おさななじみのオベロンちゃん

【立香視点】
 オベロンにプロポーズをされたのは、高校の卒業式の日。
 式の後、仲が良かったクラスでの打ち上げの帰り道。日が落ちて辺りが夕陽色に染まる黄昏時にオベロンは
「結婚しよう。立香」
とわたしに言ってきた。
「うん。結婚しようオベロン」
 オベロンからのプロポーズに、わたしは笑って答える。
 昔から、それこそ初めて出会った時から、わたしもオベロンも、お互いの事がとても好きで……所謂、相思相愛だったので『結婚しようね』という言葉を交わすこと自体は強いて特別なことではなかった。
「けど、まさか次の日に婚姻届を出しに行くとは思わなかったなぁ」
 わたしはてっきり、幼稚園の頃言っていたような『大人になったら結婚しようね』という意味での告白かと思っていたら、オベロンは家について自分たちの卒業のお祝いをしてくれた両家の両親に「僕と立香の結婚をお許しください」と頭を下げた。
 高校を卒業したばかりでしかもこれから大学生になるわたし達が結婚するなんて世間的には早すぎるのではないかと思ったが、何故かうちの両親もオベロンの両親も「まあ、貴方達二人なら……」とあっさり許してくれたのだから正直驚いた。しかしオベロンは両家両親に許可をもらったその場で婚姻届を出して記入し、翌日家族で役所に提出してきた。
 こうして、私とオベロンははれて夫婦となったのである。
「嫌だった?高校卒業と同時に籍を入れるなんて?」
 わたしの呟きを拾ったオベロンが、首を傾げながら顔を覗き込んできた。
「まあ、もう嫌だって言っても結婚を無かったことにはできないけどね」
 ふふっと笑うオベロンは、純白のタキシードに身を包んでいる。
 結婚式は大学卒業してから挙げようと話し合いで決まったが、せっかく結婚したのだからと色んな衣装に着替えて撮れるウェディングフォトプラン付のリゾートホテルにハネムーンに来ていた。わたしもウェディングドレスを着させて貰っている。
「まさか。嫌だなんて思っていないよ」
 確かに予想より早かったが、いつか結婚していたのは間違いない。
「一緒に、幸せになろうね。オベロン。世界で一番、愛してるよ」
そう言って、わたしはオベロンにキスをした。

【オベロン視点】
「結婚できる年齢になって高校を卒業したら、一秒でも早く立香と入籍する」
 そう宣言する僕に、立香と一緒に入学した高校で行動をよく共にしていた僕の親戚のアルトリア・キャスターと、友人の千子藤丸は若干引いたり苦笑いしたりしていた。だが、僕は大真面目だった。本気で結婚できる年齢になったら立香と籍を入れるためにそれはそれは努力していた。立香と出会ったその日から、僕は自分の両親に「大きくなったら立香をお嫁さんにする」と話し続け、父には「将来結婚してから立香が専業主婦で子供がたくさん生まれても何不自由ない暮らしをさせたいから投資を教えてください」と頼み込み未成年の内から結構な金額を貯蓄してきた。(僕が物心ついた時から見ている夢の中のどっかの妖精王だかなんだかのように人に借金しまくるなんてもってのほかなので反面教師にしている)
 もちろん、立香の御両親にも快く認めてもらうために僕自身を好きになってもらえるようにたくさん努力をした。その甲斐もあってお二人からも「オベロンくんになら立香を任せられるし、なにより自分たちの息子になってくれたら嬉しいなぁ」と言って頂けるまでになった。
「結婚しよう。立香」
 そして、卒業式の後、立香にプロポーズをした。立香は笑って僕のプロポーズを受けてくれたのでその日の夜に婚姻届を書き翌日即提出し僕達は法的にも夫婦として認められることとなった。
 結婚式はさすがに大学卒業後にしようということになったが、入学前の春休みを利用してハネムーンを満喫している。衣装着放題のウェディングプランを利用しているので僕と立香は色んな衣装を着て写真をたくさん撮る。
「オベロン、すごく綺麗だよ」
 キラキラした目で、立香が僕を見ている。今日は、僕がスカートのウェディングドレスを着て、立香がパンツスタイルのウェディングドレスでの撮影だ。15歳までは日常的に女装していたからドレス姿も何のことは無い。何より、立香は可愛い恰好の僕も大好きなのだ。彼女が嬉しそうにしてくれるならいくらでも着たっていい。
「立香も、すごく似合ってる。いっぱい、色んな写真を撮ろうね」
 好きな人との思い出の写真は、いくらあったっていいものだ。
 僕は、僕の運命の人である立香と一緒に幸せになると自分に誓いながら、立香にキスをした。
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