誘拐予告
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
半月前から取りかかっていた任務が、今日やっと終わった。
あとは殿に報告書を献上すれば終わりだ。
だが、私はすぐに城へは戻らず、あの娘の所へ向かった。
忍術学園の天井裏に忍び込み、あの娘の部屋の上まで来ると、音を立てないように降り立つ。部屋の中心に敷かれた布団は人の形に膨らんでおり、規則正しく上下している。
近づいて覗き込むと、すやすやとあどけない顔で眠っていた。
普段のしっかりして歳の割に大人の様に落ち着いている彼女に比べ、寝顔は何とも幼く見える。
隣に寝そべり、頬に掛かっていた髪を払う。
そしてそのまま、指を入れて髪を梳いた。
するすると、絡まることなく指が通る。
その感触が楽しくて、何度も何度も髪を梳く。
しばらくして、さすがに気が付いたのか、「ん…」と少し身を捩った。
まつげが微かに震え、ゆっくりと目を開く。
「やあ」
そのままの体勢で声を掛けるとパチ、パチ、と瞬きをした。
「…雑渡さん?」
「うん。こんばんわ、やす菜ちゃん」
「…こんばんわ」
挨拶をすると、へにゃりと笑って返してくれた。
「お仕事の帰りですか?」
彼女が体を起こしたので、自分も体を起こす。
「うん。ついさっき終わったんだ」
「お疲れ様です」
もう、私の夜中の来訪に慣れたようで何故こんな時間に、何の用で来るのかなど聞かない。
いつも訪れるのは夜中だし、理由もいつも同じ。
ただ、会いに来るだけなのだ。
「今、お茶を持ってきます。」
いつも彼女は夜中にやって来ても嫌な顔をせずに客人をしてもてなそうとしてくれる。
その心遣いは、とても嬉しい。だが…
「いや、気を遣わなくていいよ」
立ち上がり、部屋を出ようとした彼女の手首を掴み、引き留めた。
「君に会いに来たんだから、お茶なんかよりも君がここにいてくれなくちゃ」
「ね?」と首を傾げると、彼女は申し訳なさそうな顔をしながらも「じゃぁ…」と腰を降ろそうとした。
そこで少し強く腕を引っ張り、胡座をかいた膝の上に横向きに座らせた。
「ちょっ…雑渡さん!?」
「ん?」
「『ん?』じゃなくてですね…」
この状態が恥ずかしいらしい彼女は退こうとするが、腰に手をまわし、それを許さない。
「…雑渡さ~ん…」
何か訴えるように見てくるが、素知らぬ顔でプニプニと彼女の頬を突いた。
しばらくそれを続けていると、諦めたように溜息を吐いて大人しくなった。
彼女の肌は水々しく、ハリがあって柔らかい。
突けば肌はきちんと指を押し返す。
(若いなぁ…)
自分より21も齢が下の少女を見つめる。
「…何か、顔に付いてますか?」
あまりにもジーッと見つめていたため、彼女は自分の顔をペタペタと触りだした。
「いや、何も付いてないよ。ただ…」
自分の顔を包んでいた彼女の手を外し、彼女のきめ細かい肌に指を滑らせ、頬を包むように添える。
「若いっていいなぁ~とか、綺麗だなぁ…って」
額、瞼、頬の順に布越しに口付ける。
そして最後に手を取り、掬い上げるように持ち上げると手の甲に唇を落とした。
「君は、私と違って血に汚れてないから」
彼女は黙っていた。
きっと、なんて言葉を掛ければいいのか、わからないのだろう。
この娘と私は、住む世界が違う。
忍術学園に身を置き、こちらの世界に関わりがある言っても、私が闇の中で生きているのに対し、彼女はひだまりの下で笑っているのが相応しい…全く正反対の存在だ。
だが…
「ねぇ、やす菜ちゃん」
彼女の首に、そっと手を触れた。
「このまま…君を攫っていってしまってもいいかい?」
正反対の存在だからこそ、彼女のことを欲しいと思うのかもしれない。
自分の手元に置きたいと…
「え、困ります」
きっぱりと即答で返された。
しかも照れたり、恥ずかしがったりする素振りもなく、真顔で…
その反応に、むう…っとむくれる。
「君ねぇ…ここは黙って静かに頷くところなんじゃないの?」
「そう言われましても…私はまだ、ここを…弟の側を離れたくありませんから」
「本当に、弟が大事なんだね」
「はい!私の宝物です!!」
そう言って、にこぉっと彼女は笑った。
「きり丸の成長は私の喜びであり、生き甲斐なんです。
まだ10歳のあの子はこれからもドンドン成長していきます。
私はそれをまだ…側で見ていたいんです」
弟のことを話すとき、彼女は慈愛に満ち溢れた表情をする。
それはもう母親の域に達しているのではないかと思うほどに。
「そうか…では、今は諦めよう。けど――――――
きり丸君が今の君と同じ…15歳になったら、私は君を貰っていくよ」
その頃にはもう彼も今より大人になっているだろうし、姉離れにも丁度いいだろう。
「…卒業まで待ってくれますか?」
「…しょうがない。待ってあげよう。
でも、5年も待たされるんだから、問答無用で攫っていくよ」
「嫌だって言っても無駄だから」と言えば、彼女は「言いませんよ」と微笑んだ。
「寧ろ、5年も私の事を想い続けていてくださるんですか?」
「私はね、とっても一途なんだよ。だから5年でも、10年でも、100年経っても…私は君のことが好きだよ」
それを聞いた彼女は、頬を赤く染め、はにかむように微笑んだ。
「私も…貴方のことを、ずっとお慕いしてます。…待ってますからね?
…昆奈門…さん」
…名前を呼ばれたのは初めてかもしれない。
彼女の後頭部に手を置いて顔を近づけると手で遮られた。
「…唇も布越しですか?」
そう尋ねる彼女に、フッと笑う。
「まさか」
口元の布に手を掛け、外すと自分の唇を彼女のそれに重ねた。
誘拐予告
後書き→
あとは殿に報告書を献上すれば終わりだ。
だが、私はすぐに城へは戻らず、あの娘の所へ向かった。
忍術学園の天井裏に忍び込み、あの娘の部屋の上まで来ると、音を立てないように降り立つ。部屋の中心に敷かれた布団は人の形に膨らんでおり、規則正しく上下している。
近づいて覗き込むと、すやすやとあどけない顔で眠っていた。
普段のしっかりして歳の割に大人の様に落ち着いている彼女に比べ、寝顔は何とも幼く見える。
隣に寝そべり、頬に掛かっていた髪を払う。
そしてそのまま、指を入れて髪を梳いた。
するすると、絡まることなく指が通る。
その感触が楽しくて、何度も何度も髪を梳く。
しばらくして、さすがに気が付いたのか、「ん…」と少し身を捩った。
まつげが微かに震え、ゆっくりと目を開く。
「やあ」
そのままの体勢で声を掛けるとパチ、パチ、と瞬きをした。
「…雑渡さん?」
「うん。こんばんわ、やす菜ちゃん」
「…こんばんわ」
挨拶をすると、へにゃりと笑って返してくれた。
「お仕事の帰りですか?」
彼女が体を起こしたので、自分も体を起こす。
「うん。ついさっき終わったんだ」
「お疲れ様です」
もう、私の夜中の来訪に慣れたようで何故こんな時間に、何の用で来るのかなど聞かない。
いつも訪れるのは夜中だし、理由もいつも同じ。
ただ、会いに来るだけなのだ。
「今、お茶を持ってきます。」
いつも彼女は夜中にやって来ても嫌な顔をせずに客人をしてもてなそうとしてくれる。
その心遣いは、とても嬉しい。だが…
「いや、気を遣わなくていいよ」
立ち上がり、部屋を出ようとした彼女の手首を掴み、引き留めた。
「君に会いに来たんだから、お茶なんかよりも君がここにいてくれなくちゃ」
「ね?」と首を傾げると、彼女は申し訳なさそうな顔をしながらも「じゃぁ…」と腰を降ろそうとした。
そこで少し強く腕を引っ張り、胡座をかいた膝の上に横向きに座らせた。
「ちょっ…雑渡さん!?」
「ん?」
「『ん?』じゃなくてですね…」
この状態が恥ずかしいらしい彼女は退こうとするが、腰に手をまわし、それを許さない。
「…雑渡さ~ん…」
何か訴えるように見てくるが、素知らぬ顔でプニプニと彼女の頬を突いた。
しばらくそれを続けていると、諦めたように溜息を吐いて大人しくなった。
彼女の肌は水々しく、ハリがあって柔らかい。
突けば肌はきちんと指を押し返す。
(若いなぁ…)
自分より21も齢が下の少女を見つめる。
「…何か、顔に付いてますか?」
あまりにもジーッと見つめていたため、彼女は自分の顔をペタペタと触りだした。
「いや、何も付いてないよ。ただ…」
自分の顔を包んでいた彼女の手を外し、彼女のきめ細かい肌に指を滑らせ、頬を包むように添える。
「若いっていいなぁ~とか、綺麗だなぁ…って」
額、瞼、頬の順に布越しに口付ける。
そして最後に手を取り、掬い上げるように持ち上げると手の甲に唇を落とした。
「君は、私と違って血に汚れてないから」
彼女は黙っていた。
きっと、なんて言葉を掛ければいいのか、わからないのだろう。
この娘と私は、住む世界が違う。
忍術学園に身を置き、こちらの世界に関わりがある言っても、私が闇の中で生きているのに対し、彼女はひだまりの下で笑っているのが相応しい…全く正反対の存在だ。
だが…
「ねぇ、やす菜ちゃん」
彼女の首に、そっと手を触れた。
「このまま…君を攫っていってしまってもいいかい?」
正反対の存在だからこそ、彼女のことを欲しいと思うのかもしれない。
自分の手元に置きたいと…
「え、困ります」
きっぱりと即答で返された。
しかも照れたり、恥ずかしがったりする素振りもなく、真顔で…
その反応に、むう…っとむくれる。
「君ねぇ…ここは黙って静かに頷くところなんじゃないの?」
「そう言われましても…私はまだ、ここを…弟の側を離れたくありませんから」
「本当に、弟が大事なんだね」
「はい!私の宝物です!!」
そう言って、にこぉっと彼女は笑った。
「きり丸の成長は私の喜びであり、生き甲斐なんです。
まだ10歳のあの子はこれからもドンドン成長していきます。
私はそれをまだ…側で見ていたいんです」
弟のことを話すとき、彼女は慈愛に満ち溢れた表情をする。
それはもう母親の域に達しているのではないかと思うほどに。
「そうか…では、今は諦めよう。けど――――――
きり丸君が今の君と同じ…15歳になったら、私は君を貰っていくよ」
その頃にはもう彼も今より大人になっているだろうし、姉離れにも丁度いいだろう。
「…卒業まで待ってくれますか?」
「…しょうがない。待ってあげよう。
でも、5年も待たされるんだから、問答無用で攫っていくよ」
「嫌だって言っても無駄だから」と言えば、彼女は「言いませんよ」と微笑んだ。
「寧ろ、5年も私の事を想い続けていてくださるんですか?」
「私はね、とっても一途なんだよ。だから5年でも、10年でも、100年経っても…私は君のことが好きだよ」
それを聞いた彼女は、頬を赤く染め、はにかむように微笑んだ。
「私も…貴方のことを、ずっとお慕いしてます。…待ってますからね?
…昆奈門…さん」
…名前を呼ばれたのは初めてかもしれない。
彼女の後頭部に手を置いて顔を近づけると手で遮られた。
「…唇も布越しですか?」
そう尋ねる彼女に、フッと笑う。
「まさか」
口元の布に手を掛け、外すと自分の唇を彼女のそれに重ねた。
誘拐予告
後書き→