今度見るのは、悪夢ではなく…
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「っ…はぁっ…!!」
まだ陽も昇らず、辺りは暗闇と静寂に包まれている時間に目を覚ました。
全身にぐっしょり汗をかいている。
上体を起こし、呼吸を整えていると、隣で寝ていた雷蔵が「う~ん?」と唸ってうっすらを目を開いた。
「悪い。起こしたか?」
「ううん…平気…。三郎…どうかしたの?」
「いや…何でもない…」
少し風に当たってくる。と言って、私は部屋を出ると、誰にも出くわさないように、屋根の上に登り、普段から誰も来ない裏庭に降りた。
震える両手を、見つめる。
…掌に生々しく、感覚が残っている。
「ぁっ…」
…細い、女の首を絞める感覚…
俺に首を絞められている女は苦しそうに呻き、顔を歪める。
その、女の顔は…
グッ…と両掌を握り締める。
「…あれは、夢だ…」
闇の中、静かに呟く。
「だから、忘れろ…」
自分に言い聞かせるように、言葉を発する。
だが、体の震えは、一向に止まらない。
頭の中に甦る、先程の夢の情景。
「…やめろ」
両手で頭を抱え、ギリッと歯を食い縛る。
・・・・・・
「あの人の顔で…そんな表情をするな…!!」
何度言っても、消えない…
くそっ…と舌打ちをして、俺は夜の庭園に立ち尽くした。
結局、そのまま眠らずに朝を迎えた。
授業を受ける気にもなれなくて、裏庭の角にある木の枝に座り、幹にもたれかかっていた。
「…三郎君?」
木の下から、声が掛けられる。…それは、今、一番聞きたくない声だった。
「…やす菜さん…」
声のした方に顔を向ければ、箒を手に持ったやす菜さんが俺を見上げていた。
「どうしたの?こんなところで…授業は?」
「サボりました。」
「そうなの…そんなときもあるわよね。」
ふわり。という効果音が似合いそうな、優しい微笑みをこの人は浮かべる。
いつもは胸が温かくなるこの微笑みも、今は見たくなかった。
「…」
黙り込み、寝たふりをすることにした。
俺が寝たと思えば、やす菜さんはこの場を去るだろうと思ったからだ。
だが俺の考えは外れ、去るどころかやす菜さんは俺のいる木の根元に座り込んでしまった。
「…お仕事に行かなくていいんですか?」
「うん。ちょうど、終わったところだからちょっと休憩」
「…そうですか……」
休憩ならば、食堂にでも行ってお茶でも飲めばいいのに…
いつもならやす菜さんが一緒にいてくれると嬉しいのに、今は早くこの場から立ち去って欲しいと思ってしまう。
しばらく沈黙が流れたが、不意に、やす菜さんが「三郎君」と、俺の名前を呼んだ。
「…何か、あったの?」
「!?」
表には出さなかったが、突然そう言われ驚いた。
「…何で、何かあったと思うんです?」
「いつもと、微妙に雰囲気が違うから…」
「…………」
いつも道理に振る舞ったはずだったのだが…気付かれていたらしい…
この人は人の些細な変化にもよく気が付く。
「よかったら、私に話してみない?誰かに話せば…少しは気が晴れると思うよ」
「…本当に、何でもないんです。ただ、悪い夢を見ただけです」
「悪い夢?」
「はい」
「…どんな夢か…聞いてもいい?」
「………」
夢の内容を聞かれて、黙り込む。
「…すみません…どんな夢かは言えません」
「…そんなに、酷い夢だったの?」
「はい。きっと聞いたら…俺のこと嫌いになると思います」
「ええ?」
「やだなぁ」と少々可笑しそうにやす菜さんは言った。
「夢の内容を聞いたくらいで三郎君のこと嫌いになったりしないよ」
「わからないですよ。だって…」
俺が見たのは…
(貴女を…殺す夢だから……)
その言葉を口には出さずに、葉の間から差し込む柔らかい陽の光に目を細めた。