私達も揃ってお礼を言う。
「ありがとう蘭ねーちゃん!」
「すいません、わざわざ…」
「いいのよ、頑張ってるんだもん。これくらいはね…」
蘭さんは相変わらず私達に優しい笑顔を向けてくれる。きっと、今つわりで大変な時なのに。そう思って私は蘭さんのお腹に視線を向けた。
後少しで私はアメリカに帰らなきゃいけない寂しさに、この勉強会が何よりも大切な時間だった。小学生の頃に戻った様な感覚に陥るこのひと時が、私にとって楽しい時間だと思わせてくれた。
そして、アメリカに戻る当日。
やっぱり工藤君は、空港まで行くと聞かずお兄さんに宥められていた。
「今回もダメなの?」
「コナン、灰原さんだって、我慢してるんだぞ?」
「そうよ、コナンちゃん…哀ちゃんの帰り、ここで待ってましょ。」
「コナンには我慢の訓練も必要だな、これは。」
「お父さん…」
家族中にそう言い聞かせられる工藤君を見て、嬉しい反面…私はアメリカに帰るのが寂しくなっていた。
「もう行っちゃうの?」
そんな言葉が出る工藤君に私は肩を落としながらいう。
「もうっ!そんな事言わないでよ、私だって寂しいんだから…」
「ごめん…」
「じゃあ、行ってきます」
「「行ってらっしゃい」」
最後は集まってくれた皆に送り出す言葉を掛けてもらって、私は前回と同様に博士の運転する車で空港へ向かった。
もう少し、あと少し…しっかり頑張って、日本に帰ってくる頃には、薬剤師としての夢…果たせるかな?そんな思いを胸に込め、私はアメリカに帰っていった。