その目は真剣そのもので…
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裏庭を掃除しようと、竹箒を持って向かった。
「…一年の頃から、ずっと好きだったの」
声が聞こえ、裏庭に着く直前の角で足を止める。
そーっと、少しだけ顔を出して見ると、桃と緑の忍装束が目に入った。
これは…いわゆる愛の告白の場面というやつで、桃色の忍装束を身に纏うくのたまの女の子は顔を真っ赤にしながら必死に自分の気持ちを、緑色の忍装束を纏う忍たまの男の子に伝えていた。
「私と、付き合って下さい!!」
男の子は後ろ姿しか見えなかったが、私は誰だかすぐに解った。
(あれ、仙蔵君だ…)
他の同学年の男の子と比べすらりと細身の体型に、サラサラと流れる綺麗な髪で、彼だと思った。
(仙蔵君…確か、この間も恋文貰っていたような…)
モテるなぁ…と思いながら体を元来た方向に向ける。
彼らは忍者を目指して修行を積んでいる者達なので、すでに一般人である私の存在に気付いているかもしれないが、なるべく足音を立てないようにその場を去ろうとした。
…仙蔵君に恋をする女の子が今、一生懸命告白しているのだ。関係のない自分が、こそこそとそれを聞いていいはずがない。裏庭の掃除は後にして、早くこの場を離れよう。
(そーっと、そーっと…)
そろそろと足を進める。すると…
「悪いが…」
「きゃっ!?」
仙蔵君の声がすぐ側で聞こえたと思ったら、腰に腕を回され引き寄せられた。
「私は、このやす菜と将来を誓い合っていてな…他の女は眼中にないのだよ…」
仙蔵君はそう言って私の髪を一房すくうと口付けた。
私は状況が飲み込めず、思考が停止する。
その後、女の子は「嘘よ!」と信じたくないとでも言うように首を振り、仙蔵君はそれに何かを言っていた。
しばらくして、女の子は泣きながら私を睨み付けて走って行った。
「え~っと……」
まるで他人事のようにその光景を見ていた私は、少しずつ状況を理解した。
「…仙蔵君?」
「何だ?」
「告白を断るために、通りすがりの私を使って適当な嘘を吐くのは良くないと思うよ」
「あの女の子、泣いてたよ…」と言うと、「あまりにしつこかったのでな」と返ってきた。
「あの女にはかれこれ五回ほど告白されている。いい加減、鬱陶しかった」
冷たく吐かれた言葉に、ハァ…と溜息を吐く。
「ダメだよ。鬱陶しいなんて言っちゃ…それだけ、仙蔵君のことが好きだったってことでしょう?」
「鬱陶しいものは鬱陶しい」
「またそんなこと言う…。それに断るにしても、もう少し言い方があると思うよ?『ありがとう。気持ちはとても嬉しいよ。でも、私は今、誰とも付き合う気はないんだ。ごめんね』とか」
「初めの告白で、きちんと断った。だが、諦めなかったんだ」
「そっか…」
顔を真っ赤にして、仙蔵君に告白していた女の子の姿を思い返す。
「羨ましいな…」
「何?」
「そこまで、誰かを想えるような恋をしていることが、羨ましい」
さっきの娘は、振られてしまったけれど…とても、可愛らしかった。
恋をしている女の子は、なんて綺麗なのだろう。
「私はまだ、そんな経験ないから…」
きり丸と共に生きることで精一杯で、恋などしている暇などなかった。
「………なら」
今まで黙って私の言葉を聞いていた仙蔵君が、口を開く。
「私と、してみるか?」
「え?」
腰に回されていた腕が緩み、仙蔵君と向かい合わせの状態になる。
「互いのことしか考えられなくなるくらい、熱い恋を」
私の手を取り、指先に唇を落とした。
「やだ、仙蔵君ったら…」
「からかわないでよ」と笑って言おうとしたが、言葉は出なかった…
…彼のことだから、いつもの戯れだと思っていたのに…
その目は真剣そのもので…
(『他の女は眼中にない』…)
(それは、紛れもない本心)
後書き→
「…一年の頃から、ずっと好きだったの」
声が聞こえ、裏庭に着く直前の角で足を止める。
そーっと、少しだけ顔を出して見ると、桃と緑の忍装束が目に入った。
これは…いわゆる愛の告白の場面というやつで、桃色の忍装束を身に纏うくのたまの女の子は顔を真っ赤にしながら必死に自分の気持ちを、緑色の忍装束を纏う忍たまの男の子に伝えていた。
「私と、付き合って下さい!!」
男の子は後ろ姿しか見えなかったが、私は誰だかすぐに解った。
(あれ、仙蔵君だ…)
他の同学年の男の子と比べすらりと細身の体型に、サラサラと流れる綺麗な髪で、彼だと思った。
(仙蔵君…確か、この間も恋文貰っていたような…)
モテるなぁ…と思いながら体を元来た方向に向ける。
彼らは忍者を目指して修行を積んでいる者達なので、すでに一般人である私の存在に気付いているかもしれないが、なるべく足音を立てないようにその場を去ろうとした。
…仙蔵君に恋をする女の子が今、一生懸命告白しているのだ。関係のない自分が、こそこそとそれを聞いていいはずがない。裏庭の掃除は後にして、早くこの場を離れよう。
(そーっと、そーっと…)
そろそろと足を進める。すると…
「悪いが…」
「きゃっ!?」
仙蔵君の声がすぐ側で聞こえたと思ったら、腰に腕を回され引き寄せられた。
「私は、このやす菜と将来を誓い合っていてな…他の女は眼中にないのだよ…」
仙蔵君はそう言って私の髪を一房すくうと口付けた。
私は状況が飲み込めず、思考が停止する。
その後、女の子は「嘘よ!」と信じたくないとでも言うように首を振り、仙蔵君はそれに何かを言っていた。
しばらくして、女の子は泣きながら私を睨み付けて走って行った。
「え~っと……」
まるで他人事のようにその光景を見ていた私は、少しずつ状況を理解した。
「…仙蔵君?」
「何だ?」
「告白を断るために、通りすがりの私を使って適当な嘘を吐くのは良くないと思うよ」
「あの女の子、泣いてたよ…」と言うと、「あまりにしつこかったのでな」と返ってきた。
「あの女にはかれこれ五回ほど告白されている。いい加減、鬱陶しかった」
冷たく吐かれた言葉に、ハァ…と溜息を吐く。
「ダメだよ。鬱陶しいなんて言っちゃ…それだけ、仙蔵君のことが好きだったってことでしょう?」
「鬱陶しいものは鬱陶しい」
「またそんなこと言う…。それに断るにしても、もう少し言い方があると思うよ?『ありがとう。気持ちはとても嬉しいよ。でも、私は今、誰とも付き合う気はないんだ。ごめんね』とか」
「初めの告白で、きちんと断った。だが、諦めなかったんだ」
「そっか…」
顔を真っ赤にして、仙蔵君に告白していた女の子の姿を思い返す。
「羨ましいな…」
「何?」
「そこまで、誰かを想えるような恋をしていることが、羨ましい」
さっきの娘は、振られてしまったけれど…とても、可愛らしかった。
恋をしている女の子は、なんて綺麗なのだろう。
「私はまだ、そんな経験ないから…」
きり丸と共に生きることで精一杯で、恋などしている暇などなかった。
「………なら」
今まで黙って私の言葉を聞いていた仙蔵君が、口を開く。
「私と、してみるか?」
「え?」
腰に回されていた腕が緩み、仙蔵君と向かい合わせの状態になる。
「互いのことしか考えられなくなるくらい、熱い恋を」
私の手を取り、指先に唇を落とした。
「やだ、仙蔵君ったら…」
「からかわないでよ」と笑って言おうとしたが、言葉は出なかった…
…彼のことだから、いつもの戯れだと思っていたのに…
その目は真剣そのもので…
(『他の女は眼中にない』…)
(それは、紛れもない本心)
後書き→