✩.*˚哀とコナンと……②✩.*˚
灰原さんと別れたコナンは、工藤低へ帰宅した。それに気づいた有希子は、バタバタと足音を立てて玄関に出迎えながら口早に話をしていた。
「コナンちゃん!蘭ちゃん、子供出来たんだってね~楽しみだわ~初孫~」
「あ、うん!兄ちゃんちに灰原と行ったら、蘭ねーちゃんが教えてくれたよ!」
「そう…でも、本当によかったわ~」
そうニコニコと話す笑顔の母親を見ると、コナン自身も嬉しくなっていた。
「次はあなた達ね~」
と、悪気のない有希子の発言にコナンは真っ赤になって焦っていた。
「な、何言ってるんだよ…僕達はまだ早いよ、もう!」
「あら、そう?」
焦りながらそそくさと靴を脱ぎながら、スリッパに履き替え上がるコナンに有希子はふと思って問いかけた。
「そう言えば、哀ちゃんは?アメリカから帰ってきたのよね?」
「うん、でも今日は帰っちゃった…」
「ええ~久しぶりに話したかったのに~」
「だって、帰るって言うんだもん」
「そう…」
灰原が居ない事に残念がる母親を背後に感じながら、リビングに行くと優作がコーヒーを飲みながら新聞を広げていた。
「お父さん!」
「おお、コナンか…蘭君の事、聞いたか?」
「うん!聞いたよ、2ヶ月だって言ってたよ」
「そうか…」
二人の息子を育てたこの両親にとって、初孫は嬉しいものなのだろう。父親に至っては、いつ産まれても対処できる様に構えてる様子にも伺えた。
「所でコナンちゃん…哀ちゃんの事、ちゃんと誘ったの?」
「え?」
「ちゃんとエスコートしないと、哀ちゃんに飽きられちゃうかも知れないわよ?」
「そんな事言ったって……僕、そう言うのよく分かんないんだもん。」
「もう、兄弟揃って奥手なんだから…」
母親に呆れられながら、コナンはどうしていいか困惑している様子だった。
コナンは小さい頃から引っ張ってもらってる側だったものだから、引っ張ってあげるというものがイマイチ分からないらしい。ましてや、女性をエスコートすると言うのがコナンにとって、勉強よりも難しいのだ。
「まあまあ、コナンはまだ高校生なんだから…ゆっくりやればいいさ、それより…そろそろ将来の事決めなければならんな?」
「うん……」
父親にその話題を振られ、コナンは一人で俯いていた。何も決められていないのは、自分だけ。そのプレッシャーにも押されているコナンは、まだ進路の紙を提出出来ていなかった。
「担任の先生から電話あってな…そろそろ決めた方がいいと言われたんだ…お前も考えてない訳じゃないのは父さん達だって、知ってる。だが、悩み過ぎるのも決められない理由ではないのかな?」
そう、父親に諭され…真剣に考える時が来ている事…コナン自身も分かっていた。分かっていても…決められない事実に、コナンを更に俯かせていた。
「コナン…叱ってる訳じゃないんだ、ただ…決めずに卒業するのも、良くないという話だ。」
「そうよ、コナンちゃん…あなたの将来やりたい事を素直に考えればいいのよ」
母親は、コナンの背後から肩を持ちながら優しく言い聞かせていた。優しくされればされる程…コナンに追い詰められるプレッシャーと申し訳ない気持ちで膝の上に置いていた手にぽつりと大粒の涙が零れていた。
「コナンちゃん…」
驚く両親の前に、自分がどうしていいのか分からないでいた。読んでいた新聞を折りたたんで、視線はコナンに向ける優作やコナンの肩に手を置きながら、心配する有希子。
周りの友達も灰原も、将来を決め、進み始めている。だけど、自分だけ決められない悔しさと、不甲斐なさに思わず涙するコナン。
涙を拭うコナンに、優作や有希子はそんな息子の言葉を待ちながら見守った。そして、目頭から零れてくる涙を拭いながら、コナンはゆっくり自分の言葉を発した。
「ごめん…僕、兄ちゃんみたいにちゃんと将来の事決められなくて…ずっと子供の頃から心配かけてきたのに…高校生になっても心配ばかりかけて……ごめんなさい。」
やっと絞り出した言葉は、両親に向けて謝る言葉だけだった。新一が高校生の時は…それよりも先から将来何をするかを既に決めていた。それなのに、自分は何も決められていない事に…悔しさが募る。
同時に、同じ兄弟なのに…と、そんな思いがコナンの中で湧き出ていた。決して、両親に兄弟を比較されている訳じゃない、兄を憎んでいる訳でもない。
むしろ、新一の事が好きで…一途に、兄を尊敬してるからこそ…兄の様になりたいその一心のプレッシャーだった。
それでも……。
「でも、僕…何をやりたいのか、まだ分からないんだ…焦れば焦るほど…よく分からなくなってきて…どうしていいか、分からなくなって……」
涙を流しながら不安な思いを両親にぶつけるコナン。仕事が忙しく、コナンに全然構ってあげられなかったことを思い、優作や有希子の想いからもコナンに申し訳ないという気持ちになっていた。
「私達こそ……あなたの傍に付いてあげられなくて、ごめんなさい…新一に頼ってばかりで……大事な時に、あなたの相談に乗ってあげられなかったのね……」
「お母さん…」
母親の言葉に、瞳に涙を溜めながらゆっくり顔を上げるコナン。コナンの心の中で必死に自分の将来ともがいていることは明らかだった。
そんな優作は、コナンにそっと声をかける。
「コナン、子供が親に心配かけるのは当たり前の事だ…新一だって、心配掛けてきたんだ、お前だけじゃない。」
優作は一呼吸置くとコナンにもう一度言葉を掛けた。
「もしも……もしもお前が、新一の様にと思って将来を考えているのであれば、一度…新一の事は置いて考えみたらどうだ?」
「え!?」
「お前達は兄弟だが、同じじゃない…産まれた歳も違うし、進む道も違う。それぞれが歩むべき道は、違ってもいいのではないか?」
「……」
「父さんと母さんはな、兄弟だからと言って、お前達を比べる事などした事はないんだ。お前が産まれた頃から仲のいい…良すぎるがな。そんな兄弟という認識しかしていなかった。」
「そうよ、コナンちゃん……今でも仲の良い兄弟で居てくれて、私達は嬉しいのよ。でもね、将来の事は、お兄ちゃんの様にと思わなくていいの。あなたの人生なんだから……あなたの好きな様な決めればそれでいいのよ」
コナンは両親にそう説得され、今までプレッシャーの様に感じていた絡んだ糸の様なものが解けていくような錯覚に陥っていた。
自分の未来は兄ちゃんが決めるんじゃない。コナン自信で決めるんだ。いつまでも兄ちゃんに頼って生きていた生活に、終止符を打たなければならないと、少しづつ大人に近づいて行く18歳のコナンはそう覚悟して心に決めていた。
「コナンちゃん!蘭ちゃん、子供出来たんだってね~楽しみだわ~初孫~」
「あ、うん!兄ちゃんちに灰原と行ったら、蘭ねーちゃんが教えてくれたよ!」
「そう…でも、本当によかったわ~」
そうニコニコと話す笑顔の母親を見ると、コナン自身も嬉しくなっていた。
「次はあなた達ね~」
と、悪気のない有希子の発言にコナンは真っ赤になって焦っていた。
「な、何言ってるんだよ…僕達はまだ早いよ、もう!」
「あら、そう?」
焦りながらそそくさと靴を脱ぎながら、スリッパに履き替え上がるコナンに有希子はふと思って問いかけた。
「そう言えば、哀ちゃんは?アメリカから帰ってきたのよね?」
「うん、でも今日は帰っちゃった…」
「ええ~久しぶりに話したかったのに~」
「だって、帰るって言うんだもん」
「そう…」
灰原が居ない事に残念がる母親を背後に感じながら、リビングに行くと優作がコーヒーを飲みながら新聞を広げていた。
「お父さん!」
「おお、コナンか…蘭君の事、聞いたか?」
「うん!聞いたよ、2ヶ月だって言ってたよ」
「そうか…」
二人の息子を育てたこの両親にとって、初孫は嬉しいものなのだろう。父親に至っては、いつ産まれても対処できる様に構えてる様子にも伺えた。
「所でコナンちゃん…哀ちゃんの事、ちゃんと誘ったの?」
「え?」
「ちゃんとエスコートしないと、哀ちゃんに飽きられちゃうかも知れないわよ?」
「そんな事言ったって……僕、そう言うのよく分かんないんだもん。」
「もう、兄弟揃って奥手なんだから…」
母親に呆れられながら、コナンはどうしていいか困惑している様子だった。
コナンは小さい頃から引っ張ってもらってる側だったものだから、引っ張ってあげるというものがイマイチ分からないらしい。ましてや、女性をエスコートすると言うのがコナンにとって、勉強よりも難しいのだ。
「まあまあ、コナンはまだ高校生なんだから…ゆっくりやればいいさ、それより…そろそろ将来の事決めなければならんな?」
「うん……」
父親にその話題を振られ、コナンは一人で俯いていた。何も決められていないのは、自分だけ。そのプレッシャーにも押されているコナンは、まだ進路の紙を提出出来ていなかった。
「担任の先生から電話あってな…そろそろ決めた方がいいと言われたんだ…お前も考えてない訳じゃないのは父さん達だって、知ってる。だが、悩み過ぎるのも決められない理由ではないのかな?」
そう、父親に諭され…真剣に考える時が来ている事…コナン自身も分かっていた。分かっていても…決められない事実に、コナンを更に俯かせていた。
「コナン…叱ってる訳じゃないんだ、ただ…決めずに卒業するのも、良くないという話だ。」
「そうよ、コナンちゃん…あなたの将来やりたい事を素直に考えればいいのよ」
母親は、コナンの背後から肩を持ちながら優しく言い聞かせていた。優しくされればされる程…コナンに追い詰められるプレッシャーと申し訳ない気持ちで膝の上に置いていた手にぽつりと大粒の涙が零れていた。
「コナンちゃん…」
驚く両親の前に、自分がどうしていいのか分からないでいた。読んでいた新聞を折りたたんで、視線はコナンに向ける優作やコナンの肩に手を置きながら、心配する有希子。
周りの友達も灰原も、将来を決め、進み始めている。だけど、自分だけ決められない悔しさと、不甲斐なさに思わず涙するコナン。
涙を拭うコナンに、優作や有希子はそんな息子の言葉を待ちながら見守った。そして、目頭から零れてくる涙を拭いながら、コナンはゆっくり自分の言葉を発した。
「ごめん…僕、兄ちゃんみたいにちゃんと将来の事決められなくて…ずっと子供の頃から心配かけてきたのに…高校生になっても心配ばかりかけて……ごめんなさい。」
やっと絞り出した言葉は、両親に向けて謝る言葉だけだった。新一が高校生の時は…それよりも先から将来何をするかを既に決めていた。それなのに、自分は何も決められていない事に…悔しさが募る。
同時に、同じ兄弟なのに…と、そんな思いがコナンの中で湧き出ていた。決して、両親に兄弟を比較されている訳じゃない、兄を憎んでいる訳でもない。
むしろ、新一の事が好きで…一途に、兄を尊敬してるからこそ…兄の様になりたいその一心のプレッシャーだった。
それでも……。
「でも、僕…何をやりたいのか、まだ分からないんだ…焦れば焦るほど…よく分からなくなってきて…どうしていいか、分からなくなって……」
涙を流しながら不安な思いを両親にぶつけるコナン。仕事が忙しく、コナンに全然構ってあげられなかったことを思い、優作や有希子の想いからもコナンに申し訳ないという気持ちになっていた。
「私達こそ……あなたの傍に付いてあげられなくて、ごめんなさい…新一に頼ってばかりで……大事な時に、あなたの相談に乗ってあげられなかったのね……」
「お母さん…」
母親の言葉に、瞳に涙を溜めながらゆっくり顔を上げるコナン。コナンの心の中で必死に自分の将来ともがいていることは明らかだった。
そんな優作は、コナンにそっと声をかける。
「コナン、子供が親に心配かけるのは当たり前の事だ…新一だって、心配掛けてきたんだ、お前だけじゃない。」
優作は一呼吸置くとコナンにもう一度言葉を掛けた。
「もしも……もしもお前が、新一の様にと思って将来を考えているのであれば、一度…新一の事は置いて考えみたらどうだ?」
「え!?」
「お前達は兄弟だが、同じじゃない…産まれた歳も違うし、進む道も違う。それぞれが歩むべき道は、違ってもいいのではないか?」
「……」
「父さんと母さんはな、兄弟だからと言って、お前達を比べる事などした事はないんだ。お前が産まれた頃から仲のいい…良すぎるがな。そんな兄弟という認識しかしていなかった。」
「そうよ、コナンちゃん……今でも仲の良い兄弟で居てくれて、私達は嬉しいのよ。でもね、将来の事は、お兄ちゃんの様にと思わなくていいの。あなたの人生なんだから……あなたの好きな様な決めればそれでいいのよ」
コナンは両親にそう説得され、今までプレッシャーの様に感じていた絡んだ糸の様なものが解けていくような錯覚に陥っていた。
自分の未来は兄ちゃんが決めるんじゃない。コナン自信で決めるんだ。いつまでも兄ちゃんに頼って生きていた生活に、終止符を打たなければならないと、少しづつ大人に近づいて行く18歳のコナンはそう覚悟して心に決めていた。