貴女色の紅
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街に出掛けたときに通りがかった紅屋の店頭で、一つの紅が目に留まった。
鮮やかではあるが派手すぎず、優しい色合いのその紅が、やす菜さんに似合いそうだと思った。
そう思って、その紅を購入したものの、その後すごく困った。
…俺があの人に紅を贈ってもいいのだろうか?
やす菜さんと俺はそれなりに親しい間柄ではあるが、紅などを贈るような関係ではない。
…恋人でもない男から紅を貰って、嬉しいものだろうか…?
悩んだ末に、結局この紅は自分で使うことにした。
翌日、女装の授業があったので、早速その紅を使うことにした。
(…うーん…)
紅を差した自分の顔を鏡で見て、やっぱり似合わないな…と思った。
ここで一旦授業終了の鐘が鳴る。
次の時間は、この格好で街に出ての実習なので今の内に厠に行っておこうと思い立ち上がる。
「あれ?久々知君?」
廊下を歩いているとやす菜さんと出くわした。
「あ、やす菜さん。こんにちわ」
俺が挨拶をするとやす菜さんも笑って「こんにちわ」と返してくれた。
「今は女装の授業中なのね」
俺の格好を見てやす菜さんが言った。
「はい。この後街に出るんですよ」
「そうなの。久々知君、とっても綺麗だからすれ違う人みんな振り返るわよ」
「そんなことありませんよ」
「ううん。久々知君睫毛長いし、色も白いし…女の私よりもずっと可愛いわ」
「いやいや…」
さすがにそれは褒めすぎだ。
やす菜さんの方が可愛いに決まってる。
「でも…今日は紅の色が前見たときと違うのね…前の方が久々知君には似合ってたかな」
「あ、これは…」
紅のことを指摘され、なんと言おうか困った。
実は貴方のために買いました…なんて…
(言えるわけがない…)
返す言葉を探していると…
「アターック!!」
…少し離れた所で、七松先輩の声が聞こえた。そして…
「ぐぁっ!!」
七松先輩がアタックしたと思われる、バレーボールが俺に向かって飛んできた。
後頭部に直撃したバレーボール。
その勢いのまま、俺は前に倒れ込む。
「え…」
バターンッ
俺はそのまま床に倒れ込んだ。
だが、体の下にあったのは木の床の感触ではなく…柔らかい感触…
俺はやす菜さんを巻き込んで倒れてしまったのだ。
…つまり今、俺がやす菜さんを押し倒している状態…しかも…
俺と、やす菜さんの唇が、重なっている…
「うわぁ!!すすす、すみません!!」
俺は慌ててやす菜さんの上から退いて謝った。
…事故とはいえ…やす菜さんと…
そう思うと、自分の顔が熱くなるのがハッキリと感じられた。
「…………」
体を起こしたやす菜さんは黙ったまま俯いていた。
「…やす菜…さん?」
さっきのは不可抗力とはいえ…やっぱり怒っているのだろうか…
そう思いながら顔を覗き込むと…やす菜さんは顔を赤く染めていた。
…よく見ると、耳まで真っ赤だ…
「…やす菜さん?」
もう一度、声を掛けるとピクッと体が跳ね、俺の方に顔を向けてくれた。
(あ…)
その顔を見て、俺は思った。
「あ、の…久々知…君…」
「…綺麗だ…」
「…え?」
気付いたら、思ったことを口に出していた。
俺は、やす菜さんに手を伸ばした。
「やっぱり…思った通りだ。よく、似合います」
やす菜さんの唇には、俺が買った紅が付いていた。
唇が重なった拍子に付いてしまったのだろう。
親指で、やす菜さんの唇をそっとなぞる。
「実はこの紅、やす菜さんに似合いそうだな~って思って買ったんですよ。
…よかったら、貰ってくれませんか?」
ちょっと使っちゃいましたけど。と言って苦笑する。
「えっと…いいの?」
「はい。ぜひ、やす菜さんに使って頂きたいです」
やす菜さんは突然の俺の申し出に戸惑っていたがすぐ、はにかむように笑って「ありがとう」と言ってくれた。
貴女色の紅
(次の日、その紅を付けてきてくれた)
(俺と目が合ったとき、照れたように笑った貴女が)
(より一層、愛しく感じた)
鮮やかではあるが派手すぎず、優しい色合いのその紅が、やす菜さんに似合いそうだと思った。
そう思って、その紅を購入したものの、その後すごく困った。
…俺があの人に紅を贈ってもいいのだろうか?
やす菜さんと俺はそれなりに親しい間柄ではあるが、紅などを贈るような関係ではない。
…恋人でもない男から紅を貰って、嬉しいものだろうか…?
悩んだ末に、結局この紅は自分で使うことにした。
翌日、女装の授業があったので、早速その紅を使うことにした。
(…うーん…)
紅を差した自分の顔を鏡で見て、やっぱり似合わないな…と思った。
ここで一旦授業終了の鐘が鳴る。
次の時間は、この格好で街に出ての実習なので今の内に厠に行っておこうと思い立ち上がる。
「あれ?久々知君?」
廊下を歩いているとやす菜さんと出くわした。
「あ、やす菜さん。こんにちわ」
俺が挨拶をするとやす菜さんも笑って「こんにちわ」と返してくれた。
「今は女装の授業中なのね」
俺の格好を見てやす菜さんが言った。
「はい。この後街に出るんですよ」
「そうなの。久々知君、とっても綺麗だからすれ違う人みんな振り返るわよ」
「そんなことありませんよ」
「ううん。久々知君睫毛長いし、色も白いし…女の私よりもずっと可愛いわ」
「いやいや…」
さすがにそれは褒めすぎだ。
やす菜さんの方が可愛いに決まってる。
「でも…今日は紅の色が前見たときと違うのね…前の方が久々知君には似合ってたかな」
「あ、これは…」
紅のことを指摘され、なんと言おうか困った。
実は貴方のために買いました…なんて…
(言えるわけがない…)
返す言葉を探していると…
「アターック!!」
…少し離れた所で、七松先輩の声が聞こえた。そして…
「ぐぁっ!!」
七松先輩がアタックしたと思われる、バレーボールが俺に向かって飛んできた。
後頭部に直撃したバレーボール。
その勢いのまま、俺は前に倒れ込む。
「え…」
バターンッ
俺はそのまま床に倒れ込んだ。
だが、体の下にあったのは木の床の感触ではなく…柔らかい感触…
俺はやす菜さんを巻き込んで倒れてしまったのだ。
…つまり今、俺がやす菜さんを押し倒している状態…しかも…
俺と、やす菜さんの唇が、重なっている…
「うわぁ!!すすす、すみません!!」
俺は慌ててやす菜さんの上から退いて謝った。
…事故とはいえ…やす菜さんと…
そう思うと、自分の顔が熱くなるのがハッキリと感じられた。
「…………」
体を起こしたやす菜さんは黙ったまま俯いていた。
「…やす菜…さん?」
さっきのは不可抗力とはいえ…やっぱり怒っているのだろうか…
そう思いながら顔を覗き込むと…やす菜さんは顔を赤く染めていた。
…よく見ると、耳まで真っ赤だ…
「…やす菜さん?」
もう一度、声を掛けるとピクッと体が跳ね、俺の方に顔を向けてくれた。
(あ…)
その顔を見て、俺は思った。
「あ、の…久々知…君…」
「…綺麗だ…」
「…え?」
気付いたら、思ったことを口に出していた。
俺は、やす菜さんに手を伸ばした。
「やっぱり…思った通りだ。よく、似合います」
やす菜さんの唇には、俺が買った紅が付いていた。
唇が重なった拍子に付いてしまったのだろう。
親指で、やす菜さんの唇をそっとなぞる。
「実はこの紅、やす菜さんに似合いそうだな~って思って買ったんですよ。
…よかったら、貰ってくれませんか?」
ちょっと使っちゃいましたけど。と言って苦笑する。
「えっと…いいの?」
「はい。ぜひ、やす菜さんに使って頂きたいです」
やす菜さんは突然の俺の申し出に戸惑っていたがすぐ、はにかむように笑って「ありがとう」と言ってくれた。
貴女色の紅
(次の日、その紅を付けてきてくれた)
(俺と目が合ったとき、照れたように笑った貴女が)
(より一層、愛しく感じた)