優しさ半分こ
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「う~ん…」
「う~ん…」
「どうしましょうか…」
「どうしましょう…」
「迷いますね…」
「迷っちゃうわね…」
雷蔵とやす菜は今一緒に街に買い物に出掛けていた。
今回は雷蔵が図書委員会の買い出し当番だったので、それにやす菜も手伝いで付いてきたのだ。
そして、冒頭から雷蔵とやす菜が二人して何を悩んでいるのかというと…
「お饅頭にするか…お団子にするか…」
「大福も捨てがたいわね…」
「何がいいですかねぇ」
「ねぇ…皆は何が食べたいかしら?」
図書委員会の皆で食べるおやつを何にするかで悩んでいた。
新しく購入した本を受け取りに行くついでに、余ったお金で図書委員会でお茶をするためのお茶菓子も買ってきてもいいと顧問である松千代先生に言われたため、二人でお店に並んだお菓子を吟味している真っ最中なのだ。
「ここのお菓子はみんな美味しいのよね…」
「はい。僕は食べたことありませんが、見るからに美味しそうです」
「特にお薦めがこのお店特製のお饅頭なんだけど…」
「じゃあ、お饅頭にしますか?」
「ところがそのお饅頭が曲者なのよ。…種類がざっと二十種類」
「二十種類!?」
「普通の小倉餡のつぶ餡こし餡から大納言、白、胡麻、鶯、味噌、南瓜、さつま芋、抹茶、ずんだ…しかも季節によっては桜や梅とかのその時期に合った餡子を使ってお饅頭を作っているから種類が豊富なの」
「お饅頭だけでどれにしようか迷っちゃいますね…」
「ホントに…どうしましょう…」
再び、「う~ん」と二人は悩みはじめた。
「こうなったらもう、あれで決めちゃいましょう!」
「あれ?」
「そう!あれ」
「!わかりました!!あれですね!!」
「ええ。やるわよ、雷蔵君」
「はい!」
「せーの」
「「ど・れ・に・し・よ・う・か・な・て・ん・の・か・み・さ・ま・の・ゆ・う・と・お・り!」」
そして二人の指が止まったのは…
「薩摩大納言!」
「じゃあ、これにしましょう。すみません!このお饅頭七個下さい!!」
「はいよ」
先程から二人の様子を微笑ましく思いながら見ていた店番のお婆さんはニコニコ笑いながらお饅頭を包んでくれた。
「…あら?お婆さん…お饅頭二個多いですけど…」
「おまけだよ」
先程と変わらずニコニコと笑いながらお婆さんは言った。
「たくさん買ってくれたからね。特別さ」
「わぁ!いいんですか?」
「そっちのお兄ちゃんと仲良くお食べ」
そう言われ、雷蔵とやす菜は顔を見合わせちょっと笑い合い、
「「はい。ありがとうございます」」
と声を揃えて言った。
「何か、得しちゃったね」
「はい。どうしましょうか?お饅頭、僕達で仲良く食べてって言われましたけど…」
「うーん…どうしようか…?乱太郎君やしんべヱ君にでもあげちゃう?」
「あっ!」
「「!?」」
2人の目の前で子供が転んだ。
「大丈夫?」
2人は子供に駆け寄り、雷蔵は抱き起こした。
「うん…大丈夫…あっ…」
「ん?」
子供の服に付いた土を払ってあげていると子供がある一点を見つめて動きを止めた。
その視線の先を辿ると、地面に落ちて砂まみれになった団子があった。
それを見つめていた子供はみるみるうちに目に涙を溜め、今にも泣き出しそうだ。
「ああ~泣かないで~!!」
今にも泣いてしまいそうな子供に、雷蔵が慌てていると…
「はい」
やす菜が包みから饅頭を一つ取り出して差し出した。
「代わりにこれあげる。お団子じゃないけど、このお饅頭も美味しいわよ」
そう言ってにっこり笑うと懐から手拭いを取り出し子供の涙を拭いてあげた。
「せっかく美味しいお饅頭なんだもの。食べるなら泣いている顔じゃなくて、笑って食べた方がもっと美味しいわ」
「だからもう泣かないでね。」と優しく微笑むやす菜に、子供は笑って「うん!」と頷いた。
「お姉ちゃん。ありがとう!!」
「どういたしまして。今度は転ばないようにね」
「うん!」
満面の笑みを浮かべ、子供は去っていった。
それに軽く手を振りながら見送った。
「ごめんね」
「?何をですか?」
「お饅頭…勝手にあげちゃって…」
「ああ…いいえ。全然大丈夫ですよ」
少し申し訳なさそうな顔をするやす菜に、雷蔵は笑って首を横に振る。
「おまけで余分に貰ってましたし」
「…でも、図書委員会の予算で買ったものだわ」
「そこは気にしなくてもいいと思いますよ。それに…きっとやす菜さんは、余分に貰ってなくても自分の分のお饅頭をあの子にあげたでしょう?」
雷蔵にそう言われたやす菜は少し目を見開いて雷蔵を見たあと目線を前に戻して「そうね~…」と呟いた。
「うん…たぶん、あげていたわ。私、子供の涙に弱いから…
昔から、こうなの。見知らぬ子でも、目の前で自分より小さな子が泣いたら放っておけなくて…お金を遣り繰りしてきり丸とたまの贅沢で買ったお団子を、泣いている子にあげちゃうことも結構あったなぁ…」
「それで、きり丸には『俺達が買ったのに他の奴にあげちゃうなんて!!』って、しょっちゅう怒られたっけ…」と、昔のことを思い出しながら、やす菜は苦笑した。
「昔から、やす菜さんは優しかったんですね」
その言葉に、やす菜は雷蔵の顔を見て目を瞬かせたが、すぐにふるふると首を横に振った。
「全然。だって…ただ単に私が見たくないだけなんだもの」
そう言うやす菜の横顔を、雷蔵はただジ…ッと見詰める。
「それに、自分のすぐ目の前で泣いている子には、泣かないでって慰めることもできるけど、知らない場所で泣いている子にはできないし…」
「それは、誰だってそうだと思いますよ。」
完全無欠の聖人で、あらゆる所へ飛んでいける能力でもない限り世界中の何処かで泣いている子供の涙を止めることなんて出来ないだろう。
「だから、やす菜さんは十分、優しいですよ」
にっこりと、雷蔵が笑う。
やす菜はそれに照れたように笑い、「ありがとう」と言った。
「やす菜さん。お饅頭の包み、貸して貰ってもいいですか?」
「ええ、いいわよ」
「はい」とやす菜が包みを差し出すと、雷蔵はそれを受け取り、中から饅頭を1個取りだした。
そして…
「はい。どうぞ」
「え?」
雷蔵はその取り出した饅頭を半分に割り、その片方をやす菜に差し出した。
「おまけでもらったもう1個のお饅頭、僕たちで食べちゃいましょう」
「ええ!?」
にこにこと饅頭を差し出す雷蔵。
やす菜はそんな雷蔵と、差し出された饅頭を交互に見比べた。
「ほら、1個だけ多かったら喧嘩になっちゃいますし」
「え…なら、私はいいよ。1個あげちゃったし…それは雷蔵君が食べて」
「お店のお婆さんは『二人で仲良くお食べ』って言ってくれたんですから」
雷蔵はやす菜にふわっ。という効果音が似合いそうな笑顔を向けて言った。
「だから、僕と半分こしましょう?」
そんな雷蔵の笑顔を見て、やす菜もつられたように笑った。
「…そうね。じゃあ、貰っちゃおうかな」
雷蔵から、半分に分けた饅頭の片方を受け取る。
「他のみんなには内緒で、二人で先に味見しちゃいましょう」
「ふふっ、そうね。みんなには内緒…ね」
そう言うと、二人はお互いの顔を見てささやかな悪戯を成功させた子供のように笑い合った。
優しさ半分こ
(二人で分けて食べたお饅頭は、とても甘くて美味しかった)
「う~ん…」
「どうしましょうか…」
「どうしましょう…」
「迷いますね…」
「迷っちゃうわね…」
雷蔵とやす菜は今一緒に街に買い物に出掛けていた。
今回は雷蔵が図書委員会の買い出し当番だったので、それにやす菜も手伝いで付いてきたのだ。
そして、冒頭から雷蔵とやす菜が二人して何を悩んでいるのかというと…
「お饅頭にするか…お団子にするか…」
「大福も捨てがたいわね…」
「何がいいですかねぇ」
「ねぇ…皆は何が食べたいかしら?」
図書委員会の皆で食べるおやつを何にするかで悩んでいた。
新しく購入した本を受け取りに行くついでに、余ったお金で図書委員会でお茶をするためのお茶菓子も買ってきてもいいと顧問である松千代先生に言われたため、二人でお店に並んだお菓子を吟味している真っ最中なのだ。
「ここのお菓子はみんな美味しいのよね…」
「はい。僕は食べたことありませんが、見るからに美味しそうです」
「特にお薦めがこのお店特製のお饅頭なんだけど…」
「じゃあ、お饅頭にしますか?」
「ところがそのお饅頭が曲者なのよ。…種類がざっと二十種類」
「二十種類!?」
「普通の小倉餡のつぶ餡こし餡から大納言、白、胡麻、鶯、味噌、南瓜、さつま芋、抹茶、ずんだ…しかも季節によっては桜や梅とかのその時期に合った餡子を使ってお饅頭を作っているから種類が豊富なの」
「お饅頭だけでどれにしようか迷っちゃいますね…」
「ホントに…どうしましょう…」
再び、「う~ん」と二人は悩みはじめた。
「こうなったらもう、あれで決めちゃいましょう!」
「あれ?」
「そう!あれ」
「!わかりました!!あれですね!!」
「ええ。やるわよ、雷蔵君」
「はい!」
「せーの」
「「ど・れ・に・し・よ・う・か・な・て・ん・の・か・み・さ・ま・の・ゆ・う・と・お・り!」」
そして二人の指が止まったのは…
「薩摩大納言!」
「じゃあ、これにしましょう。すみません!このお饅頭七個下さい!!」
「はいよ」
先程から二人の様子を微笑ましく思いながら見ていた店番のお婆さんはニコニコ笑いながらお饅頭を包んでくれた。
「…あら?お婆さん…お饅頭二個多いですけど…」
「おまけだよ」
先程と変わらずニコニコと笑いながらお婆さんは言った。
「たくさん買ってくれたからね。特別さ」
「わぁ!いいんですか?」
「そっちのお兄ちゃんと仲良くお食べ」
そう言われ、雷蔵とやす菜は顔を見合わせちょっと笑い合い、
「「はい。ありがとうございます」」
と声を揃えて言った。
「何か、得しちゃったね」
「はい。どうしましょうか?お饅頭、僕達で仲良く食べてって言われましたけど…」
「うーん…どうしようか…?乱太郎君やしんべヱ君にでもあげちゃう?」
「あっ!」
「「!?」」
2人の目の前で子供が転んだ。
「大丈夫?」
2人は子供に駆け寄り、雷蔵は抱き起こした。
「うん…大丈夫…あっ…」
「ん?」
子供の服に付いた土を払ってあげていると子供がある一点を見つめて動きを止めた。
その視線の先を辿ると、地面に落ちて砂まみれになった団子があった。
それを見つめていた子供はみるみるうちに目に涙を溜め、今にも泣き出しそうだ。
「ああ~泣かないで~!!」
今にも泣いてしまいそうな子供に、雷蔵が慌てていると…
「はい」
やす菜が包みから饅頭を一つ取り出して差し出した。
「代わりにこれあげる。お団子じゃないけど、このお饅頭も美味しいわよ」
そう言ってにっこり笑うと懐から手拭いを取り出し子供の涙を拭いてあげた。
「せっかく美味しいお饅頭なんだもの。食べるなら泣いている顔じゃなくて、笑って食べた方がもっと美味しいわ」
「だからもう泣かないでね。」と優しく微笑むやす菜に、子供は笑って「うん!」と頷いた。
「お姉ちゃん。ありがとう!!」
「どういたしまして。今度は転ばないようにね」
「うん!」
満面の笑みを浮かべ、子供は去っていった。
それに軽く手を振りながら見送った。
「ごめんね」
「?何をですか?」
「お饅頭…勝手にあげちゃって…」
「ああ…いいえ。全然大丈夫ですよ」
少し申し訳なさそうな顔をするやす菜に、雷蔵は笑って首を横に振る。
「おまけで余分に貰ってましたし」
「…でも、図書委員会の予算で買ったものだわ」
「そこは気にしなくてもいいと思いますよ。それに…きっとやす菜さんは、余分に貰ってなくても自分の分のお饅頭をあの子にあげたでしょう?」
雷蔵にそう言われたやす菜は少し目を見開いて雷蔵を見たあと目線を前に戻して「そうね~…」と呟いた。
「うん…たぶん、あげていたわ。私、子供の涙に弱いから…
昔から、こうなの。見知らぬ子でも、目の前で自分より小さな子が泣いたら放っておけなくて…お金を遣り繰りしてきり丸とたまの贅沢で買ったお団子を、泣いている子にあげちゃうことも結構あったなぁ…」
「それで、きり丸には『俺達が買ったのに他の奴にあげちゃうなんて!!』って、しょっちゅう怒られたっけ…」と、昔のことを思い出しながら、やす菜は苦笑した。
「昔から、やす菜さんは優しかったんですね」
その言葉に、やす菜は雷蔵の顔を見て目を瞬かせたが、すぐにふるふると首を横に振った。
「全然。だって…ただ単に私が見たくないだけなんだもの」
そう言うやす菜の横顔を、雷蔵はただジ…ッと見詰める。
「それに、自分のすぐ目の前で泣いている子には、泣かないでって慰めることもできるけど、知らない場所で泣いている子にはできないし…」
「それは、誰だってそうだと思いますよ。」
完全無欠の聖人で、あらゆる所へ飛んでいける能力でもない限り世界中の何処かで泣いている子供の涙を止めることなんて出来ないだろう。
「だから、やす菜さんは十分、優しいですよ」
にっこりと、雷蔵が笑う。
やす菜はそれに照れたように笑い、「ありがとう」と言った。
「やす菜さん。お饅頭の包み、貸して貰ってもいいですか?」
「ええ、いいわよ」
「はい」とやす菜が包みを差し出すと、雷蔵はそれを受け取り、中から饅頭を1個取りだした。
そして…
「はい。どうぞ」
「え?」
雷蔵はその取り出した饅頭を半分に割り、その片方をやす菜に差し出した。
「おまけでもらったもう1個のお饅頭、僕たちで食べちゃいましょう」
「ええ!?」
にこにこと饅頭を差し出す雷蔵。
やす菜はそんな雷蔵と、差し出された饅頭を交互に見比べた。
「ほら、1個だけ多かったら喧嘩になっちゃいますし」
「え…なら、私はいいよ。1個あげちゃったし…それは雷蔵君が食べて」
「お店のお婆さんは『二人で仲良くお食べ』って言ってくれたんですから」
雷蔵はやす菜にふわっ。という効果音が似合いそうな笑顔を向けて言った。
「だから、僕と半分こしましょう?」
そんな雷蔵の笑顔を見て、やす菜もつられたように笑った。
「…そうね。じゃあ、貰っちゃおうかな」
雷蔵から、半分に分けた饅頭の片方を受け取る。
「他のみんなには内緒で、二人で先に味見しちゃいましょう」
「ふふっ、そうね。みんなには内緒…ね」
そう言うと、二人はお互いの顔を見てささやかな悪戯を成功させた子供のように笑い合った。
優しさ半分こ
(二人で分けて食べたお饅頭は、とても甘くて美味しかった)