さあ、僕の名を呼んで!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…不公平だな」
「え?」
暖かな陽気の今日。忍術学年の六年生の仙蔵・文次郎・小平太・長次・伊作・留三郎、そして、彼らと同じ歳で忍術学園でお手伝いとして働いている少女・やす菜は仙蔵と文次郎の部屋に集まりお茶を飲んでいた。
「不公平って…何がだ?」
先ほどポツリと呟かれた仙蔵の言葉は部屋にいる者全員の耳に入ったらしい。留三郎が仙蔵に聞き返す。
「あ、もしかしてお饅頭が足りなかった?人数分貰ってきたはずなのに…おかしいなぁ…」
その中でやす菜はお茶請けに貰ってきた饅頭が足りないのかと思ったらしく、「よかったら私のお饅頭半分食べる?」と聞いていた。
「…やす菜」
「何?あ…私とお饅頭半分こするのはいや?」
「そうではない」
小首を傾げるやす菜の前に、仙蔵は移動する。
「やす菜。私のことを呼んでみろ」
「?立花君」
「では、あれは?」
スッと仙蔵は文次郎を指差す。
「潮江君」
「あれは?」
「中在家君」
「あれは?」
「七松君」
そして順番に部屋にいる六年生を指差していく。
「あれは?」
「食満君」
「あれは?」
「伊作君」
「それだ」
「え?」
疑問符を浮かべたやす菜を、びしっ!と仙蔵は指差す。
「何故、伊作だけ名前呼びなんだ?」
その言葉にやす菜と伊作はぱちくりと目を瞬かせた。
「何故って…」
「言われても…」
二人は顔を見合わせた。
「初め、私は伊作君のこと『善法寺君』って呼んでたわよね」
「うん。で、僕は『やす菜さん』って呼んでた」
「私が伊作君を名前で呼ぶようになって、伊作君が私を呼び捨てにするようになったのはやっぱりあれかな…私、長いこと医務室でお世話になってたから」
「保健委員の僕とは頻繁に顔を合わせてたし」
「自然と、話をしている内に…」
「すっかり仲良しになっちゃったんだよねー」
「ねー」
「そこ、勝手に和やかムードを作るんじゃない。花を飛ばすな、花を」
ほわほわと和やかなオーラを出している二人に仙蔵が割って入る。
「で、本題だが、私達の中で伊作だけ名前で呼ばれているのは不公平だ。やす菜、これからは私や他の六年のことも名前で呼べ」
「…いいの?」
「構わん」
「じゃ…これからは『仙蔵君』って呼ぶね」
ニコッとやす菜は笑った。
それに仙蔵はちょっと目を見開いたがすぐにフッと笑って、「ああ。」と言った。
「今度『立花君』と呼んだらお仕置きだな」
指先でスルッとやす菜の顎を撫でて、仙蔵は妖しい笑みを浮かべる。
「お、お仕置き?」
「お前、何する気d「いいなー仙ちゃん!」
文次郎の言葉を遮り、小平太が声を上げた。
「な、やす菜!私も私も!!」
ずいっと鼻先がくっつきそうなほど顔を近づける。
「ち、近いよ…七松く「小平太!」
やす菜の言葉を遮り、自分の名前を言う。
「私の名前は、小平太だぞ!やす菜!!」
いや、知ってるけど…と思ったがじぃーっと間近で見詰められ、言うに言えなかった。
「…小平太…君」
小平太の眼力に圧倒されながらも名前を呼ぶと、小平太はにこーっと満面の笑みを浮かべ…
「やす菜ーーー!!」
「きゃーーー!?」
がばっとやす菜に抱きついた。
「やす菜、結婚しよう!!」
「けけけ、結婚!?何で!?と、いうか…く、苦しい…」
ギューッと小平太の馬鹿力で抱き締められ、ものすごく苦しい…
「こ、小平太、君…力、緩めて…」
「それは出来ない相談だー」
また、何で!?と思ったが、あまりにもきつく抱き締められ、声が出せなかった。
意識が遠のきそうになったとき、急に体を包んでいた圧迫感が消えた。
「何すんだよーちょーじー!!」
「…………」
長次が小平太の首根っこを掴み、やす菜からひっ剥がした。
「……大丈夫か?」
ボソリと呟かれた言葉に、涙目でちょっと咳き込んでいたやす菜は微笑んで「大丈夫」と言った。
「ありがとう。長次君」
「…………」
ポンッと一回、やす菜の頭に手を置くと長次は小平太を引き摺って元の位置に腰を降ろした。
心なしか、ほんのりと頬が赤くなっているように見える…
「ん~…」
やす菜は人差し指を口元に当てて少し考えた後、くるっと文次郎と留三郎の方を向いた。
「潮江君と食満君も…これからは『文次郎君』『留三郎君』って、呼んでもいい?」
「ああ…構わん」
「遠慮無く、そう呼んでくれ」
それを聞いたやす菜はぱぁっと笑顔になり、それを正面から見ていた文次郎と留三郎は顔を赤くした。
「仙蔵君、小平太君、長次君、文次郎君、留三郎君、伊作君…」
ニコニコと笑いながら、六年生の名前を声に出して呼ぶ。
「やす菜、嬉しそうだね」
あまりにも嬉しそうな顔をしているので、伊作がそう言うと、やす菜は「うん。嬉しい」と頷いた。
「みんなともっと仲良くなれる気がするから、すごく嬉しい!」
笑顔で言われたやす菜の言葉に、六年達はそれぞれ驚いた顔をした後、みんな微笑んだ。
さあ、僕の名を呼んで!
(俺達はこのまま…)
(“友達”で終わる気なんて)
(さらさらないぞ!)
後書き→
「え?」
暖かな陽気の今日。忍術学年の六年生の仙蔵・文次郎・小平太・長次・伊作・留三郎、そして、彼らと同じ歳で忍術学園でお手伝いとして働いている少女・やす菜は仙蔵と文次郎の部屋に集まりお茶を飲んでいた。
「不公平って…何がだ?」
先ほどポツリと呟かれた仙蔵の言葉は部屋にいる者全員の耳に入ったらしい。留三郎が仙蔵に聞き返す。
「あ、もしかしてお饅頭が足りなかった?人数分貰ってきたはずなのに…おかしいなぁ…」
その中でやす菜はお茶請けに貰ってきた饅頭が足りないのかと思ったらしく、「よかったら私のお饅頭半分食べる?」と聞いていた。
「…やす菜」
「何?あ…私とお饅頭半分こするのはいや?」
「そうではない」
小首を傾げるやす菜の前に、仙蔵は移動する。
「やす菜。私のことを呼んでみろ」
「?立花君」
「では、あれは?」
スッと仙蔵は文次郎を指差す。
「潮江君」
「あれは?」
「中在家君」
「あれは?」
「七松君」
そして順番に部屋にいる六年生を指差していく。
「あれは?」
「食満君」
「あれは?」
「伊作君」
「それだ」
「え?」
疑問符を浮かべたやす菜を、びしっ!と仙蔵は指差す。
「何故、伊作だけ名前呼びなんだ?」
その言葉にやす菜と伊作はぱちくりと目を瞬かせた。
「何故って…」
「言われても…」
二人は顔を見合わせた。
「初め、私は伊作君のこと『善法寺君』って呼んでたわよね」
「うん。で、僕は『やす菜さん』って呼んでた」
「私が伊作君を名前で呼ぶようになって、伊作君が私を呼び捨てにするようになったのはやっぱりあれかな…私、長いこと医務室でお世話になってたから」
「保健委員の僕とは頻繁に顔を合わせてたし」
「自然と、話をしている内に…」
「すっかり仲良しになっちゃったんだよねー」
「ねー」
「そこ、勝手に和やかムードを作るんじゃない。花を飛ばすな、花を」
ほわほわと和やかなオーラを出している二人に仙蔵が割って入る。
「で、本題だが、私達の中で伊作だけ名前で呼ばれているのは不公平だ。やす菜、これからは私や他の六年のことも名前で呼べ」
「…いいの?」
「構わん」
「じゃ…これからは『仙蔵君』って呼ぶね」
ニコッとやす菜は笑った。
それに仙蔵はちょっと目を見開いたがすぐにフッと笑って、「ああ。」と言った。
「今度『立花君』と呼んだらお仕置きだな」
指先でスルッとやす菜の顎を撫でて、仙蔵は妖しい笑みを浮かべる。
「お、お仕置き?」
「お前、何する気d「いいなー仙ちゃん!」
文次郎の言葉を遮り、小平太が声を上げた。
「な、やす菜!私も私も!!」
ずいっと鼻先がくっつきそうなほど顔を近づける。
「ち、近いよ…七松く「小平太!」
やす菜の言葉を遮り、自分の名前を言う。
「私の名前は、小平太だぞ!やす菜!!」
いや、知ってるけど…と思ったがじぃーっと間近で見詰められ、言うに言えなかった。
「…小平太…君」
小平太の眼力に圧倒されながらも名前を呼ぶと、小平太はにこーっと満面の笑みを浮かべ…
「やす菜ーーー!!」
「きゃーーー!?」
がばっとやす菜に抱きついた。
「やす菜、結婚しよう!!」
「けけけ、結婚!?何で!?と、いうか…く、苦しい…」
ギューッと小平太の馬鹿力で抱き締められ、ものすごく苦しい…
「こ、小平太、君…力、緩めて…」
「それは出来ない相談だー」
また、何で!?と思ったが、あまりにもきつく抱き締められ、声が出せなかった。
意識が遠のきそうになったとき、急に体を包んでいた圧迫感が消えた。
「何すんだよーちょーじー!!」
「…………」
長次が小平太の首根っこを掴み、やす菜からひっ剥がした。
「……大丈夫か?」
ボソリと呟かれた言葉に、涙目でちょっと咳き込んでいたやす菜は微笑んで「大丈夫」と言った。
「ありがとう。長次君」
「…………」
ポンッと一回、やす菜の頭に手を置くと長次は小平太を引き摺って元の位置に腰を降ろした。
心なしか、ほんのりと頬が赤くなっているように見える…
「ん~…」
やす菜は人差し指を口元に当てて少し考えた後、くるっと文次郎と留三郎の方を向いた。
「潮江君と食満君も…これからは『文次郎君』『留三郎君』って、呼んでもいい?」
「ああ…構わん」
「遠慮無く、そう呼んでくれ」
それを聞いたやす菜はぱぁっと笑顔になり、それを正面から見ていた文次郎と留三郎は顔を赤くした。
「仙蔵君、小平太君、長次君、文次郎君、留三郎君、伊作君…」
ニコニコと笑いながら、六年生の名前を声に出して呼ぶ。
「やす菜、嬉しそうだね」
あまりにも嬉しそうな顔をしているので、伊作がそう言うと、やす菜は「うん。嬉しい」と頷いた。
「みんなともっと仲良くなれる気がするから、すごく嬉しい!」
笑顔で言われたやす菜の言葉に、六年達はそれぞれ驚いた顔をした後、みんな微笑んだ。
さあ、僕の名を呼んで!
(俺達はこのまま…)
(“友達”で終わる気なんて)
(さらさらないぞ!)
後書き→