皆にバレないように、そっと、君の手を握る。
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静かな部屋に、紙の音が響く。私は今書類の整理をしていた。
山田先生はいらっしゃらない。急に出張が入ってしまったのだ。
だが、部屋には私以外にもう一人居た。
チラリ。と、向かい側に座るやす菜を見た。
書類の量があまりにも多かったため、やす菜に手伝いを頼んだのだ。
やす菜は手元の紙を整理するのに集中しているため、私が見ている事に気が付いていない。
(睫毛長いな…)
やす菜の顔を見ながら、無意識にそんなことを思ってしまい、慌てて首を横に振った。
(何考えているんだ…私は!!)
「土井先生…」
「な、何だい!?」
突然声を掛けられ、危うく声が裏返りそうになってしまった。
「いえ…首を振っていたので、どうかしたのかなって…お疲れですか?」
「いや、何でもないよ。気にしないでくれ」
心配そうに私を見るやす菜に、笑って誤魔化す。
「そうですか。ならいいんですけど…あ、こっちは書類整理終わりましたよ」
「そうか。私も丁度終わったところだよ。やす菜が手伝ってくれたお陰で、早く終わったよ。ありがとう。」
「いいえ。この学園で色々なお手伝いをするのが私の仕事ですから。いつでも言ってください!」
そう言ってにっこり笑うやす菜に、ドキッとした。
…最近、やす菜のことを一人の女の子として見ている自分に気が付いた。
…まあ、自分の気持ちに気付いたからと言って、何が変わったわけでもないのだが…
(でも、今日は…)
チラッと扉の方を見る。
…山田先生は居ないし、この部屋の付近に人の気配は無い。
「それで…」
私は勇気を振り絞って言った。
「お礼と言ってはなんだが…今度の休み、一緒に花見に行かないか?」
それを聞いたやす菜はパチ、パチと瞬きを数回して、小首を傾げた。
「お花見…ですか?」
「うん。ちょうど、穴場を知っているんだ。やす菜がもし良かったらだけど…」
「お花見かぁ…」
思案するように、やす菜は呟く。
どんな返答が返ってくるのか内心ドキドキだった。
「お花見といえば売り子のアルバイトばかりで、桜をゆっくり見たことなかったんです。…きっと、綺麗ですよね」
「そうだね。今ならきっと満開かな」
「いいなぁ…土井先生、私お花見行きたいです!連れてってくれますか?」
「、ああ!もちろん!!」
心の中でガッツポーズを取る。
「お弁当、たくさん作らなきゃ…そうだ!みんなに何がいいか聞いてこよう!」
「え、みんな?」
立ち上がり、部屋を出て行こうとしたやす菜の腕を掴んだ。
「誰に聞きに行くんだ?」
「誰って…一年は組のみんなですよ。お花見って、みんなで行くんでしょう?」
ニコニコと笑顔で言われたやす菜の言葉に、ビシッと動きが固まった。
…やす菜はお花見を一年は組の遠足のようなもので行くのだと勘違いしている。
「ち、違うんだ。やす菜…」
慌てて、訂正をする。
「『一緒に花見に行こう』と言ったのは…二人っきりで。という意味なんだ…」
やす菜がキョトンとした。
「……それって…つまり…」
「いわゆる…デートのお誘い。というやつなんだが…」
「…………」
一拍置いて、カァッとやす菜の顔が赤くなった。
それにつられたのか、私まで顔が熱くなる。
「え、あの…」
「い、嫌なら…いいんだが…」
「嫌なんて、そんな!…とても…嬉しいです」
赤く染まった顔ではにかむ様に、やす菜が笑う。それにまたドキッと胸が高鳴った。
すとん。とやす菜が私の前に正座する。
「お弁当…」
「え?」
「お弁当のおかず、何がいいですか?何でも言って下さい。腕によりをかけて作りますから」
「私は練り物が入っていなければ何でもいいんだが…」
そう言うと、やす菜はちょっと困ったように笑った。
「何でもいい。が一番困るんですよ…何かありませんか?食べたいもの」
「そうだなぁ…」
う~ん…と悩んでいると、「はい!」と元気な声が聞こえた。
「僕、卵焼き!」
「僕、唐揚げ!」
「タコさんウインナー!」
「巻き寿司!」
「お弁当の定番メニューだなぁ」
「やす菜さん、リンゴのウサギも入れて下さい!」
「うん。いいわよ」
「姉ちゃんの作ったもんなら何でもいいよ」
「だから、何でもいいが一番困る…って、え?」
気が付くと、部屋には一年は組の生徒が大集合していた…
「お前達!どうして…「先生」
きり丸がずいっと私とやす菜の間に割って入る。
「…俺にバレずに姉ちゃんとデートできると思っているんすか?
…100年早いっすよ」
へっ。ときり丸が鼻で笑う。
「は……はは……」
「お花見、楽しみだねー!」
「ねー」
「先生、おやつはいくらまでですかー?」
「バナナはおやつに入りますかー?」
「おいおい…」
きゃいきゃい、とはしゃぐ生徒達に、苦笑する。
やす菜を見ると、その光景を楽しそうに見ていた。
その横顔を見つめていると、不意にやす菜がこちらを向き、ニコッと笑った。
皆にバレないように、そっと、君の手を握る。
「紅葉狩りは、二人っきりで行こう」
こっそりと耳打ちすると、やす菜は頬を赤く染めながら、「はい」と頷いた。
後書き→
山田先生はいらっしゃらない。急に出張が入ってしまったのだ。
だが、部屋には私以外にもう一人居た。
チラリ。と、向かい側に座るやす菜を見た。
書類の量があまりにも多かったため、やす菜に手伝いを頼んだのだ。
やす菜は手元の紙を整理するのに集中しているため、私が見ている事に気が付いていない。
(睫毛長いな…)
やす菜の顔を見ながら、無意識にそんなことを思ってしまい、慌てて首を横に振った。
(何考えているんだ…私は!!)
「土井先生…」
「な、何だい!?」
突然声を掛けられ、危うく声が裏返りそうになってしまった。
「いえ…首を振っていたので、どうかしたのかなって…お疲れですか?」
「いや、何でもないよ。気にしないでくれ」
心配そうに私を見るやす菜に、笑って誤魔化す。
「そうですか。ならいいんですけど…あ、こっちは書類整理終わりましたよ」
「そうか。私も丁度終わったところだよ。やす菜が手伝ってくれたお陰で、早く終わったよ。ありがとう。」
「いいえ。この学園で色々なお手伝いをするのが私の仕事ですから。いつでも言ってください!」
そう言ってにっこり笑うやす菜に、ドキッとした。
…最近、やす菜のことを一人の女の子として見ている自分に気が付いた。
…まあ、自分の気持ちに気付いたからと言って、何が変わったわけでもないのだが…
(でも、今日は…)
チラッと扉の方を見る。
…山田先生は居ないし、この部屋の付近に人の気配は無い。
「それで…」
私は勇気を振り絞って言った。
「お礼と言ってはなんだが…今度の休み、一緒に花見に行かないか?」
それを聞いたやす菜はパチ、パチと瞬きを数回して、小首を傾げた。
「お花見…ですか?」
「うん。ちょうど、穴場を知っているんだ。やす菜がもし良かったらだけど…」
「お花見かぁ…」
思案するように、やす菜は呟く。
どんな返答が返ってくるのか内心ドキドキだった。
「お花見といえば売り子のアルバイトばかりで、桜をゆっくり見たことなかったんです。…きっと、綺麗ですよね」
「そうだね。今ならきっと満開かな」
「いいなぁ…土井先生、私お花見行きたいです!連れてってくれますか?」
「、ああ!もちろん!!」
心の中でガッツポーズを取る。
「お弁当、たくさん作らなきゃ…そうだ!みんなに何がいいか聞いてこよう!」
「え、みんな?」
立ち上がり、部屋を出て行こうとしたやす菜の腕を掴んだ。
「誰に聞きに行くんだ?」
「誰って…一年は組のみんなですよ。お花見って、みんなで行くんでしょう?」
ニコニコと笑顔で言われたやす菜の言葉に、ビシッと動きが固まった。
…やす菜はお花見を一年は組の遠足のようなもので行くのだと勘違いしている。
「ち、違うんだ。やす菜…」
慌てて、訂正をする。
「『一緒に花見に行こう』と言ったのは…二人っきりで。という意味なんだ…」
やす菜がキョトンとした。
「……それって…つまり…」
「いわゆる…デートのお誘い。というやつなんだが…」
「…………」
一拍置いて、カァッとやす菜の顔が赤くなった。
それにつられたのか、私まで顔が熱くなる。
「え、あの…」
「い、嫌なら…いいんだが…」
「嫌なんて、そんな!…とても…嬉しいです」
赤く染まった顔ではにかむ様に、やす菜が笑う。それにまたドキッと胸が高鳴った。
すとん。とやす菜が私の前に正座する。
「お弁当…」
「え?」
「お弁当のおかず、何がいいですか?何でも言って下さい。腕によりをかけて作りますから」
「私は練り物が入っていなければ何でもいいんだが…」
そう言うと、やす菜はちょっと困ったように笑った。
「何でもいい。が一番困るんですよ…何かありませんか?食べたいもの」
「そうだなぁ…」
う~ん…と悩んでいると、「はい!」と元気な声が聞こえた。
「僕、卵焼き!」
「僕、唐揚げ!」
「タコさんウインナー!」
「巻き寿司!」
「お弁当の定番メニューだなぁ」
「やす菜さん、リンゴのウサギも入れて下さい!」
「うん。いいわよ」
「姉ちゃんの作ったもんなら何でもいいよ」
「だから、何でもいいが一番困る…って、え?」
気が付くと、部屋には一年は組の生徒が大集合していた…
「お前達!どうして…「先生」
きり丸がずいっと私とやす菜の間に割って入る。
「…俺にバレずに姉ちゃんとデートできると思っているんすか?
…100年早いっすよ」
へっ。ときり丸が鼻で笑う。
「は……はは……」
「お花見、楽しみだねー!」
「ねー」
「先生、おやつはいくらまでですかー?」
「バナナはおやつに入りますかー?」
「おいおい…」
きゃいきゃい、とはしゃぐ生徒達に、苦笑する。
やす菜を見ると、その光景を楽しそうに見ていた。
その横顔を見つめていると、不意にやす菜がこちらを向き、ニコッと笑った。
皆にバレないように、そっと、君の手を握る。
「紅葉狩りは、二人っきりで行こう」
こっそりと耳打ちすると、やす菜は頬を赤く染めながら、「はい」と頷いた。
後書き→