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✩.*˚哀とコナンと……①✩.*˚

俺は、その後家に戻り…心配する蘭に、心配ないことを伝えた。

「はぁ、よかった~!でも、久しぶりよね!コナン君が高熱出すなんて……」
「そうだな!最後に出したのは、小学生か…中学の時だったもんな!最近は引いても軽かったらしいし……」

蘭は、テーブルを挟んだ向かいに座ってる俺に、コナンに出した時と同じ様にココアを淹れてくれた。

「サンキュ…」

俺はそれをゆっくり啜った。

「ここの所、色々あったみたいね……来なかったから、大丈夫かなって思っていたけど……高熱が出たの、雨だけのせいじゃ無かったかもしれないわね!」
「ああ、多分…あんまり俺達に迷惑掛けない様に来ない様にしてたらしいぜ?あいつも、あいつなりに気にしてたんだな……」
「コナン君も、少しづつ…大人になったって事なのかしらね?」
「そうだな……」

コナンを思い…そう話しながら、お互いの顔を見合わせながら笑っていた…。

でも……もう、きっと……。

「灰原さんがいるから、大丈夫だろう……」
「そうね……ふふっ………」

俺は少しづつ、大人になって行く弟を思い…蘭と一緒にココアを飲みながら、未だ実家で眠ってるであろうコナンを思っていた。







私は、お兄さん、優作さんや有希子さんが工藤君の部屋を出た後………。

工藤君の手を片手で握り締めながら…先程まで見ていた工藤君の小さい時のアルバムを見ていた…。

未熟児で、他の子よりも長く入院していた頃から…退院して、初めてこの家に来た写真……そして、お兄さんと二人で移ってる写真……一歳、二歳、三歳の頃の写真。

そして、家族写真。

有希子さんの腕に抱かれて、四人で映る写真に…私は羨ましく思う。

でも、次のページをめくった時……。

私と工藤君が初めて会って、わだかまりがなくなった時…有希子さんに、無理やり撮られた写真がそこに加えられていた。

三歳で、初めて工藤君に会って…それから、仲良くなって……所々、私や博士も一緒に写真に映る様になっていった。

工藤家に、時々お世話になって……家族の様に、いろんな所に連れて行って貰ったりした。

お兄さんは、工藤君と一緒に…私まで面倒を見てくれる、優しいお兄さんだって…当時の私の目には移っていた。

「色々……あったわね……」

アルバムを見ながら、私はクスリ…一人で笑っていた。

「うっ………」

その時、突然工藤君が唸り声をあげた為…私はアルバムを床に落としてしまう。

「工藤君っ、工藤君!?」
「うっ………」
「気がついた?大丈夫?工藤君!?」
「灰原?………あ、れ?僕……」

記憶が曖昧になっている工藤君に、私は言った…。

「お兄さんの家で倒れたのよ!高熱出して、大変だったんだから………」
「あ、そっか………」

半ばぼーっとしている工藤君に、私は懐かしさを覚えて伝えた。

「工藤君…昔、お世話になった先生…覚えてる?幼稚園や小学校の時、工藤君が熱を出して倒れる度に来てくれた先生………」
「あ、ああ……」
「久しぶりに来てくれてね!工藤君の事、心配してたわよ!」
「僕も久しぶりに会いたかったなあ……」
「また来てくれるわよ!」

私はそこまで言うと、口に手を当てて口を噤んだ。

「ごめんなさい、来た方が困るわよね!また、熱を出すって事だし……」
「灰原……ごめんな、今日……僕、その…取り乱して……」
「仕方ないわよ、だって…突然だったし………言ってなかった私も悪いし、元気になったら話しましょう!」

私は、熱で朦朧としている工藤君の意見は聞きたくなくて、そう言った…。

「僕、もうあんな事言わないよ!灰原……留学の事……」
「ごめんなさい、工藤君…今は留学の事話したくない、工藤君が治ったら、話しましょう!」
「何で?」
「だって、工藤君熱で朦朧としてるんだもの……本当の意見とは、思えないわ……」
「本当の意見だよ!」
「違う………」

私は、工藤君の手を取って……言った。

「工藤君…焦る事なんて、ないのよ………貴方の熱が下がって、ちゃんと風邪治したら…その時、ゆっくり話しましょう…お願い、そうして……私は、元気な時の工藤君の意見が聞きたいの。」
「…………」
「お願い!」
「分かった!」

私は、納得した工藤君の意見を聞き、漸く手を話すと…先程、見ていたアルバムを片そうと手に持った。

「灰原、それ………」
「ああ、さっき先生が母子手帳確認したいって言うから渡したんだけど、母子手帳がここに挟まっていたついでに見ていたのよ!」

そう説明すると、工藤君の手が伸びて来て言った。

「僕も見たい……」
「貴方は、熱が………」

私は、一度そう言いかけたけど………アルバムを工藤君に渡した。

「起きる?」

そう、声を掛けたけど…工藤君は…。

首を振り、そのままアルバムを両手に持って見ていたけど、何と無く体力の消耗している工藤君には重そうな気がして、片側だけ…私が手伝って持っていた…。

「こんなに小さかったんだね、僕………」
「そうね………」

工藤君は、産まれたばかりの自分の姿を見てぽつりと言った。

「小さい頃、いろんな人に心配掛けてたんだよね……」
「そして、今も……」
「…………」

私の言葉に、工藤君も私も顔を合わせて微笑んでいた…。

「灰原………僕があの時この事打ち明けなくても、友達になっていたのかな?僕達……」
「さあね……多分、友達になっていたんじゃないかしら?でも、今程の信頼関係は生まれてなかったんじゃない?勿論、付き合ってもないし…ましてや、キスなんて……してなかったかもね?」
「バッ………だから、何でお前はいつも………」

工藤君はアルバムで顔を隠して、私に怒っていた。

だけど、アルバムの下で照れてるんだろうと思い、微笑む私は…工藤君からアルバムを奪った。

「ちょっと、何すんだよ!」
「片付けておいてあげる!それに、これ以上…病人の熱を上げたら私、怒られるし……」

私は、アルバムを棚に仕舞うと…工藤君に歩み寄り、床に膝をついて腕をベッドに置きながら、よりかかった。

工藤君は、私の顔を間近にして…目をパチパチさせる。

「じゃあ、また来るわ!早く元気になってよね!」
「ああ、ごめ……」

私は工藤君がいい終わらない内に、工藤君の頬にキスをした。

「………」
「感謝して?これ以上だと、もっと熱が上がりそうだったから…今回は頬っぺたにしといてあげたの………」

私は立ち上がると、振り向き様に言った。

「じゃあ、またね!」

真っ赤になった顔を隠す様に…工藤君は喚くように叫んだ。

「バカ、バカ、バカッ!!何だよ、もう!!」
「ふっ……」

その慌て様が、堪らなく面白くて……私はまた、微笑んだ。

「風邪が治ったら……またね!私、待ってるから!」

照れて、布団を被ってしまった工藤君に、そっと声を掛けて私は部屋を出て行った。
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