「やす菜…？君が？」
「うん」
「……にわかに信じがたいな…」

俺達は今目の前にいる女の子の言うことに信じられない。という顔をする。

「だって、やす菜は男だったし、それに…今は、もう…」

その先を言わずに雷蔵は俯く。

「…おい、娘」

三郎が彼女に顔を近づける。

「俺達のことをどうやって調べたかは知らんが、あまり滅多なことを言うもんじゃない。
やす菜…私達の友の##NAME2####NAME3##は死んだ。…私達の目の前で…」

三郎の言葉に「ああ」と彼女は頷いた。

「確かに俺は死んだな。
四年生の冬、お前達や新野先生、善法寺先輩に看取られながら」
「「「「!!?」」」」

彼女の口から、新野先生や善法寺伊作先輩の名前が出てきたことに俺達は驚いた。

「……最期、俺の呼吸が止まるまで…兵助が手を握っててくれたよな」

そう言って微笑むと彼女は自分の左手を右手で包むようにそっと握った。
…俺が握っていたやす菜の手も左手だった。

「…ちょっと待ってくれ…何か、色々と頭が追いついてない…」

ハチが額に手を当てて項垂れる。

「だから、生まれ変わったんだってば…まあ、夢みたいな話ではあるけどな。
死んだ人間が、生きていた頃の記憶を全て持ったまま再び生まれてきて目の前に現れるなんて。でも…現実だ」

ザァッと一際強い風が吹いた。その風と共に桜の花びらが散った。

「…ああ、今年も綺麗に咲いたな。毎年、この桜の下で花見してたよな」

ヒラヒラと、花びらが舞い落ちる桜を見上げながら彼女が言った。

「…正直に言うと…俺は、自分を##NAME2####NAME3##だと言い切っていいのかは、わからない。

だって…この時代で生きていた##NAME2####NAME3##という人間はもうどこにも存在していないんだから」

彼女の弧を描いていた唇に、苦笑の色が滲む。

「俺は、ここから数百年先の時代に、とある心優しい夫婦の子供として生まれて来た。２コ下に弟もいる。
家庭はそれなりに裕福で、生活環境は中の上。何も不自由なことはなかった。
学校生活も順調でそれなりに楽しくて幸せな人生を歩んでいたよ。
…この時代とはまったく違う環境で育ってきた。
だから、きっと本当はもう##NAME2####NAME3##とはまったく別の存在なんだと思う。」

「でも…」と彼女は続けた。

「…覚えているんだ…この時代で、##NAME2####NAME3##として生きていた時のこと…全部、記憶に残っているんだ」

どんな家に生まれて、
どんな風に育てられて、
この学園に入学して、
俺達と出会って、
どんな風に過ごして、
何を学んでいたか、

…命が尽きる、その時まで、自分が何をしていたか…
全て覚えているのだと、彼女は言った。

「だから、お前らのこともちゃんと覚えてる。
鉢屋三郎
不破雷蔵
竹谷八左ヱ門
久々知兵助」

とても懐かしむような視線を、俺達に向け、彼女は目を細めた。