こんなにも君のことが大好きだから!
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「やす菜と三郎って、ホント仲いいよね。いつも一緒にいるし」
同じ図書委員の雷蔵と二人で少し話をしながら図書カードの整理をしていたら、不意にそう言われた。
「…雷蔵がそれを言う?雷蔵の方が、三郎といつも一緒にいるじゃない」
同室な上に同じ組なもんだから、もう、朝から晩まで。
「まあ、そうだけど…でも僕は、やす菜ほど三郎と親しくしている女の子は知らないし」
「…まあ、幼馴染みだから。私と三郎は」
カードを整理する手を休めずに、私と雷蔵は小さめの声で会話をする。
「私と三郎の家はお互い舞とか劇とか軽業とか…そういうものをやる家柄で、代々家の仲が良かったから、小さい頃から一緒に居たのよ…でもね…」
トン。と束にしたカードを軽く机に叩き付け、向きを揃える。
「…私一時期、三郎のことが嫌いだった」
そう言うと、雷蔵が驚いた顔をする。
そんな雷蔵に私は笑って、「昔の話だけどね」と言った。
「六つの時…だったかな…三郎が会う度に『グズ』とか『のろま』とか言ってくるようになったのよ」
それまで仲が良かったのに、急にそう言っていじめてくるようになったもんだから、訳が分からなかった。
「で、あまりにもそうやって悪口をいってくるもんだから、三郎は私のこと、嫌いになったんだって思うようになって…私も段々、三郎のことが嫌いになっていって…」
そのくせ、いつも近くに三郎はいた。
嫌いなくらいなら、私に近づかなければいいのに…と思っていたが、無視していた。
「で、そんなことが一年くらい続いてね、ついに『三郎なんて大っ嫌い!』って言っちゃったの」
その言葉を言った日、私は一人で歌舞の練習をしていた。
そこに三郎がやって来て、いつものように私のことを貶し始めた。
(…今思い出しても腹が立つなぁ…)
『お前、本当に下手くそだな。そんなんで観に来た奴らが満足すると思うのかよ』
その時は本気で頭に来た。
…自分が未熟なのは百も承知。だからこそ、練習をして上手くなろうとしているのに、何でそんなこと言うんだ。と思った。
そして、『手本を見せてやるから貸してみろ』と私の持っていた歌の本を取ろうとした。
私はそれに反抗し、意地でも貸すもんか!と本を離さなかった。
お互い引っ張り合いになり、そして…
『っ…貸せって言ってんだろ!!』
『っきゃ!』
痺れを切らした三郎が一層強く本を引っ張り、私はその反動で転んでしまった。
『…あ…』
三郎は一瞬ヤバッという顔をしたが、すぐに『お前が素直に貸さないから悪いんだ…』と言った。
……その時痛さと、今までの怒りで、爆発して、泣きながら私は言ったのだ。
『…嫌い…』
『え…』
『いつもいつもいじわるするから…三郎なんて、大っ嫌い!!』
そう言い捨てて、私はその場から走り去った。
「で、一週間くらい徹底的に避けまくって顔を合わせないようにしてたんだけど…」
『ごめん…』
三郎が、夜中に私の部屋に忍び込んで、謝ってきた。
「…忍び込んできたの?」
「うん。まあ、昼間は私逃げてたし。でね…」
『今まで…お前にいじわるしていたことは、謝る。だから…
だ…大、嫌い…とか…言うな…』
「…泣きそうな顔で言うもんだから…ついつい許しちゃった。もういじめないでねって約束で」
雷蔵がプッと吹き出した。
「なんだか…三郎、可愛いね」
「ね、可愛かったのよ」
結局のところ、三郎が私をいじめていたのはいわゆる『好きな子ほどいじめたい』というあれだったのだ。
それに気が付いたのは結構最近。
雷蔵と笑い合っていると、背後から両頬を引っ張られた。
「いひゃい、いひゃい!」
「…てめ、何人の恥ずかしい過去ばらしてやがんだ」
私の両頬を引っ張るのは噂の鉢屋三郎。
私は三郎の手から逃げ、雷蔵の後ろに隠れた。
「いいじゃない!話したのはあんたが日常生活で顔を借りるほど大好きな雷蔵なんだから!」
私がそう言ってベーッと舌を見せると雷蔵が「女の子のほっぺ引っ張っちゃだめだよー」と言った。
「そんなことすると、また嫌われちゃうよ?」
ニコニコと笑いながら雷蔵が言うと、三郎はムスッとした顔で出て行った。
「…拗ねちゃった…」
「拗ねちゃったね」
「私、行くね」
「うん。早く行ってあげて」
「カード整理の残りはやっておいてあげるから」と言ってくれた雷蔵にお礼を言って、私は三郎を追いかけた。
「三郎!」
すぐに駆け寄り、服の裾をキュッと掴んだ。
「…………え」
「は?」
三郎が何か言ったが聞き取れず聞き返した。
「…“大嫌い”なんて…二度と言わせねぇ」
それを聞いた私は、一瞬ポカン…としたがすぐに笑って、三郎の背中に抱きついた。
「言わないよ…だって…」
こんなにも君のことが大好きだから!
(あの時お前に大嫌いと言われて)
(本気で心臓が潰れるかと思ったんだ…)
後書き→
同じ図書委員の雷蔵と二人で少し話をしながら図書カードの整理をしていたら、不意にそう言われた。
「…雷蔵がそれを言う?雷蔵の方が、三郎といつも一緒にいるじゃない」
同室な上に同じ組なもんだから、もう、朝から晩まで。
「まあ、そうだけど…でも僕は、やす菜ほど三郎と親しくしている女の子は知らないし」
「…まあ、幼馴染みだから。私と三郎は」
カードを整理する手を休めずに、私と雷蔵は小さめの声で会話をする。
「私と三郎の家はお互い舞とか劇とか軽業とか…そういうものをやる家柄で、代々家の仲が良かったから、小さい頃から一緒に居たのよ…でもね…」
トン。と束にしたカードを軽く机に叩き付け、向きを揃える。
「…私一時期、三郎のことが嫌いだった」
そう言うと、雷蔵が驚いた顔をする。
そんな雷蔵に私は笑って、「昔の話だけどね」と言った。
「六つの時…だったかな…三郎が会う度に『グズ』とか『のろま』とか言ってくるようになったのよ」
それまで仲が良かったのに、急にそう言っていじめてくるようになったもんだから、訳が分からなかった。
「で、あまりにもそうやって悪口をいってくるもんだから、三郎は私のこと、嫌いになったんだって思うようになって…私も段々、三郎のことが嫌いになっていって…」
そのくせ、いつも近くに三郎はいた。
嫌いなくらいなら、私に近づかなければいいのに…と思っていたが、無視していた。
「で、そんなことが一年くらい続いてね、ついに『三郎なんて大っ嫌い!』って言っちゃったの」
その言葉を言った日、私は一人で歌舞の練習をしていた。
そこに三郎がやって来て、いつものように私のことを貶し始めた。
(…今思い出しても腹が立つなぁ…)
『お前、本当に下手くそだな。そんなんで観に来た奴らが満足すると思うのかよ』
その時は本気で頭に来た。
…自分が未熟なのは百も承知。だからこそ、練習をして上手くなろうとしているのに、何でそんなこと言うんだ。と思った。
そして、『手本を見せてやるから貸してみろ』と私の持っていた歌の本を取ろうとした。
私はそれに反抗し、意地でも貸すもんか!と本を離さなかった。
お互い引っ張り合いになり、そして…
『っ…貸せって言ってんだろ!!』
『っきゃ!』
痺れを切らした三郎が一層強く本を引っ張り、私はその反動で転んでしまった。
『…あ…』
三郎は一瞬ヤバッという顔をしたが、すぐに『お前が素直に貸さないから悪いんだ…』と言った。
……その時痛さと、今までの怒りで、爆発して、泣きながら私は言ったのだ。
『…嫌い…』
『え…』
『いつもいつもいじわるするから…三郎なんて、大っ嫌い!!』
そう言い捨てて、私はその場から走り去った。
「で、一週間くらい徹底的に避けまくって顔を合わせないようにしてたんだけど…」
『ごめん…』
三郎が、夜中に私の部屋に忍び込んで、謝ってきた。
「…忍び込んできたの?」
「うん。まあ、昼間は私逃げてたし。でね…」
『今まで…お前にいじわるしていたことは、謝る。だから…
だ…大、嫌い…とか…言うな…』
「…泣きそうな顔で言うもんだから…ついつい許しちゃった。もういじめないでねって約束で」
雷蔵がプッと吹き出した。
「なんだか…三郎、可愛いね」
「ね、可愛かったのよ」
結局のところ、三郎が私をいじめていたのはいわゆる『好きな子ほどいじめたい』というあれだったのだ。
それに気が付いたのは結構最近。
雷蔵と笑い合っていると、背後から両頬を引っ張られた。
「いひゃい、いひゃい!」
「…てめ、何人の恥ずかしい過去ばらしてやがんだ」
私の両頬を引っ張るのは噂の鉢屋三郎。
私は三郎の手から逃げ、雷蔵の後ろに隠れた。
「いいじゃない!話したのはあんたが日常生活で顔を借りるほど大好きな雷蔵なんだから!」
私がそう言ってベーッと舌を見せると雷蔵が「女の子のほっぺ引っ張っちゃだめだよー」と言った。
「そんなことすると、また嫌われちゃうよ?」
ニコニコと笑いながら雷蔵が言うと、三郎はムスッとした顔で出て行った。
「…拗ねちゃった…」
「拗ねちゃったね」
「私、行くね」
「うん。早く行ってあげて」
「カード整理の残りはやっておいてあげるから」と言ってくれた雷蔵にお礼を言って、私は三郎を追いかけた。
「三郎!」
すぐに駆け寄り、服の裾をキュッと掴んだ。
「…………え」
「は?」
三郎が何か言ったが聞き取れず聞き返した。
「…“大嫌い”なんて…二度と言わせねぇ」
それを聞いた私は、一瞬ポカン…としたがすぐに笑って、三郎の背中に抱きついた。
「言わないよ…だって…」
こんなにも君のことが大好きだから!
(あの時お前に大嫌いと言われて)
(本気で心臓が潰れるかと思ったんだ…)
後書き→